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第85話 アイシアの帰還

 「マスターっ!」


 「アイシアっ!。よく無事で帰って来てくれたねっ!。けど霊体の姿に戻って憑依していたレイノスさんはどうしちゃったの?」


 「それが……」


 自分の部屋でジッと待っていること約5時間。


 遂にここから地下の階層へと侵入していたアイシアが戻って来てくれた。


 しかしレイノスさんへの憑依が解けてしまっているようで、アイシアが元の赤ん坊の霊の姿へと戻ってしまっている。

 

 アイシアから詳しく事情を聞いたのだがどうやら侵入先で色々と危ない出来事があったようだ。


 「そんな大変ことがあったんだね……。だけど大変だった分『味噌焼きおにぎり』に関して沢山の貴重な情報を持ち帰って来てくれたわけだしアイシアはとても良くやってくれたよ。主の僕は部屋で待機しているだけだったっていうのにアイシアのような頼もしい従者を持てて本当に嬉しく思う」


 「そんな……私如きには勿体無きお言葉です、マスター。もう少しあの場に留まっていれば『味噌焼きおにぎり』の者達の更なる情報を手に入れることができたやもしれないのに私ときたらSALE-99の視線を感じただけだというのに恐怖のあまり逃げ出して来てしまいました」


 「いや。部下からの報告で侵入者がいる可能性が発覚した以上『味噌焼きおにぎり』の連中もそれ以上密会を続けることはなかっただろうし瞬時にその場を離れたアイシアの判断は正しいよ。もしもっと情報を得ようと欲張ってSALE-99達に捕えられてしまったら何の情報も得られなかった挙句、僕は大事な従者を失うことになっていたんだから」


 「(LA7-93の言う通りなのっ!。アイシアはとても良くやってくれたし負い目を感じるようなことはないなの)」


 「(ないなの)」


 「マスターやベル達にそう言って頂けて幸いです。ですが『味噌焼きおにぎり』の者達の計画について大まかな情報は得ることができましたが具体的にはどのようなことを行うつもりなのでしょうか」


 「さぁ……。アイシアの持ち帰った情報を整理すると10年以内にこの世界と覇者となれる程の何かしら大規模な魔法をこの施設と捕えたシャナ神を使って発動させるつもりってことだよね。どうにかしてその魔法を発動させる前に奴等の計画を阻止したいところだけど一体どうすべきか……。結局不正を暴けるだけの証拠は見つからなったようだしやはりクロイセン神父を通じてミーズ・ニーズ教団に協力を求めるしかないか。まだミーズ・ニーズ教団のことが信用できると決まったわけではないけど世界の覇者となれるような魔法を発動させようとしているとなれば四の五の言ってられないしね」


 不正を暴く証拠とはならなかったけどアイシアが持ち帰ってくれた情報のおかげで『味噌焼きおにぎり』の連中の大まかな計画を知ることができた。


 やはり奴等はメノス・センテレオ教団の勢力を拡大させることで世界の支配者となるのが目的らしい。


 対抗する手立てとしてやはりミーズ・ニーズ教団に協力を求めるぐらいしかないだろう。


 僕達とBS1-52君だけで対抗するには圧倒的に戦力不足だ。


 一先ずはアイシアから得た情報をクロイセン神父にも伝えてからミーズ・ニーズ教団との接触を図ろう。


 その前に協力者であるBS1-52君にも一言相談してからにしないと。


 BS1-52君ならミーズ・ニーズ教団についても何か情報を持っているかもしれないし。


 「私達だけでは戦力不足である以上やはりそうするしかないのでしょうか。ところで今回の侵入に関してまた私達に疑いが掛けられるようなことはないでしょうか。一応マスターの部屋のあるここ地下5階ではなく地下3階のトイレまで行って憑依を解いて来たのですが……」


 「それなら少なくとも地下3階より上の階には逃げ込んでるものと考えるんじゃない。侵入してきた相手が霊体ならもうとっくに外まで脱出していてもおかしくはないし僕達が疑われることはないよ」


 「そうでしょうか……。もし不審に思ったSALE-99が調べに来たらと思うと私は不安でなりません」


 「アイシア……」


 いつになく不安げな様子を見せるアイシア。


 どうやら自分の気配に気付いたSALE-99とことが余程恐ろしかったようだ。


 確かにSALE-99は僕達のことを最後まで【転生マスター】と疑っていたし用心に越したことはない。


 ここはアイシアを安心させる為にも万が一SALE-99が僕達のことを調べに来た時に備えて対策を講じておこう。


 「そういうことなら僕に良い考えがあるよ、アイシア。アイシアの言う通りSALE-99は勘の良い奴だからほとぼりが冷めるまでこのメルクリオ注射器の中にアイシアのことを隠しておこう」


 「えっ……宜しいのですかっ!」


 「うん。アイシアの言う通り何時SALE-99や他の『味噌焼きおにぎり』の連中が調べに来るとも限らないからね。連中はアイシアの姿を見ることができないとはいえ念の為注意しておこう。それじゃあ抽出していくからそこのベッドの上辺りにでも移動してジッとしてて」


 「了解しました」


 メルクリオ注射器に抽出したことでアイシアの姿は再びこの場から消え去った。


 元々余程霊感が強い者以外にはアイシアの姿を視認することができないのだけれどこれで気配すらも感じることができなくなっただろう。


 「(ふぅ……。マスターの注射器の中に入れて頂けたおかげ大分落ち着くことができました)」


 「それは良かった。でもまだこれで終わりじゃないよ。次はアイシアを僕の体へと注入していくからレイノスさんの時と同じようにしっかりと憑依して。SALE-99達には僕の『注射器魔法シリンジ』の魔法の性能を知られているわけだし今のままだと注射器の中を見せろと言われたらお終いだからね」


 「(ええっ!。ですが従者である私がマスターの体に憑依するなど……)」


 「【転生マスター】相手に憑依をした場合のケースを確かめる為に訓練の時にも一度僕に憑依してるんだから今更そんなこと気にしなくていいよ。【転生マスター】である僕なら憑依されたところで意識を失うこともなかったしね。それじゃあ僕の体に注入していくよ~」


 「(私の為にそこまでして頂いて大変恐縮です、マスター)」


 アイシアを抽出したメルクリオ注射器の針を自身の左腕の肘の内側へと挿して僕は今度は『注入インジェクト』の方の能力を発動させていく。


 通常の者ならば霊からの憑依を受けた場合自分の意識を完全に失ってしまう。


 だが【転生マスター】である僕は『味噌焼きおにぎり』の者達から洗礼の儀を受けた時と同じように例えアイシアからの憑依を受けても自分の意識を失うことはなく、自身に僕とアイシアの2つの意識が合同で宿ることとなった。


 勿論肉体を動かす主導権は本来の持ち主である僕のものだ。


 僕の体に憑依させてアイシアを隠しておけば『味噌焼きおにぎり』の連中も見つけ出す術はないだろう。


 「失礼するよ、ヴァン君」


 「ア……アズールさん。ノックもしないで突然入って来て脅かさないでよ」


 「悪いね。ちょっと緊急の用件で君に聞きたいことがあって……。ここに赤ん坊の姿をした霊が逃げ込んでこなかったかな」


 「えっ……」


 アイシアを自身へと憑依させて暫くしてアズール・コンティノアールことSALE-99が突然ノックもせず僕の部屋へと押し入って来た。


 まさか本当にこの状況で僕達へと疑いを向けてくるとは……。


 事前にアイシアの存在を隠しておいて正解だったと安堵したのも束の間、SALE-99から投げ掛けられた質問の言葉に僕は酷く動揺してしまう。


 何故視認できないはずのアイシアの容姿が赤ん坊だということをSALE-99は知っているんだ。


 まさか僕達の知らない間にSALE-99も霊の姿を視認できるだけの能力を身につけたというのだろうか。


 しかしそれだと密会場所でベンがやって来るまで盗聴を許していた理由が分からなくなるし……。


 「さ……さぁ……。そんなこと言われても僕は霊の姿なんて見ることはできないし分からないよ」


 「まぁ、そうだろうね。なら悪いけどちょっと部屋の中を調べさせて貰って構わないかな」


 「い……いいけど……。いくら探したところで姿が見えないはずの霊を見つけることなんてできるの?」


 SALE-99の要求を断るわけにもいかず僕は部屋の捜索を許可せざるを得なかった。


 アイシアは僕自身に憑依させて隠してあるし幸いこの部屋にもSALE-99に見られて困るものはない。


 後は適当に部屋を捜索させてSALE-99が諦めるのを待つだけだがやはりアイシアの姿を言い当てていたことが気になってしまう。


 「(い……一体どうしてSALE-99は視認できないはずのアイシアの姿を言い当てることができたんだ。もしSALE-99がクロイセン神父と同じように霊の姿を見ることができるというなら密会場所でアイシアの盗聴を許していた理由がつかなくなっちゃうし……)」


 「(恐らく僕達の動揺を誘う為に鎌を掛けているに違いないなの。姿を見ることができないまでの霊の気配を察することができるならLA7-93に付いて活動している霊が赤ん坊の時に亡くなったアイシアが守護霊となったものだと推測することは可能だと思うなの)」


 「(可能だと思うなの)」


 「(そういうことか。確かアイシアもSALE-99は自分の気配に気付いているような節があるって話してたよね。でもそれだけで僕に付いてる霊が赤ん坊の時に亡くなったアイシアだと推測するなんてやっぱりSALE-99は侮れないよ)」


 ベル達の言葉を聞き僕はSALE-99の洞察力の高さに身を震わせるとともにアイシアを自身の中に隠しておいて本当に良かったと感じていた。


 場合によってはここでアイシアがSALE-99に捕まり僕達の素性も全て暴かれてしまう可能性もあっただろう。


 安堵と緊張が入り混じる最中僕はSALE-99が諦めて早くこの部屋から出て行ってくれることを心の底から願っていた。

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