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第74話 やって来た神父

 「皆さん。本日はこの教会に新たに赴任する神父様をご紹介します。クロイセン・クロフォード神父です。どうぞ、クロイセン神父」


 「こんにちは、皆さん。クロイセン・クロフォードです。メノス・センテレオ教団には入信して1年程が経ちますがこの度神父としての任を任せて頂くことになりました。皆さんのご期待に応えられるよう尽力させて頂きますのでどうぞよろしくお願い致します」


 BS1-52君との密会を果たしたチャリティー活動から帰った翌日。


 僕達のウィンドベル村の教会にブランカが新たな神父を連れて来た。


 名をクロイセン・クロフォードと謂い年齢は40台前後といったところだろうか。

 

 灰色の髪のオールバックに銀の丸渕の眼鏡を掛けた大人しそうな風貌で僕の父親として転生しているMN8-26さんに雰囲気が似ている。


 教会の調査がてら話しかけてみたが真面目で優しく気の良いおじさんと謂った印象だ。


 「(はぁ……。やっぱり僕達が立ち入りが許されてるエリアをいくら調べたところで重要な情報は見つからないや。図鑑や歴史書なんかの色々な種類の本が膨大に置いてある図書室があったり、最新の錬金術の設備なんかもあったりして色々と便利ではあるけれど……)」


 「(こうなったら思い切って立ち入り禁止のエリアに侵入するしかないなのっ!。僕達がチンタラ調査をしている間も『味噌焼きおにぎり』の連中は着々と自分達の計画を進めているだろうし、これより下のエリアで奴等が一体何をしているのか早めにその詳細を掴んでおかないと手遅れになっちゃうなのっ!)」


 「(手遅れになっちゃうなのっ!)」


 「(だけどここから下のエリアは昼夜問わずかなり厳重な警備になってるし頼みのアイシアもSALE-99が張った結界のせいで入ることはできないよ。それにもし侵入してるところが見つかって捕まってしまったらまた『味噌焼きおにぎり』の連中に疑われて面倒なことになるかもしれないし……)」


 「(虎穴に入らずんば虎子を得ず……。見つかることを恐れてたらいつまで経っても情報を得ることなんてできないなの。どうせ何の情報も出てこない場所をどれだけ調べたところで時間の無駄でしかないなの)」


 「(無駄でしかないなの)」


 「(分かった……。確かにベル達の言う通りどの道立ち入り禁止のエリアにいかなきゃ『味噌焼きおにぎり』の連中に迫る情報は手に入らないだろうしやってみるよ。だけどちゃんと見つからないよう入念に計画を立ててからね)」


 メノス・センテレオ教団の本部である僕達のウィンドベル村の教会の地下に建造された広大な施設。


 その地下施設の中で現在僕は地下5階のエリアまで立ち入りを許可されている。


 大分人数は多くなってしまうが一応この地下5階に立ち入りを許可されている者達からメノス・センテレオ教団の幹部となっているようだ。

 

 それより下の階層のエリアには何があるのか、一体最下層となるエリアはどこまで続いているのかさえ僕達には知らされていない。


 メノス・センテレオ教団の裏の顔、更に陰から教団を操る『味噌焼きおにぎり』の連中に迫るにはその立ち入り禁止のエリアに侵入するしかなかった。


 警備体制を詳細に調べ上げ、侵入に最適な時間帯や警備の目を掻い潜る手段など入念な計画を立てた後僕達は立ち入り禁止のエリアへの侵入を決行する。


 「えっ、今夜は教会の地下に泊まるの?、ヴァン」


 「うん。実は今新しい魔法の術式を構築している最中で……。あそこなら魔法に関する色んな書物が揃ってるし作業が捗ると思うんだ。だから構わないよね、母さん」


 「構わないけどあんまり夜更かししちゃ駄目よ。それから他の働いている信者の方々に迷惑を掛けないようにね」


 「ヴェント兄ちゃんが僕専用に用意してくれた部屋から出ないようにするから大丈夫だよ。術式構築用の自動書記装置を備え付けてくれてる上にベッドが超フカフカで気持ちいいんだ」


 「教団の施設にそんな部屋を用意するなんて本当にヴェントはヴァンに対して甘いわね~。教皇だからってあんまり教団のお金を私的に使わないよう注意しておかないと」


 「これでも僕はメノス・センテレオ教団の幹部でもあるんだからちょっとぐらい優遇して貰うのは当然だし全然私的なことなんかじゃないよ~だ。この前招集されたヴァリアンテ王国の合同部隊でも結構な活躍をしたんだから」


 「はいはい。それは凄いでございますことね~、ヴァン様~。ってそうだ。夜遅くまで魔法の開発をするなら途中でお腹も空くでしょう。夜食にサンドイッチを作ってお弁当に詰めてあげるからちょっとだけ待ってなさい」


 「うんっ!。ありがとう、母さん」


 こうして僕はPINK-87が作ってくれたサンドイッチの入ったお弁当を片手に教会の地下へと向かって行く。


 時刻は既に夜の8時を回っており外に出ると日は完全に沈んでしまっていた。


 先程は魔法の研究をすると言っていたがこんな時間に僕が教会の地下へと赴くのは今日立ち入り禁止のエリアへの侵入を決行する為だ。


 教会の地下の自分の部屋で適当に過ごし事前に計画した時間となるのを待つ。


 「う~ん……。ここをこうした方がもっと魔力の消費量が抑えられるかな……」


 中央に刻まれた複雑な図形の魔法陣の上にホログラムによる立体空間が映し出されている机の前に座って僕は自分の魔法の術式を見直している。


 この机こそが現在僕達が魔法の術式の構築に利用している術式構築用の自動書記装置だ。


 手前には端末となる手の形となる窪みの掘られた台座。


 この台座に手を置くことで装置と精神がリンクし頭で念じるだけで操作が可能となる。


 奥には7色の宝石がはめ込まれた出力機が。


 右手には指針式で表示する円形のメーターがいくつも備え付けられてた制御盤が置かれている。


 中央に出力された立体空間内に術式用の文字、或いはそれに該当するパーツを入力することで術式の構築を行っていくのだけれど、普通術式を構築するとなるとノート等平面のページに文字を書き連ねていくようなイメージを思い浮かべるだろう。


 或いは魔法陣のような図形や他にも魔法の象徴となるような絵を描くことも考えられるが、何にせよそれは2次元の空間での話だ。


 だが僕は今2次元ではなく3次元の空間で3次元の術式の構築を行っている。


 球体、円錐、円柱。


 更にそれが組み合わってできたもっと複雑な形の立体物の浮かぶこの立体空間こそが僕が愛用する『注射器魔法シリンジ』の魔法の術式だ。


 今回の『ソード&マジック』の世界では誰が考案したかは知らないがこの3次元による術式の構築が主流になっている。


 1次元、2次元による術式の構築も可能ではあるが基本的に3次元で術式の構築された魔法の性能には及ばない。


 3次元に更に時間の概念を加えた4次元の術式の構築も理論上は可能ではないかと言われているが今のところ実現できた者はいないようだ。


 神の子であるヴェントや他の超常的な力を持つ者達の魔法はもしかしたら4次元の術式によって構築されているのではないかとの説を唱える者もいるが定かにはなっていない。

 

 ヴェント自身も自身が扱う一部の魔法についてはその術式の詳細を把握できてはいないようだ。


 術式を把握できずとも自然とイメージするだけで魔法を行使することが可能とのことらしい。


 「おっと……もうこんな時間か。そろそろ侵入を決行する時間だし今の内にPINK-87さんのサンドイッチを食べて腹ごしらえをしておこう」


 時間を潰すがてらに行っていた術式の見直しを終え、立ち入り禁止のエリアへと侵入する為僕は深夜を回り静寂に包まれた地下施設の廊下へと出て行く。


 この教団の地下施設の1つの階層が凄まじく大きく、廊下の幅は10メートル近くあり、天井までの高さは15メートル以上はある。


 照明は天井ではなく壁に掛けられて設置されている為、上を見上げるとまるで真っ暗な空間が延々と広がり覆いかぶさっているように感じられとても重苦しい。


 そんな廊下を進み僕は地下へと進む階段のある場所へと向かう。


 「よし……。今日の警備もいつも通りダドリーさんとミルティーさんだね」


 僕達が立ち入り禁止となっているエリアの前には常に2人の警備兵が置かれている。


 1か月間警部の様子を下見し続けた結果僕達は最も注意が散漫と思われるダドリーさんとミルティーさんが警備に当たっている日を選んだ。


 そんな2人の警備をどうやって掻い潜るかだけど僕は廊下の曲がり角に隠れて様子を窺いながら、『注射器魔法シリンジ』の魔法による2本の注射器を取り出し暗闇のなっている廊下の情報を『遠隔注射器リモート・シリンジ』によって飛ばし2人の元へと差し向けていく。


 2本の注射器には僕が絶妙な濃度で調合した睡眠薬が収容してある。


 『注射器魔法シリンジ』の魔法で上手く2人に注入すれば2~3分の間立ったまま寝かせることが可能なはずだ。


 2人共既にウトウトしてるような状態だし気付かれることなく下の階に侵入することができる。


 すぐに目が覚めるので他の見回りの兵達もまさか2人が居眠りをしている隙に僕達が侵入したとは思わないはずだ。


 しかし僕の放った注射器がちょうど2人の頭上へと迫った時、突然階段の周りの証明だけが消え周囲が暗闇に包まれる。


 暗闇の中で慌てふためている様子のダドリーさんとミルティーさんの声が聞こえてくるが急に叫び声を上げると共に2人の声が消えてしまった。


 すぐさま光源魔法を飛ばして駆け付けるが既に2人は気を失った様子で地面に倒れ込んでしまっている。


 瞬時に僕以外にここより地下のエリアへと侵入を試みる存在がいることを察する僕であったが案の定何者かがすぐ側の階段を駆け下りる音が聞こえて来た。


 後を追って階段を下りて行った先にいたのは……。


 「誰だっ!。待てっ!」


 「………」


 「あ……あなたは……クロイセン神父っ!」


 僕が呼び止めた先で止まったのはなんと先日この村に赴任して来たばかりのクロイセン神父だった。


 予想外の出来事と人物に頭がこんがらがり全く理解が追い付かない。

 

 一体何故クロイセン神父がこのような真似を……。

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