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第62話 合同部隊

 「さて……どうやら到着したようですよ、ヴェント様、皆さん」


 ウィンドベル村を馬車に乗って出立してからちょうど1週間後の正午過ぎ。


 途中幾つかの街を経由して遂に僕達は対魔王アークドー軍部隊の拠点へと到着した。


 馬車を下りた僕達の目の前にはとても厳重な守りで造られた城塞の光景が広がっていた。


 正面には巨大な門、その門から続く10メートルの高さ超える重厚な壁が一帯を囲い、外堀は幅5メートルを超える水路となっている。


 僕達は味方側だから普通に門から入れて貰えるだろうが外敵にとってこの城塞に侵入を試みるのは至難の業だろう。


 その城塞の光景に圧巻される僕達の元へ門の前から1人の男性が出迎えにやって来た。

 

 門の両脇や城壁の上に立つ重厚な鎧を着た兵士達と比べてその男性は軍服ではあるのだろうけど身軽な格好をしている。


 またその衣装の装飾の豪華さからかなり位の高い人物のように思えるがこの男性もメノス・センテレオ教団で幹部を務める1人なのだろうか。


 「ようこそお出で下さいました。神の子(・・・)ヴェント様。そしてメノス・センテレオ教団の皆様方。今回は我がヴァリアンテ王国の急な招集に馳せ参じて頂きまして誠にありがとうございます。私はこのカレイジャス城塞にて参謀を務めさせて頂いているクレイヴァーと申します」


 「えっ……ヴァリアンテ王国って……。僕達はヴェント兄ちゃん達メノス・センテレオ教団の部隊にやって来たんじゃなかったの?」


 「その予定だったけど急遽ヴァリアンテ王国から領内各地に存在するあらゆる組織に向けて大規模な合同部隊を編成する招集が掛かってね。僕達メノス・センテレオ教団も少数の精鋭を率いて参加することにしたんだ。馬車で向かう最中に報告を受けたことだったから話すのが遅れてしまって済まない」


 「そんなの全然気にしなくていいよっ!。それよりその部隊に参加するメンバーに選ばれてるってことは僕達はヴェント兄ちゃんに選ばれたメノス・センテレオ教団の

精鋭ってことじゃないかっ!。まだ実戦の経験のない僕のことをそこまで買ってくれてるなんて嬉しいよっ!」


 「ふっ……だけど喜んでばかりもいられないよ、ヴァン。この部隊には僕達メノス・センテレオ教団のことを良く思っていない連中も大勢参加してくるはずだからね」


 「えっ……それって一体どういうこと?、アズールさん」


 「まぁ、部隊で行動していればその内分かるよ。そんなことより早く僕達をここの指揮官のところに案内してくれないかな、クレイヴァーさん」


 「畏まりました。ではこちらへどうぞ……。おいっ!、早く門を開けっ!」


 「はっ!、クレイヴァー参謀閣下っ!」


 SALE-99の意味深な言葉に少し動揺しながら僕は皆と共にクレイヴァーさんの案内の元カレイジャス城塞の中を進んで行く。


 門を潜ると最初は弊社や武器庫のような建物ばかりが建ち並び、如何にも前線基地らしい殺伐とした雰囲気だったが少し進んだ先には商人達の活気あふれる声が飛び交う市場、更にその先には落ち着いた雰囲気の中人々がゆったりとした時を過ごす住宅区が広がっていた。


 どうやらこんな戦いの最前線の場所でも逃げ出さずに暮らす市民達もいるみたいだ。


 クレイヴァーさんの話ではこの市民達の存在が前線基地の殺伐とした雰囲気を和らげ、兵士達の精神衛生を支えるのに大いに貢献してくれているとのことらしい。


 自国の民を守るという兵士の責務とは矛盾してしまっている気もするが、自分達が守るべき者達の存在を間近で感じられるというのは戦いに身を置く者達にとって非常に大切なことなのかもしれない。


 そんな普通の街と変わらぬ区画を抜けていくと僕達は城塞の壁に覆われた区画の中央に聳える5階程の階層はあるであろう巨大な城の前へと到着した。


 どうやらこの城がこの対魔王アークドー軍合同部隊の本拠となっているようだ。


 正面の門から中に入ると特に区画の仕切られていないだだっ広い空間が広がっていて、そこには明らかに戦闘を生業にしていると思われる格好をした者達の姿で溢れかえっていた。


 しかしここに来るまで見たヴァリアンテ王国の正式な兵士達のようにその場にいる者達の身なりはバラバラでまるで統一がなされていない。


 恐らくこの者達が僕達と同じように各地から招集されたヴァリアンテ王国に謂わば傭兵として雇われた者達なのだろう。


 僕達に関してはこれでも慈善活動に重きをおく宗教的な団体である以上ヴェントはヴァリアンテ王国側に特に報酬などは要求していないだろうが。


 とはいえ結局のところ僕達も各地の信者達から献金を受けて活動を維持している為実態としてこの場にいる傭兵達とさほど変わりはないのかもしれない。


 「おっ……噂をしていればあいつ等じゃねぇのか。例のメノス・センテレオ教団の

連中は」


 「どうやらそうみてぇだな。ちょっと挨拶をかまして来てやろうぜ」


 戦闘しか取り柄のないまるでごろつきのような見た目の者もいるなかで教団の聖職者として割と上品な格好をしている僕達の姿はかなり目立っているようだった。


 1階のロビーとなっているような空間を進んで行く最中周りから注目の視線が集まっているのを感じる。


 そして中には只注目するだけでは収まらない連中もいたようで……。


 「おいっ!、お前等だろっ!。最近俺達の国で色々と目立つことしてくれてるメノス・センテレオ教団ってのはよっ!」


 「確かに僕達はメノス・センテレオ教団の一員だけど……君達は一体何者だい?」


 「俺達は王都ヴァリエスタに拠点を置く冒険者ギルドの『飛翔する雄傑』の者達だっ!。早速だがてめぇ等に言っておきたいことがあるっ!」


 「言っておきたいこと……それは一体何だい?」


 「ちょっとヴェン兄……。こんな奴等相手にしない方が……」


 その中でも如何にもガラの悪そうな連中が僕達に声を掛けて来た。


 それに対しまともに応対しようとするヴェントをLS2-77の転生したアイシアが無視するよう促している。


 話を聞く前から僕達に対し露骨に敵意を露わにしてるし僕もLS2-77のように無視した方が良いと思うんだけど真面目な性格をしているヴェントは……。


 「てめぇ等の偽善めいた活動のせいでこっちは仕事が激減してはなはだだ迷惑してんだよっ!。この国の至る所でてめぇ等が見境なく、おまけに無料タダで依頼を引き受けて回っているせいで俺達のギルドの依頼料が暴落したどころかそもそも全然依頼が回って来ねぇじゃねぇかっ!。ミーズ(・・・)ニーズ教団(・・・・・)の奴等だけでも鬱陶しかったってのによ……。依頼を受けるのは結構だがそれならちゃんと報酬を請求しやがれっ!」


 「なる程……それは済まないことをしたな。だが我々メノス・センテレオ教団も世界の救済の為に活動していることだ。悪いが君達の要求を受け入れることはできない」


 「なんだとっ!。なら世界を救済する為なら俺達の生活はどうなってもいいっていうのかよっ!」


 「そういうわけではないが人の財産の足元を見て依頼を引き受けるか否かを判断するような君達のやり方は間違っていると思うだけだ。先程君達は我々が報酬を受け取っていないと言ったがそれは全くの勘違いだ。我々メノス・センテレオ教団も人々から献金という形でしっかりと報酬を受け取っている。人々が君達に仕事を依頼することなく我々に献金をするのは我々のような職務を行う者達は貧富の差に関係なく困っている人々を救済して欲しいと願っているからだ。本来なら人々から税を受け取る国がやるべき仕事だがその手が回らないことをいいことに自分達の都合の良いように仕事をかすめ取った君達にとやかく言われる筋合いはない」


 「な……なんだとっ!」


 「依頼がないというなら普通の職に就くと良い。報酬は安いかもしれないが人手を必要としている職ならいくらでもあるはずだ。どうしても今の職を続けたいというなら我々のように誰でも分け隔てなく依頼を引き受けられるような形に制度を変えることだ」


 「こ……この野郎っ!。言わせておけば生意気な口ばかり利きやがって……」


 「そこまでですっ!。『飛翔する雄傑』の方々っ!。我々の招集に応じこの場に来て下さったことには感謝しておりますがこれ以上ヴェント様やメノス・センテレオ教団の方々に失礼な態度を取るのであれば我々ヴァリアンテ王国の元であなた方のギルドを裁かせて頂きますが如何致しますかな」


 「メ……メノス・センテレオ教団のヴェントだと……。それじゃあまさかこいつが例の神の子(・・・)……。まさか教皇自らこんな最前線の基地に出てくるなんて……」


 「さ……流石に神の子(・・・)に喧嘩を売るのはまずいぜ。いいからこの場はさっさと引き下がろう」


 「ああ……」


 「流っ石っ!、ヴェン兄っ!。見事な正論であいつ等に全く反論する隙を与えなかったわね。おまけにヴェン兄が神の子(・・・)だって分かった途端に逃げ出しちゃってあいつ等ダサ過ぎ~」


 「ふぅっ……。でもいきなり喧嘩になるかと思って冷や冷やしちゃったよ……」


 「何言ってんのよ、ヴァン。喧嘩になったところで私達があんな連中に負けるわけないでしょうが」


 「いや……別に勝つ負けるの意味で言ったわけじゃないんだけど……。でもさっきアズールさんが言ってたのはあのような人達のことだったんだね」


 「ふっ……あいつ等は相手にする価値もないカス共さ。僕達が真に警戒をしなければいけない連中も直にこの場に姿を現すだろう」


 「真に警戒をしなければならない連中……」


 いつものようなにやけ面ではなく割と真剣な表情でそう口にするアズール・コンティノアールことSALE-99。


 本心でそう思っているということなんだろうけどSALE-99達が本気で警戒を促すなんて一体どんな連中なんだろう。


 そんな疑問を抱きながら僕は皆と共にクレイヴァーさんに案内されこの部隊の総司令官の待つ部屋へと向かって行った。

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