第14話 父親となるソウルメイト
ソウルナンバー・MN8-26の現在のステータス
魂Lv142
生命力 104
知性 183
魔力 97
精神力 202
魅力 142
幸運 74
主な取得済み転生スキル
【錬金術師Lv3】
スキルのLvに応じて転生先の世界で錬金術師の職に就くに近しい環境に出生し
やすくなり錬金術の技量も上昇する。
【錬金術Lv1】
スキルのLvに応じて転生先の世界での錬金術の技量が上昇する。
【ポーション錬成Lv2】
スキルのLvに応じて転生先の世界での薬品に関する錬金術の技量が上昇する。
【経済力Lv7】
スキルのLvに応じて転生先の世界で高い経済力を得やすくなる。
【商才Lv5】
スキルのLvに応じて転生先の世界で商売を行う為の能力が上昇する。
【商運Lv6】
スキルのLvに応じて転生先の世界で商売が上手くいきやすくなる
【包容力Lv5】
転生先の世界で他者を受け入れることにより安らぎを与えられるようになる。
スキルのLv、相手との関係度の高さに応じて効果が上昇する。
【料理Lv5】
スキルのLvに応じて料理の腕前が上昇し、料理に含まれるあらゆる栄養価が上
昇する
【料理(付与・魔力)Lv3】
スキルのLvに応じて自身の料理に食した者の魔力を上昇させる効果が付与され
る。
その他色々……。
「ふむふむ……」
僕達の父親のソウルメイトの募集に最後に応募して来てくれたのはMN8-26さんという魂だった。
これまでの魂さん達はその情報にサラッと目を通す程度だったのにPINK-87さんはこのMN8-26さんについてはどういうわけかその情報を細部に至るまで1つ1つ入念にチェックしている。
どうやらようやくPINK-87さんの興味を引くことのできる魂が現れたみたいだ。
けれどもMN8-26はこれまでに応募して来てくれた魂達よりも魂Lvやステータスが低く、転生先の世界で僕がその才能を継承したいと考えている【錬金術】系統の転生スキルに関してもいくつか取得してくれてはいたもののそのLvについては先程のTZ9-88さんのものよりずっと低かった。
正直言って僕からしてみればMN8-26さんを選ぶくらいならさっきのTZ9-88さんの方が良かったように思えるのだけど……。
「あなたの魂の情報を一通りチェックさせて頂きましたMN8-26さん。単純に自身の能力を高める為のものだけでなく如何にして転生先の世界を生き抜いていくかを考え抜かれた素晴らしいステータスをしていると思います」
「ありがとうございます」
「その点を踏まえた上でお聞きしたいのですが、仮に私の旦那、そして隣にいるLA7-93ちゃん達の父親として世界に転生した場合どのようにして私達を養っていくおつもりですか?」
「普段魔法の存在する世界に転生した際は錬金術の店を開業して生計を立てています。そこまで規模が大きくなったことはなく個人でこじんまりとやってるような店ですが自分と家族を養う程度にはこれまでやってこれました」
「MN8-26さんは【商才】に関する転生スキルだけでなく【錬金術】に関する転生スキルも複数取得していらっしゃいますね。ではお店で販売する品もご自身で錬成なさるのですか?」
「基本的にはそうですね。店の規模が大きくなった際には他の錬金術師を雇うこともあります」
「できればMN8-26さんのもっと具体的な事業計画をお聞かせ願いたいのですが。主にどのような商品を取り扱ってどのような場所で店を開くつもりなのかなど」
「世界に転生した際にはこちらでの記憶は失ってしまうので計画通りの事業を行う保証はできませんが、今回は新たな試みとして『ポーション・カフェ』なる店を開いてみようかと考えております」
「『ポーション・カフェ』?。それは一体どのようなお店なのですか?」
「『ポーション・カフェ』とはその名の通りコーヒーや紅茶の代わりにポーションを飲み物としてお出しするカフェのことです。勿論味はコーヒーや紅茶のようにお客の好みになるように調理して。『ソード&マジック』や他の魔法の存在する世界ではダンジョンの内部に資源採掘を効率化する為に小さな町程度の中継地となる拠点がいくつも設置されていました。ポーションは冒険者がダンジョン探索に赴く際に重用する品です。ダンジョンの拠点内に店を出しポーションの効果の程や持続時間を探索する前に摂取するのに適当になるよう調節して提供すれば……」
「お店が大盛況するのは間違いってことねっ!。とっても素敵な計画だわ~っ!。是非私もあなたの配偶者としてお手伝いしたいっ!。自宅にお店を構えれば子供達も面倒も問題なく見れるだろうし採用者はあなたで決まりっ!」
「ありがとうございますっ!」
『ポーション・カフェ』なる事業計画を聞いてPINK-87さんはMN8-26さんのことをすっかり気に入りその勢いで僕達の父親のソウルメイトとして採用することを即決してしまった。
確かに僕もMN8-26さんの事業計画を聞いて凄いとは思った。
だけど僕が目指しているのは自分の錬成した品を売って生計を立てるような地味な錬金術師ではなく……。
「ちょ……ちょっと……PINK-87さん」
「んん?。どうしたの、LA7-93ちゃん」
「確かに今の事業計画を聞いて僕も立派だと思ったけど……。僕がなりたいのは町角でひっそり店を営んで満足しているような慎ましい商売人じゃなくて冒険者だよ。同じ【錬金術】系統の転生スキルを取得しているならスキルもLvも高く実際に冒険者としての活動も経験しているTZ9-88さんの方が僕としては父親に相応しい気がするんだけど……」
「やっぱりまだ考えが浅いわね、LA7-93ちゃん。自分が冒険者になりたいからといって父親も冒険者をしていた方が良いとは限らないわ。確かにTZ9-88さんをした方が錬金術師としての高い才能を受け継ぐことができるかもしれないけど、才能よりも自身が冒険者となる為に最適な環境を整えることの方がずっと大事なのよ」
「そ……そうかなぁ……」
「仮に冒険者の職に就いたTZ9-88さんを父親に持ったとしても家を出払ってばかりで碌に錬金術について学ばせては貰えないわ。冒険者の職は一攫千金の傾向が強くて収入が安定しないだろうし、その上危険も一杯で万が一冒険の最中に命を落とすようなことがあった場合私だけじゃなくあなたやアイシアちゃんまで子供の内から働きに出なきゃいけなくなる可能性もあるのよ。その点MN8-26さんに安定した家庭で養って貰えば私もあなた達も家計の心配をする必要はなくなるし、錬金術について指導して貰える時間だって何倍も多く確保できるわ。お店を手伝いをさせて貰ってるだけでもそれなりの経験を積ませて貰えるでしょうし」
「私もPINK-87さんの意見に賛成です、マスター。仮にまた我々が冒険者となる相応しい実力を得られなかったとしてもMN8-26さんを父親としていればその事業を継いで経営者となる選択肢も取ることができます。冒険者として成功する程ではないにしても閻魔大王の査定においてある程度のソウル・ポイントを稼ぐことができるでしょうし……。それに我々ならば当初の予定通り冒険者を目指すか家の事業を継ぐかの選択も容易かと……」
「なる程……。それは確かにその通りかもしれないね」
アイシアはPINK-87さん達に悟られないよう僕達の【転生マスター】の力をより活かせる点においてもMN8-26さんを父親とした方が良いと暗に知らせてくる。
確かに転生先において自分達の人生の選択肢を増やしておくのは重要なことだ。
更に【転生マスター】である僕達ならその中から常に最適と判断した選択を取ることができる。
アイシアとPINK-87さんの意見に納得した僕は取り敢えずMN8-26さんを父親、そしてPINK-87さんとRE5-87君を母親と兄弟のソウルメイトとしてまた『ソード&マジック』の世界へと転生してみることにした。
地獄行きにでもならない限り世界に転生するデメリットはないし今は取り敢えず新たな世界への転生を繰り返して『地球』の世界と同じように効率的なルーティンを構築していくのが得策だろう。