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第83話 死を迎えるTC7-33

 「私が亡くなった後のことをよろしく頼みますよ、SALE-99。我々の中で【転生マスター】としての経験が一番豊富なあなたがVS8-44や今後の教団の活動を上手くサポートしてあげて下さい」


 「ああ。任せて置きなよ、TC7-33」


 「だけどTC7-33がいなくなって本当にこの地下神殿を完成させることができるわけ?。グランディス・ワームに転生したTC7ー33がいたからこそこれだけの規模の施設を地下に建造できたわけでしょ。あと少しで完成だっていっても人間の私達の労力なんてTC7ー33の足元にも及ばないわよ」


 「ええ。それに私達がいない300年の間にずっとここの建造を推し進めてきたのもTC7-33なわけですし、今更になって私達が引き継いだのでは完成後の神殿に不備が生じかねません」


 グランディス・ワーム。


 それがヴェント達がTC7-33と呼ぶ巨大なワーム型のモンスターの種族の名前らしい。


 自身もヴェント達のことを魂のコードネームを用いて呼んでいることからこのTC7-33も【転生マスター】の転生スキルを取得した『味噌焼きおにぎり』の仲間に間違いない。


 アズール・コンティノアールに転生したSALE-99、ブランカ・ティーグレに転生したCC4-22、一度亡くなり蘇った後の私に転生したLS2-77、そしてこのグランディス・ワームに転生したTC7-33とこれで『味噌焼きおにぎり』の転生マスター四天王に当たる4人全てが明らかになった。


 勿論この4人が転生マスター四天王というわけでなく他にも【転生マスター】の仲間がいる可能性もあるのだが。


 その中でTC7ー33の転生したグランディス・ワームについて詳しい知識があるわけでないのだが、先程までのヴェント達の会話からどうやら彼がの地下の施設の建造を主軸となって推し進めてきたようだ。


 あれだけ巨大な体を持つワーム型のモンスターとなれば地中を掘る力も凄まじいものがあるはず。


 更に300年もの間生き永らえていたともなればいつの間にか私達のウィンドベル村の地下にこれ程の規模の施設ができていたことにも納得がいく。


 恐らく私達が今回の転生を迎えた頃には既にこの地下施設の大半は出来上がっていたのだ。


 そこへ私達の村へやって来たSALE-99が教会から地下を掘り進めて施設へと通じる道を繋げただけなのだろう。


 っということは『味噌焼きおにぎり』の者達は以前の転生からずっとこのメノス・センテレオ教団による計画を推進していたというわけか。


 複数の転生を隔てた上での計画の推進など【転生マスター】としての力がなければ中々できないことだ。


 「その点に関しては心配ありませんよ、CC4-22にLS2-77。私の後継者ならちゃんと用意してありますから」


 「後継者ですって。それって一体どこのどい……っ!」


 「な……なんですかっ!。この揺れはっ!」


 ヴェント達の会話の最中突如としてこの空間内が激しく揺れ始めた。

 

 地震だとすると震度5強ぐらいはあるように感じるだろうか。


 霊体である私には直接の影響はないが、肉体を持つヴェント達がどうにか転倒しないよう足を踏ん張っているのが精一杯になるぐらいだ。


 だがこの揺れの正体は決して地震などではなかった。


 激しく揺れる空間の地面の下からTC7-33が転生しているのと同じグランディス・ワーム達が次々と飛び出して来る。


 どうやらこの振動はグランディス・ワーム達が地中を移動することで引き起こされたものだったようだ。


 「なっ……グランディス・ワーム達がこんなに……。一体こいつ等は何なのよ、TC7-33」


 「皆私の可愛い子孫達ですよ。300年の間にこんなにも子孫が増えてしまいました。我々『味噌焼きおにぎり』のメンバーが転生している者も何体かいますよ。彼等もこの地下施設の建造に大いに協力してくれました」


 「そ……そうなんだ。グランディス・ワームの繁殖力って結構凄まじいのね」


 「確かにこれだけの数のグランディス・ワーム達がいれば地下神殿の建造には何の支障もないでしょうが……。あなたがいなくなってしまってもこのグランディス・ワームは我々の指示に従ってくれるのでしょうか」


 「ふっ……ですからちゃんと私の後継者を用意してあると言っているでしょう、CC4-22。……ラモンっ!」


 「はっ!」


 新たなに現れたグランディス・ワーム達はTC7-33の転生している個体に比べると随分と小型ではあったのだが、これだけの数がいるとなればこの『味噌焼きおにぎり』の者達の地下施設の建造も問題なく継続されるだろう。


 更にこのグランディス・ワーム達の中に1体だけTC7-33と同じく人語を話すことのできる個体がいるようだ。


 ラモンと呼ばれていたが人語を理解できるにも関わらずこの密会場所にいることはつまり……。


 「なんだ。あんたの従者もグランディス・ワームに転生してたの。それならこのグランディス・ワーム達も問題なく統率できるわね」


 この密会場所で魂の記憶があることを隠さずにヴェント達と会話している以上あのラモンと呼ばれるグランディス・ワームに転生しているのも【転生マスター】の力を持つ者に違いない。


 一応ヴェントのように他の隠しスキルを習得した者でSALE-99達から霊界についての情報を聞かされたという可能性もあるが流石に他の相手に対してもそのようなリスクの高い真似をしているとは思えない。


 ラモンという呼び名は魂のコードネームとは思えないが、LS2-77の口振りからして恐らく私と同じく霊界の天国の部屋にてTC7-33によって生み出された魂の従者なのだろう。


 TC7-33もマスターと同じく【従者】の転生スキルを取得して自身の魂の従者を転生に同行させていたのだ。


 そして私を例に見れば分かるようにラモンも自身の主であるTC7-33から【転生マスター】としての力を共有しているものとみて間違いない。


 もうじき寿命を迎えそうなTC7-33ではあるが、同じように【転生マスター】としての力を持ってグランディス・ワームに転生したラモンがいれば他のグランディス・ワーム達も問題なく統率することができてしまう。


 私としては『味噌焼きおにぎり』の者達の計画が順調に運ぶと聞かされても腹が立つだけなのだが。


 ラモンがいなければこの施設の建造にも支障が出て統率の取れないグランディス・ワーム達によってヴェントやSALE-99達に危害が及ぶこともあったかもしれないのに。


 「ラモンがいれば地下神殿の建造も問題なく完了するでしょう。予定通りにいけば10年以内には完成するはずです。神殿が完成した後の天竺五行の発動に関してはどのような算段がついているのですか、SALE-99」


 「このままいけば君抜きで発動させることになりそうだよ、TC7-33。他の宗教系のソウルギルド達の活動も完全に抑えきれてはいないし流石に君が次の転生を迎えるのを待ってる余裕はなさそうだからね」


 「そうですか……。まぁ、神殿の建造にも抜かりないことですし私抜きでも予定通りの出力を発揮してくれるでしょう。結界に捉えているシャナ神の具合はどうなのです?」


 シャナ神ですって……。


 シャナ神と謂えばメノス・センテレオ教団が信仰の対象に掲げている神の名前だ。


 私とマスターも信者達の信仰を得る為にヴェント達がでっち上げたものだと思っていたがまさか実在するのだろうか。


 「長年結界に閉じ込め続けた甲斐あってもうほとんど僕達の支配下にあるよ。メノス・センテレオ教団の勢力拡大に伴い強まったシャナ神への信仰のエネルギーの抽出も上手くいってる。天竺五行が発動した暁には一気に世界を制するだけの力を手にすることができるだろうね」


 「それは良好です。これまで幾度となくこの『ソード&マジック』の世界に転生を繰り返してきてようやく我々の悲願が成就しそうなようですね。一時でも世界の覇者となった暁には我々『味噌焼きおにぎり』の得られるソウル・ポイントはとんでもないものとなりますよ」


 「できれば僕達『味噌焼きおにぎり』のメンバーの内の誰かがこの世界の神々の1人として転生してくれるのがベストだったけどね。捕えた状態で無理やり従わせているシャナ神ではやはり計画を実行に移すのに不安は残るよ」


 ヴェント達の会話の内容から察するにどうやらシャナ神は実在する上に『味噌焼きおにぎり』の連中によって捕らえられてしまっているようだ。


 しかもそのシャナ神を利用して世界の覇者となれる程の力を手にするとは一体どういうことなのだろうか。


 他にも地下神殿、天竺五行といくつか重要となりそうなキーワードが出てきた。


 断片的な情報を繋ぎ合わせて推測するに恐らく地下神殿とは今我々のいるこの施設のこと。


 この場で天竺五行なる魔法か何かを発動し、それによって捕えたシャナ神へと集まった力を利用する計画のようだが、まだその詳細までは掴み切れない。


 地下神殿とはこの施設全体のことなのか、それとも何処か一部の場所なのか。


 TC7-33抜きで行うと言っていたが天竺五行の発動の条件とその効力は。

 

 『味噌焼きおにぎり』の者達によって捕えらえたシャナ神は一体何処にいるのか。


 計画の全容を知る為にはもっと詳細な情報が必要だった。


 更なる情報を得るべく私はヴェント達の会話に耳を澄ませていたのだったが……。


 「はぁ……どうやらもう意識を保つのも限界のようです。【転生マスター】でないあなたは時折私達のことを疑わしく思うこともあるかもしれまんが、どうか我々のことを信じて次に私が転生した時には我々の悲願が達成された世界を見せて下さい、VS8-44」

 

 「ああ。これまでよく頑張ってくれた、TC7-33。確かに【転生マスター】でない俺にはお前達のように完全な確証を持つことはできないが、それでもお前達のことを仲間だとちゃんと信じている」


 「ふっ……その言葉が聞けて安心しました。魂の記憶のないあなたと打ち解けることができず敵対してしまうようなこともこれまでの転生で多々ありましたからね」


 「TC7-33様……」


 「私亡き後のことはよろしく頼みましたよ、ラモン。他のグランディス・ワーム達を上手く纏め上げVS8-44達をしっかりとサポートしてあげて下さい」


 「畏まりました」


 「さて……これで言いたいことは大体言い終えましたしもう心残りはありません。それではまた次の転生でお会いしましょう……ふぅ」


 『味噌焼きおにぎり』の仲間達に囲まれる中TC7-33は静かに息を引き取っていった。


 魂の抜け殻となった巨大なグランディス・ワームの体がゆっくりと地面へと倒れ込む。


 そんなTC7-33の亡骸をヴェントやSALE-99達は哀愁漂う表情で見つめている。


 冷酷極まりない連中の集まりだと思っていたがこの者達にもまともな仲間意識はあったようだ。


 「ブランカ様ぁっ!」


 「……っ!」


 ヴェント達が仲間の弔いをする最中、外で待機はずのディックが突然大声でブランカの名を叫びながらこの密会場所へと飛び込んで来た。


 そのディックの姿を見て名を呼ばれたブランカを含めこの場にいる『味噌焼きおにぎり』の者達が全員戸惑いの表情を浮かべている。


 直属の上司から立ち入りを禁止されているこの密会場所へと飛び込んで来るとは何か尋常でない理由があったからに違いない。


 ディックの姿を見て一番の焦りを抱いているのは『味噌焼きおにぎり』の者達ではなくこの私だった。

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