第69話 再会っ!、BS1-52君っ!
「おいっ!、大丈夫かっ!、アイシーンっ!」
「ぐっ……ウィザークか……」
「地面に倒れ込んで動けない姿を晒すとはてめぇらしくねぇじゃねぇか。前にいるあいつにやられたのか。あんな子供にやられるなんててめぇも焼きが回ったな」
「ちっ……うるせぇな。子供だからって油断するなよ。注射器を使った不思議な魔法を使ってくるから気を付けろ」
「ふっ……不思議って。魔法に煙草を使うてめぇが言えた口かよ。いいからてめぇはそこで黙って寝てな。あいつの相手はこの俺がするからよ」
どうやらGGZ-72さんと思われる竜人の女性の名はアイシーンというらしい。
救援に駆け付けたBS1-52君は親しげな様子でその名を呼んでいた。
GGZ-72さんの仇を討つ為にもBS1-52君の方は僕達と戦う気が満々なようだがどうすべきか……。
「(あの姿は忘れようもない正しくBS1-52君に違いない。BS1-52君と初めて出会った時僕達はまだ赤ん坊だったから向こうは僕達のことに気付いてないようだけどこっちも正体を打ち明けた方がいいかな)」
「(そうですね……。BS1-52さんであれば正体を明かしても我々に不利益を被ることもないでしょうし、上手くすればこの場での戦闘も回避できるやもしれません、マスター)」
「(確かに……。ベル達はどう思う?)」
「(信用できる【転生マスター】とは積極的に交流を行って互いの持つ情報を交換するのが得策なの。BS1-52のことが信用できるかどうかはLA7-93の判断に任せることにするなの)」
「(任せることにするなの)」
「(そう……。まだ完全に信用できるとまではいかないけど少なくとも僕はBS1-52君のことを悪い魂ではないと感じているし話しかけてみることにするよ)」
アイシアとベル達と相談を終えた後僕は【転生マスター】のテレパシーを用いてBS1-52君へと呼び掛ける。
赤ん坊の時に一度だけ……。
しかもその時は敵として出会ったわけだが僕はBS1-52君のことを自ら正体を明かしてでも話し掛ける価値がある相手だと感じていた。
戦いを回避するまでには至らずとも正体がバレたことで僕達に不利益を被るような行為をBS1-52君はしないはずだ。
「(も……もしもし……。久しぶりだね……BS1-52君)」
「(……っ!。だ……誰だっ!、お前はっ!。まさか目の前にいる子供が俺に話し掛けてきているのかっ!)」
「(そ……そうだよ。僕はLA7-93って謂うんだけど覚えてないかな……。ほら、7年程前に君達が僕達のウィンドベル村を襲撃した時に殺されずに済んだ男の子の方の赤ん坊の……)」
「(私は殺された女の子の赤ん坊の方のアイシアです。今はマスターの守護霊として霊達となっている状態ですが今BS1-52さんにも姿を見えるようにします)」
「(あの時の子供共かっ!。一体何のつもりで俺に話し掛けてきやがったっ!)」
「(えっ……。そ……それはこうして久しぶりに再会できたわけだしできればBS1-52君との戦いを避けたいと思ったからだけど……)」
BS1-52君から返事は貰うことができたがその反応は僕達の予想と大分違っていた。
テレパシーで話し掛けた僕達に対し明らかに敵意を露わにした刺々しい態度を会話の中で示している。
最後に別れる時には僕がヴェントの足止めをしてBS1-52君達の逃亡を助けたわけだし……。
少しは友好的な関係を築けていたものと思っていたけど一体どういうわけだろう。
「(戦いを避けたいだと……。またそう言って俺達を罠に嵌めるつもりかっ!。てめぇ等もあの薄汚ねぇメノス・センテレオ教団の一員だろうがっ!。……いや、俺と同じ【転生マスター】ってことはてめぇ等こそ連中の裏でコソコソと手を引いてる張本人かっ!)」
「(ちょ……ちょっと待ってっ!。確かに僕達は表上はメノス・センテレオ教団に所属しているけどBS1-52君達を罠に嵌めたりなんてしてないよっ!。一体何の話をしているのっ!)」
「(とぼけるなっ!。てめぇ等の頼みで村を襲った俺達を途中で裏切り皆殺しにしやがっただろうがっ!。初めから世間の信用を得る為に俺達を利用するつもりだったんだろっ!)」
「(BS1-52君達がメノス・センテレオ教団の依頼で僕達の村を襲っただってっ!。君達は魔王アークドーの命令で《《神の子》》であるヴェントを子供の内に始末しようとやって来たんじゃないのっ!)」
「(一体いつまで白を切るつもりだ……。当時の俺達は魔王アークドー軍に所属なんかしてねぇよっ!。その辺のゴロツキだった俺達を雇ってメノス・センテレオ教団の野郎が俺達にそう名乗るよう指示してきたんだっ!)」
「(な……なんだってっ!)」
不意に明らかなになったアイシアの殺されるきっかけとなった魔王アークドー軍襲撃の新事実。
僕達のウィンドベル村を襲わせたのが村を守る為に戦ってくれていたはずのメノス・センテレオ教団自身だなんて一体どういうことだ。
僕達を完全に敵視してしまっているがどうにかBS1-52君はを宥めてきちんと真相を聞き出さないと……。
「ちっ……。さっきから子供相手に睨みを利かせてばかりでウィザークの野郎は何やってんだ。あいつの相手はてめぇが引き受けるんじゃなかったのかよ」
「(メノス・センテレオ教団がBS1-52君達に村を襲わせた上に途中で裏切って皆殺しにしようとしたなんてそんなの僕達は初耳だよっ!)」
「(ふざけるなっ!。世間の信用を得る為に自分達の信者の村を襲わせるなんて手の込んだ真似をした上に、僅か数年の間にこれ程の勢力まで成長させるなんて【転生マスター】が裏で手を引いてるとしか思えねぇっ!)」
「(違うっ!。確かにメノス・センテレオ教団のことを裏で操ってる【転生マスター】はいるけどそれは僕達じゃないっ!)」
「(その存在を知ってるってことはてめぇ等もそいつ等の仲間だってことだろうがっ!)」
「(確かに疑問に思うかもしれないけど僕達の方も色々と事情が複雑なんだっ!。それに仮に僕達がメノス・センテレオ教団の裏で手を引く【転生マスター】だとしてどうしてアイシアを殺させるような真似までしたのっ!。もし本当にそうなら僕達には手を出さないよう指示を出しておくはずだよねっ!。それにその後BS1-52君達が逃げる手助けまでしてあげたのにっ!)」
「(そ……それは……確かにその通りだが……)」
「(だからメノス・センテレオ教団のことを裏で操ってる【転生マスター】は僕達以外にいるんだよっ!。そいつ等は『味噌焼きおにぎり』ってソウルギルドに所属している連中で僕達なんかより何倍も何十倍も危険な連中なんだっ!)」
「(『味噌焼きおにぎり』だとっ!)」
「(えっ……!。BS1-52君も『味噌焼きおにぎり』の奴等のことを知っているのっ!?)」
「(ああ……。このところ『ソード&マジック』に転生を繰り返してる中では一番の実力派で有名なソウルギルドだ。転生先の世界で色々とあくどいこともしてるって噂も聞いてる。しかし何故お前はメノス・センテレオ教団の黒幕が『味噌焼きおにぎり』の奴等だと知っているんだ)」
「(それは……)」
BS1-52君に問われ僕はこれまでの『味噌焼きおにぎり』の者達との関係の経緯を説明した。
具体性のある内容を包み隠さず話したことでBS1-52君も僕達の話を信用してくれたみたいだ。
「(なる程……。つまりお前達はそのブランカ・ティーグレとかいう奴に転生したCC4-22という【転生マスター】が赤ん坊だったお前達の前で口を滑らせたおかげで裏で『味噌焼きおにぎり』の連中が裏で手を引いてることに気付くことができたというわけか……)」
「(うん……。他にも正体が分かっているだけで奴等の仲間には【転生マスター】が2人……。《《転生マスター四天王》》なんて言葉を口にしてたぐらいだから僕達の知らない【転生マスター】のメンバーが更にもう1人はいると思う。BS1-52君を騙したアズール・コンティノアールもその転生マスター四天王の1人のSALE-99って奴で僕達が最も警戒している相手なんだ)」
「(確かにあいつは一筋縄ではいかない相手のようだった……。俺の仲間も全員奴にやられ生き延びることができたのは俺だけだ……)」
「(僕もまさかメノス・センテレオ教団がBS1-52君達に僕達の村を襲うよう指示を出していたなんて夢にも思わなかったよ。裏では奴等の仲間だったとしてもヴェントだけは僕のことを本気で家族だと思ってくれていると信じていたのに……)」
「(けどそいつは【転生マスター】ではないんだろ。だったら仲間から計画について知らされてなかったんじゃないか)」
「(いや……。ヴェントは【転生マスター】ではないけど隠しスキルのページの存在を知っていることを利用してSALE-99達から魂や霊界の存在について知らされているんだよ。しかもヴェント……VS8-44は奴等のリーダーでもあるみたいだから計画について知らなかったなんてことはないと思う。僕達を助けに来てくれた時もきっと僕達の家族であるPINK-87達のメノス・センテレオ教団への信仰心を高める為にわざとアイシアが殺されるのを待ってたんだ)」
「(そうか……。どうやらお前達も『味噌焼きおにぎり』の連中のせいで相当人生を狂わされてしまったみたいだな……)」
「(うん……。ところでBS1-52君はどうして魔王アークドー軍の部隊にいるの?。僕達の村を襲撃した時には所属してなかったんでしょ)」
「(それは勿論メノス・センテレオ教団の奴等に復讐する為さ。俺1人で連中に打ち勝つなんて到底不可能だし魔族の俺が頼れる勢力と謂ったら魔王軍しかないだろう)」
「(そっか……。それでさっきのできればこの場でBS1-52君と戦うのは避けたいって話だけど……)」
「(ああ……。やはりお前達は信用できるようだし俺としてもそうしてくれた方が有難い。只できれば後ろで倒れてるアイシーンも見逃して貰いたいんだが……)」
「(勿論OKだよ。実はそのアイシーンさんも僕達のソウルメイトではないんだけど多分知り合いの魂が転生している相手だろうから僕達もどう対応すべきか困っていたんだ。麻痺薬で2,3日体を動けなくしてあるだけで命に別条はないはずだから連れ帰って手当てしてあげて)」
「(了解だ。それから『味噌焼きおにぎり』の連中に対抗する為にもお前達とは正式に共闘を結びたい。互いに人間と魔族に転生している俺達じゃあ協力もしずらいだろうが定期的な情報交換だけでもして貰えないだろうか?)」
「(OK。流石に魔王アークドー軍との戦いは今日一日で終結したりはしないだろうからまた次の戦場で会った時に正式な取り決めをしよう。この後僕達は本隊の部隊と共にアークシア要塞へと突入する手筈になってるんだけど皆が要塞で戦っている隙にまたこの辺りで落ち合うようにしておけばゆっくりと話を……)」
「敵の目の前で何ボサっと突っ立ってんのよっ!、ヴァンっ!」
「……っ!」
「ア……アイシアっ!」
BS1-52君と正式に共闘を結ぶ話を進める僕達の元に突如としてLS2-77の転生したアイシアが姿を現す。
LS2-77は火と氷の魔法を同時に放ちながら僕を庇うようにBS1-52君の前へと立ちはだかった。
アイシアの攻撃に反応したBS1-52君はGGZ-72さんを抱き抱えて咄嗟に後ろへと飛んで攻撃を躱す。
この部隊に合流する前、洗礼の儀での一件で『味噌焼きおにぎり』の者達から僕が【転生マスター】であるという疑いは一応は晴れているはずだしLS2-77は単純に部隊の仲間であり双子の兄妹である僕の援護に駆け付けてくれたのだろう。
しかし今の僕にとって真の仲間と謂えるのは目の前でLS2-77の対峙するBS1-52君の方だ。
【転生マスター】のテレパシーを用いて僕はすぐさまBS1-52君に対しLS2-77への注意を促す。
「(気を付けてっ!、BS1-52君っ!。今目の前に立ちはだかっているそいつこそが『味噌焼きおにぎり』の転生マスター四天王の1人であるLS2-77だよっ!)」
「(こいつが……)」
先程共闘を結ぶ約束をした僕とBS1-52君だが表上はヴァリアンテ王国の合同部隊と魔王アークドー軍に所属する者として敵対関係にある。
このままBS1-52君とLS2-77が戦闘になったとしても僕はBS1-52君の味方をするわけにはいかない。
それどころかLS2-77の側について僕も共にBS1-52君と戦わなければならず、BS1-52君を傷付けないよう手を抜いて戦うにしてもそれではLS2-77に僕が敵と内通しているのではないかと怪しまれてしまう可能性もあるだろう。
とはいえ僕とLS2-77の2人を相手にすることになっては最悪BS1-52君の命まで……。
一体僕はこの状況にどう対処すべきなんだ。




