第24話 冒険者試験3
「では次に携帯用簡易錬金装置の扱いに関する試験に移ります。共に持ち運び可能な組み立て式設置型と体に装着型の2種類に関して試験を行わせて貰うことになりますがもしご自身で持参した物があればそちらを使用されても結構です」
4つ折りに収納されていた30センチ四方の土台を開きその上にカチッ!っと気持ち良く嵌る音を鳴らせながら部品を組み立てていく。
中央に電気ポッドサイズの筒状の容器、周囲にある4つの窪みにはプラスチック製のフラスコをはめ込んでいく。
樹脂製の管の付いたコルク栓でフラスコに蓋をし管の先を中央の容器へと繋がれば簡易型錬金装置の設置完了だ。
「よし……取り敢えず装置の設置は完了だな」
第1試験をクリアしたギルドの認定資格も取得することのできた僕は試験官であるメルの監督の元次の試験へと挑もうとしていた。
どうやら次の試験も錬金術に関するもののようだ。
メルの指示にあった携帯用簡易錬金装置とは先程の第1試験で使用していたものや家の店で使用しているような大型の錬金装置よりもずっと小型で冒険者としての仕事に赴く際にも持ち運びが可能な程のサイズのもののことだ。
1つ目の組み立て式設置型とはそのままでの使用は不可能だが分解された部品を再び組み合わせその場に設置することで使用が可能となる装置のこと。
折り畳みのテーブルやバーベキュー用コンロ等のキャンプ用品、それからビニールプールなんかを思い浮かべて貰うと連想がしやすりだろうか。
機能が制限される代わりに設置可能な場所であれば野外でも使用できるのがそれらの機材の最大のメリットだ。
メルからの課題を受けて僕は今ちょうどその組み立て式設置型の錬金装置をこの場に設置し終えたところだった。
「よろしい。……ではその装置でこちらのリストにある霊薬を順に錬成していって下さい。制限時間は10分です」
メルからリストを受け取って僕は指定された霊薬の錬成に入っていく。
この簡易装置で錬成できるのは霊薬の種類のアイテムだけだ。
今回は錬成するアイテムが指定されていた為自身で錬成するアイテムを選定する必要はなかったがその分制限時間がかなり短く設定されていた。
この組み立て式設置型の錬金装置だが錬成の方法は錬金術師の工房なんかに設置されている通常の装置とほとんど変わりはない。
むしろ機能が簡略されている分錬成自体も容易になっていると謂えるだろう。
指定されたアイテムを錬成する為僕は用意した素材を4つのフラスコそれぞれへと投入していく。
この簡易装置の土台の盤は加熱機能も備えて魔力を送るだけで適切な温度で素材を熱してくれる。
後は家の店でお客に提供していた霊薬コーヒーなんかと同じように蒸留によって抽出した成分を中央の装置で魔力を送りながら調合すれば錬成完了だ。
「よしっ!。……できました」
「よろしい。では早速性能を調べさせて頂きます」
・練成した霊薬の性能
体力回復度・C 疲労回復度・D 即効性・E 肉体への適合度・C
第1試験で通常の装置で錬成を行ったものより大分性能が落ちてしまっているが簡略化されている装置を使っている以上それは仕方の無いことだ。
組み立て式設置型の錬金装置を携帯する目的は例えばダンジョン探索等の道中でパーティメンバー達の霊薬を補充する為。
出立前から携帯しておくことのできるアイテムの量には限りがあるしダンジョンのより深層まで探索を行おうとすれば例え性能が落ちていようと道中でのアイテムの補給は必須となるだろう。
錬金術師のジョブ資格を持つ冒険者は少ないのだが特定の依頼においては以上の点からもとても重宝される存在となっているようだ。
「簡易型の装置でこれだけの性能を保っていれば十分でしょう。では続いて装着型錬成装置による錬成のテストを行わせて頂きます」
錬成された霊薬の性能に問題ないと判断され僕は続いての課題。
装着型錬金装置を用いた錬成を行っていく。
装着型錬金装置とは既に僕の右手に籠手のような形で装着されている錬金装置のこと。
アルケミー・ガントレットと呼ばれることもある。
その装着型錬金装置の手の甲の側には中央に薬瓶をはめ込む窪みと素材をセットする為の小さな円形のスライド式のケースが6つ備え付けられている。
6つのケースに素材を入れることでセット時に自動的に管で繋がれる専用の薬瓶に霊薬を錬成することができるのだ。
この装着型錬金装置の最大の利点は設置が不要で移動の最中、更には戦闘中でもアイテムの錬成が行えることだ。
錬成できるアイテムにはかなり制限があり性能も組み立て式設置型で錬成したものより更に落ちてしまうことになるが様々な局面において即興的な打開策を講じる為有効な手段となる。
例えば前衛を突破した敵がこちらに向かって来た際に事前にセットした素材から瞬時に爆薬を錬成し撃退に使用するとかだ。
錬金術師として冒険に同行にするなら装着型錬金装置の携帯は必須と謂えるだろう。
手の甲部に装置が備え付けられている以上通常の籠手としての機能はほぼないと謂っていいだろうが。
こちらの装着型錬金装置についても指定されたアイテムを問題なく錬成し難無く試験を通過することができた。
次はいよいよ錬金術以外の……。
僕の実戦での戦闘能力を測る為のテストへと移っていく。




