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第47話 ヴェントの力

 「な……何だ……。この子供(ガキ)は……」


 「ヴェ……ヴェントっ!」


 「遅れてごめん……母さん。今こいつ等を片付けるからちょっとだけ待ってて」


 突如として2階の窓から宙を浮いて姿を現したヴェントの姿にこの場にいる皆が驚き戸惑っている。


 僕達の兄さんであるRE5-87君をゆっくりと床へと寝かせて置くとヴェントはその敵意を僕達を襲撃してきた魔王軍へと向けた。


 「い……一体何がどうなってやがる……」


 「……おい」


 「あっ……何だ。俺に話し掛けてんのか、てめぇ」


 「今すぐ母さんの背中からお前の汚い足をどけろ。さもないと……」


 「へ……へへっ!。さもないと何だってんだっ!。大そうな登場の仕方をしようがどの道てめぇだって子供(ガキ)であることに変わりないじゃねぇか。子供(ガキ)が1人増えたところで俺達に適うわけ……」


 「………」


 「へっ……?」


 「死ね……」


 PINK-87さんの背中で踏んで押さえつけているオークのモンスター。


 その光景を見てヴェントはすぐさま止めるよう静かな言葉で相手を威圧する。


 けれどもそんなヴェントに物怖じしながらもオークのモンスターはプライドが邪魔してか子供相手に退くことができずにいた。


 威勢の良い言葉を放って物怖じしていることを誤魔化そうとするオークのモンスターだったが、その直後ヴェントの向けた手から眩く……。


 まるで目の前に太陽が降りてきたのではないかと思えるような凄まじい熱を帯びた光が撃ち放たれ一瞬の内に消し炭にされてしまった。


 僕達の赤ちゃん部屋にそんなオークのモンスターの断末魔とその光景を見た仲間達の悲痛な叫び声が響き渡る。


 「ぐ……ぐわぁぁぁーーーっ!」


 「オ……オーグラァァーーっ!」


 「大丈夫、母さん」


 「え……ええ……。ありがとう……ヴェント。でも……」


 「………」


 オークのモンスターを文字通りこの世から消滅させた後ヴェントは地面に倒れるPINK-87さんの元へと駆け寄り優しく声を掛ける。


 しかしそんなヴェントに感謝の意を述べながらもPINK-87さんの表情は依然として暗いままだった。


 悲しみに暮れるPINK-87さんの見つめる先にヴェントも視線を向けるとそこには……。


 「まさかあの血だまりの跡は……」


 PINK-87さんと共にヴェントが視線を向ける先には先程牛のモンスターの棍棒により無残な姿となって潰されてしまったアイシアの亡骸があった。


 既にアイシアが手に掛けられていたことを知りヴェントは更に怒りを込み上げた様子で襲撃者のモンスター達へと凄みのある視線を向ける。


 その威圧感は家族であるはずの僕達の身まで竦ませてしまう程だった。


 「……逃げるぞ」


 「えっ……。こ……こんな子供(ガキ)共相手に何言ってんだよっ!、ウィザークっ!。オーグラの奴がやられちまったのはきっとまぐれに決まってるっ!。それにこんなところで仕事を放って逃げ帰っちまったら報酬もパァになっちまうじゃねぇかっ!」


 「報酬よりも命の方が大事だっ!。モタモタしてると俺達までオーグラと同じ目に遭っちまうぞっ!」


 「わ……分かったよ……」


 他のモンスター達が子供であるヴェント相手にムキになってしまう中僕達と同じ【転生マスター】であるBS1-52君だけは違っていた。


 冷静に【神の子】の転生スキルを取得しているヴェントの力を見誤っていたと判断できたBS1-52君は強い口調で仲間達に撤退を促す。


 BS1-52君の凄みのある言葉に気圧けおされたおかげで仲間達も冷静な判断を取り戻すことができたのか皆で一斉に部屋を飛び出して行く。


 だけどまさか【神の子】の転生スキルを取得しているとはいえまだ3歳にしかなっていたいヴェントがこれ程の力を秘めていようとは僕達も驚きだ。


 やはり隠しスキルのページの転生スキルだけあってそのステータスの上昇補正は凄まじいものを秘めている。


 同じ隠しスキルのページの転生スキルであっても僕達の【転生マスター】にはステータスへの上昇補正の効果は全くないというのに……。


 魂と記憶と思考を有することのできる【転生マスター】も十分チート級の性能を秘めているとはいえ実際に転生先の世界でその力を活かすのは中々難しい。


 やはり僕も隠しスキルのページの中から【勇者】や【魔王】のように単純に高いステータスを得られる転生スキルを選ぶべきだったか。


 そう思わせる程にヴェントの見せた力は凄まじかった。


 「(まさか【神の子】の転生スキルがこれ程の力を秘めていようとはな……。まだ子供の内なら俺達でも楽に始末できるだろうと高を括って依頼を受けたのは失敗だった。お前達が俺に話し掛けて来たのもこいつが援軍に来るまでの時間を稼ぐ為だったってことか)」


 「(い……いや……。確かに教団の皆が救援に来てくれるのは期待していたけどまさかヴェントがこんな凄い力を持っているなんて僕達も思いもよらなかったんだけど……。ヴェントは僕達の家族ではあるけどPINK-87さん達と違ってソウルメイトってわけじゃないし……)」


 「(こいつはお前等のソウルメイトじゃなかったのか……。まぁ、とにかくこの場はとっとと退かせて貰うぜ。さっきのちょっとした借りを返せというわけじゃないができればこいつをこの場に引き止めて貰えると助かるんだがな。お前の従者の赤ん坊を見殺しにしておいてこんなこと頼むのも厚かましいか)」


 「(わ……分かった。アイシアを殺された恨みを忘れたわけじゃないけどBS1-52君もできる限り僕達の要求に応えようとしてくれたわけだしやってみるよ)」


 「逃がすと思っているのか……」


 「おぎゃあっ!、おぎゃあっ!」


 「……っ!。ヴァン……」


 僕達の家を急いで駆け出て行きながらBS1-52君は僕達に【転生マスター】のテレパシーで通信を送ってくる。


 そんなBS1-52君の願いを聞いて僕は必死に泣き叫んでBS1-52君達を追おうとするヴェントを引き止めた。


 BS1-52君達を倒すよりも今は傷付いたPINK-87さん達の手当てを優先して欲しいという思いもあったし……。


 「お~よしよし。怖かっただろ、ヴァン。けど兄ちゃんが来たからにはもう安心しろ。今お前や母さん達の手当てをしてやるからな」


 泣き叫ぶ僕のことを優しく抱き抱えながらヴェントはPINK-87さん達の元へと寄り添い、これも【神の子】の転生スキルから授かった力なのか不思議な魔法で皆の負った傷を見る見る癒していく。


 けれどヴェントの力で体力を回復しつつもPINK-87さん達は依然として悲しみに暮れていた。


 その理由は勿論いくら自分達が助かったところで大事な家族を1人無くしてしまった事実に変わりはなかったからだ。


 ヴェントに感謝しつつもPINK-87さん達は複雑な心境の中から抜け出せずにいた。


 「助けてくれてありがとう……ヴェント。だけど……」


 「言いたいことは分かってるよ……母さん。けど安心して。アイシア……。それにあいつ等の手に掛かった村の人達も皆僕が救ってみせるから」


 「えっ……。だけど……。だけどもうアイシアはあいつ等に殺されてしまったのよっ!。それもあの子を絶対に守ってあげなければならないはずの母親である私の目の前でっ!。それを一体どう救ってみせるって言うのっ!。まさか亡くなってしまったアイシアを生き返らせるなんて言うつもりっ!」


 「その通りだよ、母さん。アイシアも犠牲になってしまった村の人達も皆僕が生き返らせてみせる」


 「えっ……」


 「とにかく今はアイシアの体だけでも元の状態にもどしておかないと……」


 「……っ!」


 血だまりの中無残な姿の肉塊となったアイシアの元へと歩み寄り手を翳すとヴェントはまた不思議な光の魔法を放ったと思うと完全に叩き潰された状態のアイシアの体が元の綺麗な赤ん坊の形へと舞い戻った。


 けれどもあくまで形が元に戻っただけで生き返ったわけじゃない。


 その証拠に僕の隣には皆には見えていないけど守護霊として復活を果たしたアイシアの霊体がまだ存在していた。


 もし本当に生き返ったとするならばこのアイシアの霊体も消えて肉体へと意識が返っているはずだ。


 「こ……これは……。まさか本当にアイシアを生き返らせてくれたのっ!、ヴェントっ!」


 「いや……。今はまだアイシアの肉体だけをちゃんとした状態に戻しただけ。心臓も動いてるけど完全に生き返らせるのはアイシアの魂をまたこの肉体へと呼び戻さなければならないんだ」


 「そ……そうなの……。でもそれで本当にアイシアは生き返るのよねっ!」


 「うん。だからもうそんなに悲しまないないで、母さん。父さんにヴィンス兄さんも。ほら、ヴァンだってちゃんとアイシアが生き返ることが分かってるから全然悲しそうな顔してないじゃないか」


 「ヴァンはまだ赤ん坊だからよ。けど本当にあなたがいてくれて良かったわ、ヴェント。神の子(・・・)だなんてそんな大そうなものを背負わずに生まれて来て欲しかったって母さん本当は内心ではそう思ってたんだけど今はあなたのことを心の底から誇りに思う。あなたは本当に神様が地上の私達を救う為に遣わせて下さったのね」


 間近でヴェントの力を目の当たりにしたPINK-87さん達はヴェントのアイシアは生き返るという言葉が本当だと確信した様子で心の底から喜びで体を震わせている。


 本当にアイシアが生き返ってくれるなら僕達としてもそれは本当に嬉しいことだ。


 けれどPINK-87さん達と違って今も霊体となったアイシアが隣にいる僕達にとってそれ以上にヴェントの持つ力のことの方が気になって仕方なかった。


 魔王軍を名乗るあいつ等を軽く一蹴してしまう程の実力を秘めている上に亡くなってしまった人間を蘇らせるなんていくら【神の子】の転生スキルを取得しているからといって可能となるものなのだろうか。


 確かに死者の生還というのは如何にも神の子(・・・)が引き起こす奇跡のようなものだけれど……。


 「(ヴェ……ヴェントはアイシアを生き返らせるって言ってるけど本当にそんなことできるのかな?)」


 「(うーん……。いくら【神の子】の転生スキルを取得していても簡単にできることじゃないと思うけどなの……。ヴェントの所属する『味噌焼きおにぎり』のメンバーはSALE-99やブランカ達も含めて相当熟練した魂達みたいだしそのような力を習得していても不思議じゃないと思うなの)」


 「(思うなの)」


 「(そっか……。アイシアが生き返ってくれるのは僕達としても当然喜ばしいことだけどヴェント達『味噌焼きおにぎり』の力によるものとなるとやっぱりちょっと複雑な気持ちになっちゃうよね)」


 「(はい……。私としてはこの状態のままの方がマスターをお守りするのに役立てると思うので特別蘇りたいとは思っていないのですけど……)」


 アイシアが生き返ると聞きつつもヴェントの正体を知る僕達としては素直に喜ぶことができずにいた。


 一方ヴェントやPINK-87さん達家族が喜びに身を寄せ合う中に混ざりながら僕達が色々と考察している頃この場を逃げ出したBS1-52君達はというと……。


 

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