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第46話 悲劇

 「がはははははっ!。マジでスーパーサ〇ヤ人にでもなるつもりなのかよ」


 「あっ?。なんだ……スーパーサ〇ヤ人って……」

 

 「い……いや……。別に何でもないから気にしないでくれ……」


 突如僕達の家を襲撃して来た魔王軍を名乗る魔族のモンスター達。


 僕達を追い詰めるその内の1人である鳥人の姿をモンスターは赤ん坊ながらもPINK-87さん達を助ける為必死に魔法を発動させようと気を高める僕の姿を見て確かにスーパーサ〇ヤ人という言葉を口にした。


 スーパーサ〇ヤ人というのは『地球』の世界のド〇ゴンボールという漫画に登場する主人公達が特別なパワーアップをする為の変身を遂げた姿のことだ。


 染めてもいないのに金髪へと変わった髪の毛がワックスをかけているわけでもないのに豪快に逆立った姿へと変わり、変身前の何十倍もの強さへとパワーアップを遂げる。


 その変身を遂げる前の仕草として全身に力を込めるポーズをして大地をも揺さぶるような気迫の込もった叫び声を上げるんだけど……。


 言われてもいれば必死に魔法を発動させようとしている今の僕達の姿もそんな風に見えたのかもしれない。


 だけど重要なのは今の僕達の姿がスーパーサ〇ヤ人に変身する前の仕草に似ているかどうかじゃなくてその鳥人の姿をしたモンスターの口からその言葉が出てきたということだ。


 『地球』の世界にしか存在しないはずの漫画に出てくる言葉を知っているということはこの鳥人のモンスターも恐らく僕達と同じ【転生マスター】に違いない。


 僕達を殺そうとしている相手だけどももし本当に【転生マスター】だとすれば赤ん坊の僕達でもテレパシーを通じてコンタクトを取ることができるはずだ。


 こちらも【転生マスター】であることを明かすことになるけどこの場を見逃して貰えるよう交渉できるかもしれない。


 それに何となくだけどこんなところで思わず『地球』の世界の漫画を口にしてしまうなんてちょっと抜けてるというか何と言うか……。


 とにかくSALE-99やブランカ達に比べるとそこまで悪い魂ではない気がする。

 

 今にも僕達を殺そうとしている相手にこんなことを言うのは変だけど僕も『地球』の世界の漫画は大好きだから親近感が湧いてしまったのかもしれない。


 「(こ……この世界でスーパーサ〇ヤ人のことを知ってるってことは【転生マスター】に違いないっ!。こうなったら思い切ってあの鳥の姿をしたモンスターにテレパシーで話し掛けて命乞いしてみるべきか……。でも応答して貰えるかどうかも分からないし……。それにこっちも【転生マスター】だとバレてしまうことになるけどどうすべきだと思う……?)」


 「(どうすべきも何もこの状況で助かりたいと思えばそうするしかないなのっ!。直感でしかないけどSALE-99やブランカ達に比べると危険度のない魂な気もするし手遅れになる前に話し掛けるなのっ!)」


 「(話し掛けるなのっ!)」


 「(わ……分かったっ!。それじゃあ……)」


 どうやらベル達も僕と同じくこの【転生マスター】かもしれない鳥のモンスターに転生している魂はSALE-99達に比べてまだ信用できるだろうとの判断らしい。


 ベル達の同意を得た僕はすぐさま命を助けて貰う為に鳥のモンスターへと【転生マスター】の意識を通してテレパシーを送る。


 もし本当に【転生マスター】ならどうか僕のテレパシーに応答して貰いたいけどは果たして……。


 「(も……もしもしっ!。そこの鳥のモンスターさん。僕の声が聞こえてますか?)」


 「(あっ?)」


 「(よ……良かったっ!。僕のテレパシーの通信が通じたってことはやっぱり君も【転生マスター】だったんだねっ!)」


 「(今俺に話し掛けてきてるのは……まさか目の前にいるこの赤ん坊の1人なのかっ!)」


 「(う……うんっ!。実はそうなんだ。僕は男の子の方の赤ん坊に転生している魂で名前はLA7-93。女の子の赤ん坊も同じ【転生マスター】で僕の魂の従者でアイシアって言うんだ)」


 「(アイシアです。どうぞよろしくお願い致します)」


 「(まさかお前等も【転生マスター】だったとはな。さっきの俺がスーパーサ〇ヤ人って口にしたのを聞いてこっちも【転生マスター】だって気付いたのか)」


 「(その通りだよ。それで君に折り入ってお願いがあるんだけど……。同じ【転生マスター】のよしみでどうにかこの場を見逃して貰えるよう仲間達を説得して貰えないだろうか?)」


 「(あー……悪いがそれはできねぇ相談だな。生まれたばかりの赤ん坊でまだ死にたくないってお前等の気持ちは分かるが)」


 「(む……無理なお願いをしてるってことぐらい僕達も重々承知しているよ。でもせめて説得を試みるぐらいはして貰えないかな……)」


 「(こっちも生活の為の大事な稼ぎを得る為に仕事でここまでやって来てんだ。それに粗暴に見えるだろうがこんな奴等でも俺の大事なソウルメイトだ。裏切るような真似はできねぇよ)」


 「(で……でもソウルメイトなら尚更こんな悪事を働くのを放っておくことなんてできないんじゃないの……。赤ん坊を殺したりなんかしたら閻魔大王に地獄行きにさせられるかもしれないよ)」


 「(あのなぁ……。俺達の姿をよ~く見てみろ。自分達と同じモンスター種族ってんならともかく天敵である人間の赤子を殺したところで地獄行きになったりするかよ。人間からしたら残虐に見えるかもしれないがこいつ等だって家に帰ったら子供思いの気の良い親父なんだぜ。まぁ、親の前で赤ん坊を殺すってのはちょっと悪趣味な気がするけどそれでも相手が人間である以上地獄行きになったりなんかしねぇよ。それよりここで敵である人間を庇うような真似をして大事なソウルメイト達と仲間割れになったりする方がよっぽど閻魔大王にどやされちまうぜ。てめぇ等も【転生マスター】ならそれくらい理解できるだろ)」


 「(そ……そうだね……。確かに自分達が助かりたいが為に自分勝手なお願いをしてるのは僕達の方だし無理強いはできないよ)」


 「(で……ですがマスターっ!。それでは我々の命はここで……)」


 アイシアの言う通りこのままでは今回の僕達の人生は生まれて僅か2か月という短さで終了だ。


 けれど【転生マスター】同士であるが故に相手の事情もよく理解できてしまう僕にはこれ以上鳥のモンスターに転生している魂に無理強いはできなかった。


 こうなったら悔しいけど【転生マスター】として潔く死を受け入れるしかない。


 行為自体が残虐であることに変わりないけど不思議とこの鳥のモンスター達に対してはSALE-99やブランカ達に対してのような嫌悪感は感じなかった。


 「おいっ!、ウィザークっ!。さっきから何黙ったままボーっとしてんだ。折角人間の子供ガキを始末するところなんだからお前もしっかり見物しよけよ」


 「あ……ああっ!、悪い……。ちょっと色々と考え事しててよ」


 「何だぁ?。こんな時に今日の晩飯何にするかでも考えてたのかよ。……たくっ、本当に暢気のんきな野郎だな、お前は」


 「悪い悪い。それじゃあとっととショータイムを始めちまってくれよ。俺も子供ガキ共がお前の棍棒にグシャっと潰されて血飛沫を上げるところをしっかり見てるからよ」


 「へへっ、任せとけって。けど男と女、どっちの子供ガキから始末してやろうかな?」


 「(っというわけだ。折角名前まで明かして話し掛けてきてくれたってのに悪いな、お前等。一応最後に俺の方も名乗っといてやるよ。俺はBS1-52ってんだ。今回は敵同士に転生する羽目になっちまったがもし良かったら今度は俺達ともソウルメイトを組んで転生しようぜ)」


 「(うん……けど僕達の方も最後にもう1つだけお願いが……。君の仲間達と同じようにこの場にいる家族達皆も僕達のソウルメイトなんだ。だから必要以上に皆を苦しめるような真似はしないで欲しい)」


 「(心配しなくても俺達の中に獲物を弄って楽しむような鬼畜はいねぇよ。一応神の子(・・・)るだけでなくこの村の奴等も皆殺しにしろとの指示が出てるから見逃すことはできねぇがな)」


 「(なら私からも1つだけお願いがっ!。殺すならマスターではなく私からにして下さいっ!。どの道両方とも命を落とすことになろうと守るべきマスターを先に死なせるなど魂の従者として面目が立ちませんっ!)」

 

 「(何を言ってるんだ……アイシア。そんなのマスターである僕の方こそ従者のアイシアを先に死なせるわけには……)」


 「(………)」


 「(……っ!)」


 意味深な表情で送られるアイシアからの視線。


 その視線を受けて僕はアイシアの真意に気が付いた。


 勿論マスターである僕を少しでも長く生き永らえさせたいという思いもあっただろう。

 

 だけどアイシアが自身の死を先に望んだのは自分が先に死ぬことでまだこの状況に抗える術を持っていたから……。


 僕やPINK-87さん達を守る為最後まで希望を捨てないという覚悟の表れだったんだ。


 そんなアイシアの覚悟を受け取って僕もこれ以上口を挟むのを止めた。


 「(そういうことなら殺すのはそっちからにしてやるよ。こいつ等も別に順番なんて気にしないだろうしな)」


 「(ありがとうございます)」


 「なぁ、どうせなら女の子供(ガキ)方から始末してやろうぜ。男の子供(ガキ)方に女を守れなかったっていう屈辱を味わわせてから殺してやるんだ」


 「はぁ……。まだ赤ん坊のこいつ等にそんな屈辱が感じられるとは思えねぇけどまぁ折角のリクエストだしそうしてやるか」


 「(だけど僕達だって死ぬ最後の瞬間まで足掻かせて貰うよ、アイシアっ!)」


 「(はいっ!」


 「おぎゃあぁぁぁぁぁっ!」


 「おぎゃあぁぁぁぁぁっ!」


 「(ふっ……またスーパーサ〇ヤ人の真似事かよ。こんな状況でも最後まで諦めねぇてめぇ等のその精神力を同じ【転生マスター】として敬服させて貰うぜ)」


 「さ~て。それじゃあ女の子供(ガキ)方から思いくっそ潰してやるからよ~く見てろよ~、お前等~」


 「ああ。ちゃんと見ててやるからさっさとやっちまえって」


 「おらぁぁぁーーーっ!」


 「止めてぇぇぇーーーっ!」


 グシャ!


 PINK-87さんの悲痛な叫びが無残に鳴り響く中。


 そんな叫びとはまるで対照的な無機質な音を立ててアイシアはあっさりと牛のモンスターの棍棒によって叩き潰されてしまった。


 先程まで可愛らしく泣いていた自身の赤ん坊が血だまりの中只の肉塊にくかいになってしまった光景を見てPINK-87さんは酷い絶望に打ちひしがれている。


 けれどアイシアの作戦を知っていた僕はそんな光景を見ても悲しみに暮れることはない。


 できればアイシアと共に少しでもこいつ等に抵抗することを考えていた僕は未だにどうにか魔法を発動すべく体の奥から自身に眠る魔力を必死に呼び起こそうとしていた。

 

 「おぎゃあぁぁぁぁぁっ!」


 「けっ……。横で姉妹きょうだいが殺されたってのにこっちの子供(ガキ)はまだ息巻いてやがるぜ。赤ん坊の分際で俺達のことを全く怖がってないみたいで何だか腹が立ってきたな。鬱陶しいからこいつもとっとと潰しちまうぜ」


 「ああ。とっととやっちまえ」


 「止めて……。お願い……。どうかその子だけでも助けてあげて……」


 「うっせなぁ……。子供(ガキ)は全員始末しろって命令を受けてるって散々説明してやっただろうが。いいから黙っててめぇの子供(ガキ)が叩き潰される様をもう一回見とけよ。……おらぁぁぁーーーっ!」


 「いやぁぁぁーーーっ!。ヴァンーーッ!」


 アイシアをった後続けて牛のモンスターは僕も叩き潰してしまおうと棍棒を振り下ろして来た。


 もうズタボロになるまで喉を枯らしたPINK-87さんのガラガラの叫び声が再び部屋中に響き渡る。


 しかしその叫び声の最中。


 次にPINK-87さんの目の前で起きた光景は先程とは少し違っていた。


 その光景を見てPINK-87さんは困惑しながらも安堵した表情を浮かべている。

 

 ……そう。


 本来ならアイシアと同じように棍棒に叩き潰されてしまっているはずの僕がまだ生きていたからだ。


 「えっ……」

 

 「う……うおぉぉぉーーーっ!。一体こりゃどうなってやがんだっ!」


 僕へと棍棒を振り下ろそうして来た牛のモンスターが自分の身に起きたことに驚き戸惑っている。


 僕へと勢いよく振り下ろしたはずの棍棒が自分の意志に関係なく途中で止まってしまったと思った直後、止めた棍棒の辺りから凄まじい冷気が発生し腕から全身に掛けて表面が氷に覆われていく程に氷漬けにされて身動きが取れなくなってしまっていたんだ。


 牛のモンスターを含めこの場にいる誰もがまるで予期せぬ現象に困惑してしまっている。


 目の前で氷の盾を張り、半透明で青白く先程亡くなったばかりの赤ん坊の姿で相手の棍棒を受け止めるアイシアの存在を目視できている僕を除いて。


 「ま……まさかこの子供(ガキ)が本当に魔法を発動させやがってのかっ!」


 「(………)」


 牛のモンスター達は僕が魔法を発動させたものと思っているようだけど違う。


 この氷の魔法を発動させたのは決して僕ではなく、霊体の姿で僕を守るように相手の目の前に立ちはだかっているアイシア。


 【守護霊】の転生スキルにより霊体化して復活し、更に僕を守りたいという強い思いに呼応した【護衛】の転生スキルによる効果で超絶なパワーアップを果たしたアイシアが僕を守る為に死して尚あいつ等に立ち向かってくれているんだ。


 どうやら僕以外には霊体化したアイシアの姿を視認することはできないようだけれども。


 アイシアが僕より自身の死を先に望んだのは初めからこのつもりだった為。


 【守護霊】と【護衛】の転生スキルの効果が合わされば例え赤ん坊ままで死を迎えた状態であっても奴等に対抗する力を得られると考えたのだろう。


 「(ふぅ……。どうやら上手く守護霊となることができたようですね)」


 「(やったっ!。流石アイシアっ!。守護霊になったからとはいえ赤ん坊の状態で魔法を発動させるなんて凄いよっ!)」


 「(凄いなのっ!、アイシアっ!)」


 「(なのっ!)」


 【守護霊】の転生スキルで霊体として復活できるのは各世界に与えられている回数の転生の中で1回だけ。


 この『ソード&マジック』の世界で謂うと6回ある転生の内守護霊として復活できるのは今回のみということだ。


 まだ僕達には最後の6回目の転生が残されているが仮にその転生でアイシアが死を迎えてしまってももう守護霊として復活することはできない。


 【守護霊】の転生スキルの発動するタイミングは不確定となっているようだが、転生スキルの取得者のその転生においての人生や亡くなった時の感情等によって左右されるらしい。


 今回アイシアが守護霊として復活できたともこの状況から僕だけでも守り抜きたいという強い思いがあったからだろう。


 「(まさかてめぇが本当に魔法を……いや。僅かだかてめぇの前に何らかの気配を感じる。どうやら先に殺したてめぇの従者の方の子供(ガキ)は【守護霊】のような死後霊体化して復活することのできる転生スキルを取得していたみたいだな)」


 「(………)」


 どうやら同じ【転生マスター】であるBS1-52君には姿が見えずともアイシアが守護霊として復活した可能性に気が付いたようだ。


 それで正解だとわざわざ教える必要もない為僕はBS1-52君の問い掛けに無言で返した。


 「く……くそっ!。赤ん坊の分際で魔法が使えるなんてやっぱりこいつが神の子(・・・)かっ!」


 「こうなったら子供ガキだからって余裕ぶっこいてる場合じゃねぇっ!。全員で一斉に掛かって始末するぞっ!」


 「お……おうっ!」


 「(くっ……)」


 姿を目視できないアイシアからの魔法を受けて動揺する相手達だったがBS1-52君の一言ですぐさま冷静さを取り戻す。


 もう赤ん坊の僕が相手だからといって手を抜くつもりは一切ないようだ。


 流石僕達と同じ【転生マスター】だけあって不測の事態への対応も早い。


 これだけの人数で一斉に掛かられたら守護霊となったアイシアでも流石に守り切れないだろう。


 希望が見えたのも束の間もう万事休すか……。


 「おらぁぁぁーーーっ!」


 「止めろ……」


 「……っ!。な……何だぁっ!、この光はぁっ!」


 「(……っ!)」


 一斉に掛かって来るBS1-52君達を前に流石にもうここまでかと僕自身も観念したその時、突然物静かな声でありながらもとても重みのある言葉が聞こえてきたと思うも後ろの窓から眩いまでの光が差し込んできた。


 日の光の明るさとは比較にならない……。


 まるで天上の世界から差し込んできたと思えるような神秘的な光が僕達の赤ちゃん部屋を包み込んだ。


 そしてその光の中から窓を割って姿を現したのは……。


 「………」


 「(ヴェ……ヴェントだっ!)」


 「な……何なんだ……。この子供ガキは……」


 割れた2階の窓からまるで天使のように宙を浮いて僕達の部屋へと入って来たヴェント。


 その手にはまるで不思議な力で手から浮いて持ち上げられているように意識を失ったRE5-87君が抱き抱えられていた。


 ヴェントから僕達家族が傷付けられたことへの凄まじい怒りを感じる。


 これは僕達を助ける為にこの場に駆け付けてくれたと思っていいのだろうか。

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