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第66話 灰弾

 「携帯用の灰皿を持ち歩いている上にきちんと念入りに火を消してから煙草を捨ててる。マナーが良いだけじゃくて防災意識も強いんだね、GGZ-72さんは」


 「(だぁーっ!、戦闘中だっていうのに敵のマナーの良さに関心させられてる場合じゃないなのーっ!、LA7-93っ!。さっきはどうにか凌げたけど今の戦闘で見せたGGZ-72の実力的に僕達が不利であることは明白だし真剣に手立てを考えるなのーっ!)」


 「(考えるなのーっ!)」


 「(ベル達の言う通りですっ!、マスターっ!。それにGGZ-72さんを相手に出し惜しみしている余裕はありませんっ!。ここは私も相手から視認できない霊体としての特性を活かしてマスターを援護致しますっ!)」


 「(いや。まだ圧倒的にやられているわけではないしもう少し僕だけで戦わせて。折角GGZ-72さんを相手に戦える機会だし僕の『注射器魔法シリンジ』の魔法がどれだけ通用するか試しておきたいんだ)」


 「(そのような悠長なことを言ってマスターがやられてからでは手遅れになってしまいますっ!)」


 「(分かった……。ならアイシアはGGZ-72さんに近くを張り付いて隙があれば氷属性の魔法で相手の動きを封じて。それからもし僕がピンチに陥った時はアイシアの判断で援護に入って構わないから)」


 「(了解しました)」


 僕の指示を受けてアイシアは相手に視認できない霊体の体を活かしてGGZ-72さんの近くへと潜伏しに行く。


 霊体となった存在は見た目の成長こそしないもののその期間に応じて力を増していく。


 姿は赤ん坊のままと謂えど今のアイシアの実力もこの部隊に招集された部隊の他のメンバーと変わらぬ程度に向上しているはずだ。


 おまけに確実に相手の不意をついて援護をしてくれるアイシアの存在は僕にとって非常に頼もしい。


 そして僕達が相談している間に煙草の一服を終えたGGZ-72さんはと謂うと……。


 「さてと……。こいつを使うのも久々だな」


 「でもいくらポイ捨て厳禁とはいえ戦闘中に一服するばかりか携帯用の灰皿まで取り出すなんて一体GGZ-72さんはどういうつもりなんだろ?。もしかして僕って舐められてるのかな……って。あ……あれは……っ!」


 満足げな表情で一服を終えたGGZ-72さんだが、吸い殻を捨て終えた後もどういうわけか携帯灰皿をしまわずに服の内側から更なる物を取り出した。


 それは正しく『地球』のような魔法の存在しない世界では最もポピュラーで安易な取り扱いであっても高い殺傷力を誇る筒状の銃身から弾丸を発射する武器、銃の形状をした物であった。


 GGZ-72さんが取り出したのは銃の中でも片手で射撃できるようデザインされた小型の銃器で拳銃と思われる形状をしていた。


 銃器自体はファンタジー風のこの『ソード&マジック』の世界にも存在しているがやはり魔法の陰に隠れて戦闘ではほとんど使われない。


 魔法が不得意な一般人が護身用に持つくらいである。


 しかもその製造技術もほとんど発展しておらず、今GGZ-72さんが手にしている拳銃のように小型化、軽量化された代物はこれまで転生を繰り返してきてこの『ソード&マジック』の世界で見たことがない。


 護身用に家に置かれているのも精々マスケット銃程度の技術の代物だったがGGZ-72さんはあんな銃を一体何処で手に入れたんだ。


 携帯灰皿と同じで銀メッキに金の装飾模様が施されていて中々に格好良いデザインをしているけど……。


 「(あ……あれってどう見ても拳銃だよね。まさか僕達相手に銃で戦うつもりなの。この世界であそこまで発展した銃を見るのは初めてだけど流石に魔法が存在するこの世界では役不足だと思うんだけど……。銃の弾なんてちょっと魔力で体をコーティングしただけで防げちゃうし……)」


 「(銃の見た目をしているだけでとんでもない性能を秘めたアイテムかもしれないから油断しちゃ駄目なのっ!。LA7-93のだって見た目は只の注射器だけど性能は普通のそれとは比べ物にならないどころかまるで別物なのっ!)」


 「(別物なのっ!)」


 「(そ……それはそうだよね。僕のメルクリオ注射器のようにGGZ-72さんも何処かの錬金術師にあの銃を製造して貰ったのかな。けどだとして一体どういう力を秘めたアイテムなんだろう。拳銃の形状をしているから当然何かの弾を撃ち出してくるんだろうけど……)」


 「よし……こんだけ溜まってりゃ1戦分ぐらいは十分に弾がもつだろ」


 「(あ……あれっ!。GGZ-72さんさっきの携帯灰皿を取り出した拳銃の持ち手のところにはめ込んじゃったよっ!。もしかしてあれって只の灰皿じゃなくて銃のマガジンだったのっ!)」


 なんとGGZ-72さんは先程の携帯灰皿を拳銃の持ち手の下部へと装着してしまった。


 つまりあの携帯灰皿は銃の弾倉だったというわけだが、まさかあの拳銃は携帯灰皿に詰まった吸い殻を撃ち出す物だというのだろうか。


 「(だぁーーっ!。だから僕達の言った通りだったなのっ!。マナーの為だけにわざわざ戦闘中に携帯灰皿に煙草を捨てるわけないなのっ!)」


 「(捨てるわけないなのっ!)」


 「(いや……。流石に僕もちょっと変だなとは思ってたんだけどまさか銃のマガジンだったとは……)」


 予想外の武器を取り出したGGZ-72さんに動揺を隠せない僕達。


 そんな僕達を余所にGGZ-72さんは携帯灰皿を弾倉として装着するというファンタジー世界ならではの拳銃の銃口を僕達へと向けた。


 「おらよっ!」


 「……っ!」


 GGZ-72さんの拳銃から僕達に向けて銃弾が撃ち放たれて来る。


 銃弾といってもファンタジー世界特有のバレーボールサイズ程の大きさの魔力の塊のようなものだ。


 煙草の吸い殻を弾薬としているだけあって暗い灰色をしていた。


 弾速はそこまで速くはなく容易に反応できる程度のものだったが、途中で自身に命中することはないと判断できた為僕は特に躱す素振りを見せなかった。


 僕に命中することなく弾丸は付近の地面へと着弾したのだが、その着弾地点から周囲に灰色の煙が巻き起こる。


 その後もGGZ-72さんは次々と僕に向けて弾丸を撃ち放ってくるのだが、どれも僕に命中することはなく只地面に当たって煙をまき散らしていた。


 「な……なんだ……。さっきから銃弾を撃ち放って来てるけど全然僕の方には飛んでこないぞ。もしかして意外と射撃は下手なのかな、GGZ-72さんは」


 「(うむぅ……。そんなことはなく何かしら狙いがあると思うんだけどなの……ってああっ!。周りを見てみるなのっ!、LA7-93)」


 「(見てみるなのっ!)」


 「えっ……こ……これはっ!。いつの間……ごほぉっ!、ごほっ!、ごほっ。いつの間にか周りが煙だらけになっちゃってるよっ!。煙たくてまともに息ができないどころか肺が焼けるように熱い……。これ多分只の煙じゃないよ……ごほっ!、ごほっ!」


 「(マスターっ!。GGZ-72さんがそちらにっ!)」


 「えっ……」


 GGZ-72さんの巻き散らした煙を吸い込み僕は酷く咳き込んでしまう。


 更にその煙はまるで火事の現場の中にでもいるような高熱を帯びていた。


 喉も無性にイガイガするし恐らくこれは煙ではなく灰だ。


 GGZ-72さんの銃の弾薬となっている物を考えると煙草の吸い殻を灰の弾丸に変えて撃ち放ってきているのだろう。


 咳き込んで動きを止めてしまっている上に巻き上がった灰で周囲の視界が塞がれてしまっている。


 そこへ容赦なくGGZ-72さんが再び接近戦を仕掛けるべく僕の元へと突っ込んで来た。


 アイシアの呼び掛けに反応して気付いた時には既に灰の煙の中からGGZ-72さんの物と思われる黒い影がすぐそこまで迫って来ていた。


 「おらぁーーっ!」


 「ぐはぁぁーーっ!」


 激しい咳が止まらず、肺から火が起こっているように全身が熱く、おまけに灰の毒に犯されたのか非常に体が怠い。


 このような状態でまともに対応できるはずもなく、僕はあえなくGGZ-72さんの蹴りを受けてふっ飛ばされてしまう。


 今度は『泡の障壁(バブルバリア)』の魔法も発動できておらず鳩尾みぞおちに強烈な一撃を食らったことで激痛と共に激しい吐き気を催し立っているのもままならない状態だ。


 そんな僕にすかさずGGZ-72さんは追撃を仕掛けようと突っ込んでくる。


 意識が朦朧とする中で僕は地面にメルクリオ注射器を突き刺し、更に自信の周囲から水を噴き出させて壁を作り出しどうにかGGZ-72さんの接近を阻む。


 水壁の中へと隠れられ僕の姿が視認できなくなったことでGGZ-72さんの方も一先ず距離を取る判断をしてくれたみたいな。


 この隙に僕は水壁に隠れた中でGGZ-72さんに対抗する為の秘策を用意する。

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