第55話 解析注射器
「さぁ、昨日で解析の魔法の術式の調整は終わったし今日はいよいよ実戦だ。『注入』の能力を使ってブループライドの蕾を開かせてみよう」
「うんっ!、ヴェント兄ちゃんっ!」
ヴェントに見守られる中、僕は共に『注射器魔法』の魔法専用に術式を調整した『解析』の魔法をブループライドに向けて発動させた。
僕の魔力による青白い光にブループライドが包み込まれ、それと共に僕の脳内にまるで植物図鑑のページに描かれたブループライドの断面図のようなものが思い浮かびその構造や現在の状態の情報を事細かに教えてくれる。
ここまでは通常の『解析』の魔法と変わりないのだが僕達が『注射器魔法』の魔法専用に調整したこの『解析』の魔法は『注入』の能力により起こしたい反応、更に手元にある注入可能な物質の情報を設定することでそこからその反応を起こすのが可能な方法を導き出すことが可能だ。
僕が発動した『解析』の魔法に早速蕾の開花、そして手元にある霊薬の情報を設定すると直ちに更なる解析が行われその方法が適切であると思われる順に並べられ僕の脳内にイメージとなって表示された。
その中で最も適切と判断された方法は『バイタリン』というブランドの体力回復系の霊薬を0,7g、ブループライドのちょうど茎と根の変わり際にある導管から注入すると謂うものだった。
以前ブループライドを枯らしてしまった時は同じ体力回復系の霊薬ではあったのが100gを超えていた為恐らく注入した量が多過ぎたのが原因だったのだろう。
僕は早速ブループライドを植え替えたケージの土を掻き分け根元の部分を出し、『解析』の魔法の解析通りブループライドに注入を行った。
すると……。
「おおっ!。『解析』の魔法の解析通りにやったら本当にブループライドの花が咲いたよっ!、ヴェント兄ちゃんっ!。自分の魔法に対してじゃないのにこんなに的確なアドバイスができるなんてやっぱりヴェント兄ちゃんは凄いねっ!」
「………」
「んん?、どうしたの、ヴェント兄ちゃん」
ブループライドの花が先喜びを露わにする僕を余所に成功の助言どころか実際に術式の組み立てまで手伝ってくれたヴェントは沈黙したまま意味深な表情を浮かべている。
僕としては十分な手応えを感じて魔法を発動できたと思ったのだがヴェントにはまだ何か気になる点があったのだろうか。
「何か僕の魔法に気になるところでもあった?」
「んん……ああ。ヴァンの『解析』の魔法についてだけど『注射器魔法』の魔法を組み合わせて使えばもっと性能を高めることができるんじゃないかと思って」
「『解析』と『注射器魔法』の魔法を組み合わせる?。それって一体どういうこと、ヴェント兄ちゃん」
「『解析』の魔法を発動させずとも『抽出』や『注入』の能力を使う際はその注射器の針を挿した先から対象の情報をある程度は把握できてるわけだろう。それなら……」
「そうかっ!。僕の『注射器魔法』の注射器の針を通して『解析』の魔法を発動させればもっと多くの情報を取得できるかもしれないってことだねっ!」
「それだけじゃなくて『注射器魔法』の注射器に物質を抽出した状態で『解析』の魔法を発動させるとかね。針を通してよりもその方がより多くの情報を得られるんじゃないかな」
「分かったっ!。術式の調整にまたちょっと時間が掛かっちゃうかもしれないけどとにかくやってみるよっ!」
ヴェントの助言に従って僕は『注射器魔法』の魔法の注射器を用いて行えるよう再び『解析』の魔法の術式を調整し直す。
基本的な術式自体は組み替える必要はなかった為この調整は1時間程度で終了した。
調整が終わった後で僕は早速ヴェントに言われた方法での『解析』の魔法の発動を試してみることにする。
ブループライドへと注射器の針を挿した状態、更に注射器の筒がブループライドの鮮やかな青色の成分の液体で満たされた状態で『解析』の魔法の発動を発動すると……。
「す……凄いっ!。ヴェント兄ちゃんの言ってくれた通りにしてみたら今度は構造どころか今生きてる状態のブループライドの細胞1つ1つがどんな動きをしているのかまで見れるようになったよっ!。これなら『注入』の能力による効果ももっと色々と発現させることができると思うっ!」
「そうか。なら今度はブループライドの花の花びらの色を変えて咲かせてみようか。7枚ある花びらを全て別々の色で咲かせることができるようになったら実際に自分達の肉体を使っての注入の修行に移ろう」
「了解っ!、ヴェント兄ちゃんっ!」
この『注射器魔法』の魔法の注射器の針を対象に挿す、もしくは注射器の筒へと抽出した物質に対して行う『解析』の魔法を僕は『解析注射器』と名付けた。
その後も『解析注射器』を用いて注入の修行を行い、今日の内に僕は自分の体に肉体強化の霊薬を注入する段階にまで到達することに成功する。
肉体強化の霊薬を注入された僕の肉体は通常の方法で口から飲んで摂取するよりも遥かに強化され、なんと300キロ以上はある大岩を持ち上げることに成功、更には垂直飛びで3階建ての内の屋根の上の高さにまで飛ぶことができるようになった。
ヴェント曰くこれならもう十分メノス・センテレオ教団の戦闘員として配属させて貰えるレベルであるそうだ。
その言葉を聞き後日僕は戦闘員として通常するかどうかの試験という名目でヴェントに模擬戦を申し込む。
神の子であるヴェントと戦闘を行うことでここまで『注射器魔法』の魔法を習得した自分の実力がどの程度のものか知りたかったのだ。
そしてこれより1週間が経過した後。
僕は村の外れの草原でヴェントと模擬戦を行うべく対峙する。




