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第33話 バージニアを手伝う

 「これは……もしかして『煙草魔法シガレット』の魔法に使用する煙草を作ってるんですか?」


 「ちっ……たくっ!。しつけぇな、お前はよっ!。無視されてるのは分かってる癖に不躾に話し掛けやがってっ!。全くドンの奴にそっくりだなっ!」


 「一応兄弟ですから。それでこれはバージニアさんのあの『煙草魔法シガレット』の魔法の煙草を作ってるんですよね?」


 「ああっ!、そうだよっ!。分かったらとっととあっち行けっ!」


 しつこく話し掛け続けてようやくバージニアさんに返事をして貰えた。


 ドン兄さんにそっくりだと言われたが【転生マスター】である僕が兄弟に生まれたからといって性格が似ることはないんだけどな。


 それとも元々僕とRE5-87君の魂が似た性質をしてるってことなのだろうか。


 「あんな高度な魔法に使用するアイテムなのに特別な設備もないこんな場所で製造することなんてできるんですか?」


 「これは仕事の途中で煙草が切れないようにする為の代用品だ。普段私が持ち歩いてる奴の半分以下の性能しかねぇよ。ここまで来るのに思った以上に煙草を消費しちまったからな。ここからは雑魚の相手はこの代用品でして本命の煙草をなるべく温存しておかねぇと……」


 「その本命の煙草もバージニアさんが製造したものなんですか?」


 「いや……本命の煙草は知り合いの錬金術師に頼んで特注で作って貰ってる。そいつならこのシケたキャンプ場でもそれなりの煙草を作れるだろうが、戦闘能力の全くない奴をこんなダンジョンの奥まで連れて来るわけにはいかねぇからな」


 「錬金術師っ!。それなら僕にバージニアさんの作業を手伝わせてよっ!。僕は錬金術師のジョブを取得して冒険者になったわけだし……ほらっ!」


 「ああん?」


 『煙草魔法シガレット』の魔法に使う正規品の煙草は錬金術師にその製造を依頼している。


 その言葉を聞き僕は錬金術師としてこのパーティに参加させて貰っている者としてバージニアさんに作業の手伝いをさせて貰えるよう申し出た。


 鞄から取り出した組み立て式の錬金装置をその場に設置、更に左手首に装着した装着式の錬金装置を前面に出してその意気込みを猛烈にアピールする。


 「この通り携帯用の錬金装置は一通り揃ってるし言って貰えばバージニアさんの煙草にもっと適した素材を用意できると思うよっ!」


 「思うよってお前……。いくら自分も錬金術師だからってそんなのすぐに言われて錬成できるものなのかよ」


 「う~ん……できれば詳細な錬成法まで説明して欲しいかも……」


 「そんなんで本当に大丈夫なのか……。けどなんでそこまでして私の作業を手伝おうとするんだ。もし私に無視されてることを気にしてるんだったら……」


 「ううん。確かにバージニアさんと打ち解けたいって気持ちもあるけどそれ以上にバージニアさんの『煙草魔法シガレット』の魔法に僕は興味があるんだ。作業を手伝わせて貰う傍ら『煙草魔法シガレット』の魔法について色々と教えてよ」


 「はぁ……分かったよ。さっきドンにそっくりだと言ったけど撤回だ。全くお前はドン以上に変わった奴だよ。手伝ってくれるなら取り敢えずそうだな……。肉体強化の霊薬ポーションがあるだろ。あれをどんな錬成法でも構わないから錠剤にして錬成してくれ。そしたら後はこっちでり潰して煙草の材料にするからよ」


 「分かった。それじゃあちょっと待ってて」


 バージニアさんの了解を得て僕は肉体強化の霊薬ポーションを錠剤の形になるように錬成していく。


 素材は近辺の森林から適当な物を見繕ってきただけなので品質としてはそこまで良い物を錬成できたとはいえない。


 だがバージニアさんはこれで大丈夫だと言って満足げな表情で受け取ってくれた。


 諦めずに話し掛け続けた甲斐があってもう大分打ち解けることができたみたいだ。


 「よし……取り敢えずはこんだけ補充しとけば大丈夫か。手伝ってくれてありがとうな。お前のおかげで私1人でやるより大分良い煙草を作ることができた」


 「お礼なんていいよ。僕達の方こそひよっ子の冒険者の癖にいきなりハーディンさん達のパーティに入れて貰ってバージニアさんにも大分ストレスを掛けてるみたいだから……」


 「私の方こそ意地の悪い態度を取って済まなかったな。別にお前達に文句があるわけじゃないんだがハーディンの奴が私等に何の相談もなく勝手に話を進めてきやがったから何だか腹が立っちまってよ。あいつに直接文句を言や良かったんだがつい立場の弱いお前達に当たっちまった」


 「はははっ。バージニアさんでもハーディンさんには強く物が言えないんだね。やっぱりハーディンさんがパーティのリーダーだから?」


 「それもあるがあいつは口が上手いから何を言ったところで結局いつも私の方が丸め込まれちまうんだ。おまけに紳士面して皮肉めいたことばかり言いやがって余計に腹が立つだけだからもう表立って歯向かわないようにしてんだ」


 「そうなんだ」


 「ああ……さて。こんな下らない話なんかしてないでもう作業は終わったしお前等も好きなことしに行っていいぞ。向こうでドン達がカードゲームやってるしお前等も混ぜて貰ったらどうだ」


 「いや。それよりもしバージニアさんが良かったら『煙草魔法シガレット』の魔法についてもっと色々と聞かせてよ。バージニアさんがどんな風にして『煙草魔法シガレット』の魔法を編み出したのか色々と気になるんだ」


 「私の魔法にそんなに興味があるなんてお前って本当に変わってるな。まぁ、私は別に構わないけど外が寒くなってきたし先に私のテントに移動しようぜ」

 

 「えっ……バージニアさんのテントに行っていいのっ!。だったら僕も父さん直伝のあったかポーション紅茶を淹れてあげるよ」


 「おっ!、そいつは冷えた体が暖まりそうでいいな」


 「(ごめんね、アイシア。まだバージニアさんから色々と話を聞かせて貰えそうだからもうちょっとだけ僕に付き合って)」


 「(私のことならお気になさらず……。転生の回数が少ない私にとってはどのようなことでも貴重な体験になりますから)」


 折角招かれたことだし僕達はバージニアさんのテントへと入れて貰って『煙草魔法シガレット』の魔法について更に色々と話を聞かせて貰うことする。


 僕が淹れた紅茶もアイシアの焼いたトーストもバージニアさんは豪く気に入ってくれて僕達は更に打ち解けることができた。


 そして『煙草魔法シガレット』の魔法についてだけど聞くところによるとバージニアさんはなんと3歳の頃から煙草に興味があって父親の物をよく勝手に口にして怒られていたとのことらしい。


 この世界では特に煙草の喫煙に関する規制はなく、6歳になる頃には親の許しを得てバージニアさんは常時煙草を吸うようになっていたそうだ。


 この世界の煙草も『地球』の世界程ではないが体には有害だ。


 特に肺には。


 しかしバージニアさんは6歳の頃から煙草を吸い続けているにも関わらず肺に全く異常が見当たらず、それどころか普段煙草を全く吸わない人よりも綺麗で医者から驚かられていたと言う。


 また肺活量を測った際にも常人を遥かに上回る数値を叩き出したそうだ。


 このことからバージニアさんが『煙草魔法シガレット』の魔法を習得する為にどのような工夫をして転生を行ったかある程度想像ができる。


 恐らく自然と煙草を好きになるように……。


 これは魂のステータスや転生スキルというより僕が『地球』の世界でアビス・アガルタのゲームを毎回クリアしていたのと同じように経験の積み重ねでそうなるようにルーティン化したんだろうけど。


 肺の耐性や肺活量等は『煙草魔法シガレット』の魔法の力を最大限に引き出す為に関連する転生スキルを取得して強化しているのだろう。


 魂の記憶のない転生中の今の状態ではそれ以上は推測することはできなかった。


 やはり『煙草魔法シガレット』の魔法について詳細に知る為には一度転生を終えて霊界に帰ってから魂の状態のバージニアさんに直接話を聞く必要がある。


 一体バージニアさんは自分の魂を一体どのように成長させているのだろうか。


 その後も冒険者として人生を続けていく僕だったが死ぬまで……。


 更にその後の6回目の転生を終えるまでそのことが気になって仕方なかった。

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