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第50話 その後

 神の子(・・・)ヴェントの奇跡の業によってアイシアが蘇ってからもう6年程が経過していた。


 今年で7歳になる僕はいつもの『ソード&マジック』の世界への転生のパターンだと学校に通いながら魔法について学んでいる頃だ。


 【転生マスター】として魂の記憶と思考を有している僕達なら独学で学ぶ方がむしろ効率が良いとも謂えるが一応その転生においての世界がどのような歴史を辿ったか等も学べる為通うようにしている。


 後は単純に友達も増やせるし、そもそもちゃんと通わないとPINK-87さんにどやされてしまう。


 しかしながら今回僕達が転生したウィンドベル村はその規模が小さく通える範囲内に学校のような施設はなかった為僕達は独学で魔法の修行を行っていた。


 今回も目指すは勿論僕の固有オリジナル転生スキルとなる『注射器魔法シリンジ』の魔法の完成。


 今はその基本ベースとなる『抽出エキストラクト』と『注入インジェクト』の能力を発動する為の注射器を具現化することができるようになったところだ。


 「よしよし……。日々の修行のおかげか大分良い感じの注射器が具現化できるようになったぞ。これなら10トンぐらいの水だって……」


 今僕の手に握っている目盛りの付いた透明な先端に針の付いた透明な筒。


 『地球』、そしてこの『ソード&マジック』の世界においてもどこにでもあるような普通の注射器の形をした物質こそが僕の『注射器魔法シリンジ』の魔法を発動させる為の基本ベースとなる僕の魔力で具現化した注射器だ。


 あくまで魔力によって具現化された状態のもので実物としてこの世界に存在しているわけではない。


 僕の魔力を供給するのを止めればこの注射器はすぐに僕の手元から消え去ってしまう。


 錬金術によって特殊な効果を施した実物の注射器を錬成して使用する術も考えたのだが、割と工程が複雑で実戦で使用できる程精錬された物を錬成するのは難しく、魔力で具現化した物よりそこまで性能を高めることができなかった為取り敢えず今は採用を控えることにした。


 具現化した注射器である程度『注射器魔法シリンジ』の魔法を使いこなせるようになった後でまた実物の注射器の錬成も試みてみようと思う。


 「よしっ!。遂に目標としていた10トンの水を抽出できたぞっ!」


 湖の水面へと注射器の針の先端を浸してゆっくりと注射桿プランジャを引くと注射器の筒が段々と水で満たされていく。


 注射器で湖の水を採取するなんてあまりないような光景だけど傍から見ると普通の注射器を使用しているようにしか見えないだろう。


 けれど僕の魔力で具現化したこの注射器には今普通の注射器では考えられないような量の水が収容されていっている。


 通常の注射器と同じように筒内に収容された物質ので測るような表記をされていながらもデジタル式のように数値が変化していく目盛りが指し示すその水の収容量はなんと10トン。

 

 大体だけど普通の一人部屋を2部屋分くらい水で一杯にしたくらいの量が収容されてるんじゃないかな。


 筒内を大量の水で満たされ、青空の中太陽の光で受けて美しい透明な輝きを放つ『注射器魔法シリンジ』の注射器を見て僕は満足げな笑みを浮かべる。


 抽出・・する時は引いていた注射桿プランジャを軽く押すと針先から少し水が溢れ手元へと滴り落ちてきた。


 何だか漫画や映画なんかで注射を打つ前の確認作業をしている医者になった気分だ。


 っと言っても今回の僕はこの抽出・・した水を患者の誰かに注入したりするわけではなく医療行為とは到底程遠いことに活用するつもりなんだけど……。


 「さて……。どうにか10トンの水を抽出・・できるようになったけど次はどうしよう……」


 「(折角スペックの高い器に転生できてることだし思い切ってこの10トンの水を全て使って水撃ストリームの魔法を発動してみるなの。きっと凄い威力の水撃すいげきが撃ち放てると思うなの)」


 「(思うなの)」


 「そうだね。それじゃあちょっとやってみようか……」


 取り敢えず今回の転生の目標の10トンの量の水を抽出・・して注射器に収められるようにはなったけど次はこの抽出した水を色々な魔法へと用いることができるようにならないといけない。

 

 その訓練の一環として今日は思い切ってこの10トンの水を全て使用して水撃ストリームの魔法を発動させてみることにした。


 麓からまた少し高台へと上り、見下ろした湖へと抽出・・した水を収めた注射器を両手でしっかりと握って向ける。


 その針の先端から水が噴き出るイメージを思い浮かべて一気に水撃の魔法を撃ち放った。

 

 極細の針の先端から溢れ出る水は瞬く間に柱のように太く巨大な水流へと変わり湖の水面へと激突する。


 それと同時に凄まじい衝撃が巻き起こり爆発したかのように湖の水が大波を起こして弾け飛ぶ。


 その水飛沫は50メートルは離れているであろう僕達の元にまで舞い飛んできた。


 「ふぅ……」


 「(おおーーっ!。今のは滅茶苦茶良い感じだったなのっ!)」


 「(良い感じだったなのっ!)」


 「(これまでの水撃ストリームとは比べ物にならない程凄まじい威力でした。これがマスターの固有オリジナル転生スキルとなる『注射器魔法シリンジ』の魔法の力なのですか)」


 「うん。注射器に抽出・・した物質を使って魔法を発動させることで魔法の威力を劇的に高める。『注射器の中の媒体(シリンジ・ミディアム)』も僕の『注射器魔法シリンジ』の魔法の力の1つなんだ。取り敢えずの目標は抽出・・した水をその『注射器の中の媒体(シリンジ・ミディアム)』の力で活用しての戦闘力を鍛えるって感じかな」

 

 「ヴァン~、母さんがそろそろお昼ご飯の準備ができるからって呼んでるわよ~。早く行きましょ~」


 「あっ……アイシア。分かった。もう修行を終わりにするからちょっと待ってて……」


 修行をしている僕のことを呼びにアイシアがこの場へとやって来た。


 しかしアイシアと謂ってもこのアイシアは僕の魂の従者であるアイシアではない。


 本物アイシアは今も守護霊として僕の傍にいる。


 ヴェントの神の子(・・・)の力で蘇らせて貰ったはいいのだけれどその身には全く別の魂が転生してしまっていたようだ。


 僕のことをマスターと呼ぶわけもなく普通の双子の兄妹として接してくる。


 それがヴェントが意図してやったことなのかどうかも、他の蘇らせて貰った住民達も同じようになっているのかも今のところ判明していない。


 そして蘇えって新たな存在となったアイシアには更なる疑惑があり……。


 「モグモグ……ゴックンっ!。あ~美味しかった。やっぱり母さんの作る料理は何でも最高だね、アイシア」


 「ええ。今のミートソースのパスタなんて麺の湯で具合とソースとの絡む具合が絶妙で最高に美味しかったわ」


 「2人共そんなに褒めてくれてありがとう。ヴァンはお昼からもまた魔法の修行をしに行くのかしら?」


 「うんっ!。僕も早く強くなってヴィンス兄さんのように神の子(・・・)であるヴェント兄さんの手伝いができるようになりたんだ。最近は各地の魔王軍の動きも活発になってメノス・センテレオ教団の皆も大変なみたいだし……」


 「そう~。ヴァンはとってもお兄さん思いなのね~。けどヴィンスに続いてヴァンまで家を空けるようになったら母さん寂しくなっちゃうわ~」


 昼食を食べに家へと帰って来た僕だけどその食卓を囲んでいるのは僕とPINK-87さん、それに新たに蘇えったアイシアの3人しかいなかった。


 父親であるMN8-26さんは昼間は働きに出ているのけれど、魔王軍の襲撃以降神の子(・・・)として正式にメノス・センテレオ教団の教皇に就任したヴェントはヴィンス兄さんであるRE5-87君を連れて教団の活動の為各地を巡っている。


 神の子(・・・)であるヴェントがこの村で引き起こした奇跡は瞬く間に各地へと広がり、その信奉者も増えメノス・センテレオ教団はこの辺り一帯を統治するヴァリエンテ王国の中でも1,2位を争う宗教勢力へと躍進していた。


 メノス・センテレオ教団はその信仰の布教だけなく、聖職者達の中から戦闘力の高い者を選りすぐって治安活動、更には各地の魔王軍の討伐にまで当たらせていた。


 今ではこの村にあるメノス・センテレオ教団の本部にメノス・センテレオ教団が活動を行った各地から感謝の書状が届いているようだ。


 一度ヴァリエンテ王国の国王からその活動を賞賛して使者が遣わされてきたこともあるくらいにまで。


 ヴェントの家族である成行き上僕も一応はメノス・センテレオ教団の信奉者となるしかなく、ヴェント達についてもあれから特に情報が得られたわけでもない為取り敢えずはメノス・センテレオ教団に協力しながら固有オリジナル転生スキルの『注射器魔法シリンジ』の魔法の完成を目指すことにした。


 魔王アークドー軍には僕の魂の従者である本物のアイシアを殺された恨みもあるし『注射器魔法シリンジ』の魔法を実戦で試す相手としても不足ない。


 「アイシアはお昼はまた教会?」


 「うん。今日も神父さん達のお手伝いをさせて貰うの。教会でお手伝いさせて貰ってる間は修道女シスターの格好をさせて貰えるから気に入ってるんだ」


 「そう~。アイシアもいつかはメノス・センテレオ教団の正式な修道女シスターとして働かせて貰えるといいわね~」


 そして僕がさっき言ったこの蘇えった新たなアイシアのついてなのだが……。


 疑問に思う点とはこのアイシアが毎日のようにメノス・センテレオ教団の教会へと通っていることなのだ。


 まだ7歳の内から教会の手伝いをし少しでも社会に貢献しようとするのは普通に良いことではあるのだが……。


 しかし僕達の家族で毎日のように教会へと通っているとなると僕達はヴェントのことを彷彿とさせてしまう。


 ヴェントも神の子(・・・)として正式なメノス・センテレオ教団の教皇となる以前から頻繁に教会へと通っていた。


 僕達はヴェントがその教会で『味噌焼きおにぎり』のメンバー達と密会を行っていたものと予想していたのだが、案の定この新たに蘇えったアイシアも同じようなことを行っているふしがある。


 つまり僕達はこのアイシアもヴェント達『味噌焼きおにぎり』の仲間ではないかと疑っているわけなのだが……。


 っというのも霊体となったアイシアに教会へと向かった新たなアイシアの後を尾行して貰った際、新たなアイシアは一般人は勿論幹部以外の信者も立ち入り禁止となっているはずの教会の地下室へと足を踏み入れていたと言う。


 アイシアと同じように神の子(・・・)でありメノス・センテレオ教団の教皇でもあるヴェントの家族である僕やPINK-87さんは立ち入りを許可して貰えていないというのにだ。


 本当はアイシアに地下室まで後をつけて新たなアイシアの様子を探って欲しかったのだが、生憎と霊を阻む結界が張られていて霊体となったアイシアでさえも侵入不可能な造りとなっていたようだ。


 以前ヴェントが深夜に僕達の赤ちゃん部屋を訪れた時SALE-99は霊体として活動する【転生マスター】にも警戒を怠らないようブランカに注意を促してた。


 恐らくその結界もSALE-99は張ったものなのだろう。


 そのような厳重な警戒の施された場所への侵入が許されているとなるとやはり蘇えった新たなアイシアに転生している魂も単にメノス・センテレオ教団の一員というわけでなくヴェント達『味噌焼きおにぎり』の直接の仲間であると考えられる。


 一体この新たなアイシアは教会の地下で何をしているのだろうか。


 「ただいまー」


 「お帰りなさい、アイシア」


 「ヴァンは?。もう修行から帰って来た?」


 「ええ。汗掻いたからって先にお風呂に入ってるわよ」


 「ふーん、じゃあ私も教会の手伝いで汗掻いちゃったしついでに一緒に入ってくるわ。後お腹も空いちゃってるから上がってくる頃には夕飯作っといていてよね~」


 「はいは~い。了解致しました~」

 

 昼食終えてからまた修行を終えて時刻は夕方を回ろうとしていた。


 結構な汗も掻いたことだしPINK-87さんが夕食の支度を終えてる間に先にお風呂を済ませておこうと考えた僕は浴槽でゴシゴシとタオルで背中を磨いていたのだけれど……。


 「ふぅ~……今日の修行もまずまずだったね。最終的に15トンまで水を抽出・・できるようになったし明日はそろそろ『注入《インジェクト』の能力の方も試してみようかな」


 「は~いっ!、ヴァン~っ!。私も一緒にお風呂を済ませちゃうからよろしく~っ!」


 「へっ……うわぁっ!」


 僕が気持ち良く背中を磨いていると突然浴室の扉が開き新たなアイシアが勢いよく浴槽へと飛び込んで来た。


 突然の出来事と浴槽のお湯の水飛沫に僕は思わず声を上げてしまう。


 「ビ……ビックリするじゃないか……アイシア。入ってくるならノックぐらいしてよ。っていうかわざわざ一緒に入らなくたって……。双子の兄妹だっていってもアイシアは一応女の子なんだし……」


 「あら~、もうそんな風に異性を意識してるなんてヴァンって随分とおませちゃんなんなのね~。もしかしてまだ7歳の私に発情しちゃってるの~」


 新たなアイシアは僕のことをマスターと呼ばないばかりかお茶目で活発な女の子で本物のアイシアとは随分とかけ離れた性格をしていた。


 今みたいに突然お風呂に飛び込んできたり、異性を意識する僕を揶揄ったりなんてことは日常茶判事だ。


 それに本物とアイシアと違う点は性格だけなく……。


 「(くっ……本来なら成長した私であるはずの姿でマスターにそのような態度を取られるのは心外です)」


 「(し……仕方ないよ、アイシア。このアイシアに転生している魂にもそれぞれの個性っていうものがあるんだからそこは尊重してあげないと……)」


 「(ですが……)」


 「ふふふ~、そんなに緊張してるならバスタオルを巻いて入ってあげようか?」


 「い……一応気を遣って上げただけで双子の妹と一緒にお風呂に入るぐらいで緊張なんかするわけないだろっ!。それより湯船に入るならちゃんと体を洗ってからにしろよっ!」


 「はいはい……分かったわよ」


 「うっ……」


 僕に正論を言われて新たなアイシアは渋々と謂った態度で湯船からまた出て来る。


 それにより湯船で隠れていた新たなアイシアの裸体の全貌が僕の目に明らかとなってしまった。


 それを見た僕は思わず顔を赤くして目を背けてしまう。


 「あら~、やっぱり私の裸を見て緊張しちゃってるんじゃないの~、ヴァン~」


 「う……うるさいなっ!。いいからさっさと体を洗えよっ!」


 成長した新たなアイシアは性格だけでなくその風貌までこれまでの転生で見てきた僕の従者であるアイシアとまるで変わってしまっていた。


 まず髪の毛の色だがこれまでのアイシアはずっと水色、それに今回赤ん坊として一度死ぬまでの間も水色の産毛をしていたはずなのに新たなアイシアとして蘇ってからどういうわけか右側の髪の毛の方から赤色の物へと生え変わっていっている。


 今では右側4分の1程度までが赤髪せきはつへと変わり、そういうファッションとして髪を染めているように見えるが地毛としてそうなっているのだ。


 髪型についてはこれは本人の趣向なのだが割と短めの髪型が好みだったアイシアと違ってこのアイシアは腰の辺りまで伸びた長髪をしていた。


 そして他にも身体的な特徴で今僕が最も気になっていることがあるのだが……。


 「う……うわぁっ!。い……いきなりくっついてくるなよっ!」


 「へへへっ!。折角だから洗いっこしよっ!、ヴァンっ!」


 洗いっこといってアイシアは自身の体の前面を僕の背中へと密着させてくる。


 その時に僕の背中に伝わってくる2つの《《ふにゅっ》》とした感触。


 それは正しく女性が男性と違う点として持つ最も代表的な身体的な特徴の1つである2つの胸の膨らみ。


 つまりはおっぱいの感触だ。


 僕が従者のアイシアでなくなってしまったとはいえ双子の兄妹であるにも関わらずこのアイシアの裸体を直視できずにいる程にまで膨らんだおっぱいはどう考えてもまだ7歳の子供の肉体の成長度のものとは思えないのだが……。


 「(それは私が【成長速度・上昇】、それに【豊胸】の転生スキルのレベルをありったけのソウル・ポイントを注いで取得しているからよ、ヴァン)」


 「(……っ!)」


 「(ふふっ、今どうしてまだ7歳の私の胸がこんなに大きく成長しているか考えてたんでしょ。そんなのあなたの表情を見れば丸分かりよ)」


 新たのアイシアの肉体の成長度について気にしている間に起きた胸の大きさなどとは比べ物にならない程の衝撃の出来事。


 なんと新たなアイシアがそんな僕の疑問に魂の記憶が無ければ知る由が無いはずの転生スキルの言葉を口にして答えてきた。


 しかも【転生マスター】専用のテレパシーを通じて……。


 つまりはこの新たなアイシアも僕達と同じ【転生マスター】だったということなのだが、風呂場で裸の状態で密着された状態で突然テレパシーで話し掛けられ僕はこれ以上ない程にまで動揺してしまっていた。


 一体このアイシアに対してどのような対応をすればいいんだ……。

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