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第37話 暗雲

 「おぎゃあっ!」


 「おぎゃあっ!」


 雨は降らず共空一面が不吉な雰囲気の漂うどす黒い雲に覆われている中、周りを山に囲まれた草原地帯にひっそりと佇む小さな村の産院で2人の赤ちゃん、男の子の女の子の双子が産声を上げた。


 2人共母親であるピンク髪の女性に抱き抱えられ左右の乳房からそれぞれ母乳を貰っていく。


 「お~よちよち。二人共元気の良い赤ちゃんでちゅね~」


 「(やっぱりPINK-87さんの母乳は最高だね、アイシア。母乳をイチゴ味にして貰うなんて最初は恥ずかしいと思ってたけどやっぱり普通の母乳より断然美味しいよ)」


 「(はい。私のみぞれ味もあっさりとした甘さでとても飲みやすいです)」


 今生まれた双子の男の子と女の子の赤ん坊こそが今回『ソード&マジック』の世界で5回目の転生を迎えた僕とアイシア。


 先日の『地球』への転生で僕だけの固有オリジナル転生スキル。


 『抽出エキストラクト』と『注入インジェクト』の効果を兼ね揃えた……。


 名付けて『注射器魔法シリンジ』の能力を思い付いた僕はアイシアやPINK-87さん、それにベル達他のソウルメイト達の力も借りて日夜『ソード&マジック』の世界への転生を繰り返しその完成に勤しんでいた。


 「(あっ……今回もベル達はちゃんと僕の体の細胞に転生できてる?)」


 「(できてるなの~。LA7-93を通してPINK-87の栄養たっぷりの母乳が僕達にも染み渡ってくるからもっと頑張って飲むなの~)」


 「(飲むなの~)」


 「(いや……。いくらPINK-87の母乳が美味しいからって赤ん坊の体の許容量なんてたかが知れてるしそんなには……。ねぇ、アイシアもそんなには飲めないよね?)」


 「(………)」


 「(アイシア?)」


 「(あの……マスター。それよりも少しこちらにいる方々にご注目になって下さい)」


 「(こちらにいる方々……)」


 アイシアに促されて横目でベットの隣を見るとPINK-87さんから美味しそうに母乳を貰う僕達のことを微笑ましく見守っている人物達がいた。


 1人は眼鏡を掛けた温厚で優しそうな大人の男性。


 恐らく今回もPINK-87さんの旦那さん、そして僕達の父親として転生したMN8-26さんだ。


 PINK-87さんの肩を優しく摩りながら僕達にも満面の笑みで微笑みかけてくれている。


 僕達の誕生をPINK-87さんと共に心の底から喜んでくれているみたいだ。


 2人目はもう5、6歳くらいにはなっているだろうと思える目付きのしっかりした黒髪の子供。


 この子も多分今回も僕達の兄さんとして転生したRE5-87君だ。


 自身の弟として生まれた赤ん坊の僕達に興味津々でちょっと遠慮がちに僕の手を優しく掴んでくる。


 「きゃふっ♪」


 そんなRE5-87君に少しでも反応してあげようと僕はPINK-87さんの乳房に顔を埋めたまた声を上げて握られた手を振るってあげた。


 すると“お~”っといった感じでRE5-87君の顔に歓喜の表情が浮かび上がる。

 

 今回は僕達より大分年上みたいだけどまた仲良く兄弟姉妹としてやっていってくれるかな。


 【転生マスター】である僕とアイシア、そしてベル達には自分達のソウルメイトとして転生した魂達の転生先を確認できる能力が備わっている。


 僕の隣で共に母乳を貰っているアイシアの頭上には青白い文字でアイシアという表示が、同じく母親であるPINK-87さん、父親であるMN8-26さん、兄であるRE5-87君にも同じようにそれぞれの魂の名の表示が浮かんでいた。


 僕自身ではまだ首が上手く曲がらず確認できていないのだが、僕の体の中を透き抜けるような形で細胞に転生したベル達の名も小さく表示されているのがアイシアから確認できたようだ。


 しかしながら僕達の誕生を祝う家族達の中に1人だけ何処にもそのような表示がされていない人物がいた。


 「………」


 窓から差し込む日差しのように明るい色の金髪をした恐らく3,4歳ぐらいと思われる男の子。


 既に僕達と共にソウルメイトとして転生した魂達の全員が確認できているのでそれ以上名前の表示されている人物がいないのは当然のことなのだが、この場にいることや周りのPINK-87さん達の対応から察するにこの子も多分僕達の家族であり、僕達より先に生まれた恐らくRE5-87君と同じく僕達の兄弟だ。


 見た目の年齢からして僕達の兄さんでありRE5-87君の弟となる子のようだがこれまでPINK-87さん達と転生して他の魂が家族の一員として生まれることは一度もなかった。


 別にあり得ないことではなく、普通に転生をしている魂、PINK-87さんやRE5-87君達にとっては何の違和感も感じるわけもないことなのだが、【転生マスター】としての力を有するが故に僕達はこれまでとは少し違うパターンの転生に少しの疑問を感じてしまう。


 本来ならこれから共に暮らしていく家族として快く受け入れてあげないといけないんだろうけどもしかしたら僕達に不利益を齎す魂が転生しているかもしれない。


 そんな【転生マスター】が故に向けてしまう家族への疑問の念に後ろめたい気持ちも同時に僕は感じてしまっていた。


 「(こ……この子もやっぱり僕達の兄弟なのかな……。けど僕達とRE5-87君以外に兄弟がいるなんてPINK-87さん達とソウルメイトを組んで以来初めての経験だよ)」


 「(はい。一体どのような魂が転生しているのでしょうか……)」


 「(うん……。ソウルメイトじゃないからって家族に対してこんな風に思うのは良くないかもしれないけどやっぱりちょっと不安に感じちゃうよ)」


 「(まぁ、普通に家族として接して大丈夫だと思うけど万が一【異端者】系統の転生スキルを持ってる奴だったりしたら僕達の家族が大変なことになっちゃうし気を付けるに越したことはないなの。そういった異変に対し手遅れになる前に対処できるのが【転生マスター】のメリットであるしなの)」


 「(メリットであるしなの)」


 転生先の世界で出会う魂達の99%以上は僕達のソウルメイトではないわけだし一々気にする方が間違っているのかもしれないが相手が家族の一員となると少し話が変わってくる。


 ベル達の言う通り多少は気を付けるに越したことはないだろうけど僕としてはできればそんな邪念は取っ払って家族として普通に仲良く接したい。


 僕達が不審がってるのを察してか同じ兄さんなのにRE5-87君と違ってその子はずっとぎこちない表情で黙って僕達が母乳を貰う様子を見ているだけだし……。


 「ほら。あなたも遠慮しないでヴァンとアイシアに触ってあげなさい、ヴェント」


 「でも……」


 「そんなに怖がらなくて良いって。俺と手を繋いでるヴァンも嬉しそうにしてるだろう。お前はアイシアの手を握ってやれ」


 「うん……」


 ヴァン。


 どうやらそれが今回生まれた僕の名前らしい。


 アイシアの名前は【魂の名前】の転生スキルの効果があるから勿論今回もアイシア。


 そして僕達家族の中で唯一ソウルメイトでないあの子はヴェントと謂うようだ。


 ヴェントは彼にとっても兄さんであるRE5-87君に促されてアイシアの方の手を恐る恐る握っていくのだけれど……。


 「………」

 

 「(もうぉ~っ!。そんな風にムスッとしてたら駄目じゃないかっ!、アイシアっ!。確かにソウルメイトではないかもしれないけどまだヴェントに転生しているのが悪い魂だって決まったわけじゃないんだし仲良くしてあげてよっ!。ほらっ!、ちゃんと僕みたいに笑ってヴェントの握った手を振ってあげてっ!)」


 「(分かりました……)」


 「きゃふっ……♪」


 「笑った……」


 「ほ~ら。アイシアもお前に手を握って貰って喜んでるだろ~。お前もこれから俺と同じように2人の兄さんになるんだからちゃんと守ってやらないと駄目だぞ~」


 「うん……」


 アイシアに反応して貰えてヴェントも安心し喜んだ表情を浮かべている。


 この感じだと特に問題ある魂が転生しているわけじゃなさそうだ。


 ヴェントに対する疑問も和らぎ、その後僕達は1週間程していよいよこの時代の我が家へと連れ帰って貰える日がやってくる。


 今回PINK-87さん達は僕達にどんな家を用意してくれたのだろうか。


 転生する度毎度のことではあるのだけれど胸をワクワクさせながら僕とアイシアはそれぞれPINK-87さんとMN8-26さんに抱き抱えられ初めてとなる我が家へと向かって行く。

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