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第13話 面接

 「さて~。それじゃあ集まってくれた魂達を面接していくわよ~。LA7-93ちゃんも自分のお父さんとなる魂なんだからしっかり面接してね~」


 「う……うん。でもその前にPINK-87さんとRE5-87君に聞きたかったことがあるんだけど……」


 「あら~、何かしら~」


 「昨日、PINK-87さんはこの前の『ソード&マジック』の世界への転生で母親であった自分と僕の父親だった人物に冒険者としての適性がなかったから僕にもその才能を授けることができなかったって言ってたよね。でもその割には僕達の兄さんとして転生してたRE5-87君は立派に冒険者になることができていたみたいだけど……」


 「それはRE5-87が私の助けがなくても冒険者として転生するのに十分なステータスを持っているからよ~。気になるならRE5-87のステータスも見せて貰ったら~」


 ソウルナンバー・RE5-87の現在のステータス

  魂Lv182

  生命力ヴァイタリティ 201

  知性インテリジェンス 82

  魔力マジック 301

  精神力メンタル 102

  魅力カリスマ 23

  幸運ラック 54

  

  主な取得済み転生スキル

  【炎術師Lv8】

  スキルのLvに応じて転生先の世界において火属性に属する魔法の技量が上昇す 

  る。

  【ファイヤーボールLv8】

  スキルのLvに応じて転生先の世界においてファイヤーボール系統の魔法の技量

  が上昇する。 

  【地獄の業火(インフェルノ)Lv3】

  自身の扱う火属性の魔法を地獄の業火(インフェルノ)へと変化させることが

  できる。

  その修練度については元になった火属性の魔法のものが大きく影響する。

  スキルのLvに応じてそれらの効果は上昇する。

  【魔法の才能Lv7】

  生まれた直後から高い魔力を有し周りから魔法の才能があると判断される。

  魔法の習得に適した環境を与えられやすくなる。

  スキルのLvに応じてそれらの効果は上昇する。

 

  その他色々……。


 「おおっ!、これは確かに凄いっ!。PINK-87さんより更に魂Lvもステータスも高い上に魔法に関する転生スキルも数え切れないくらい取得してる上に全部火属性のものに統一してあるっ!」


 「しかし全てを火属性に統一するというのは流石にやり過ぎではないのでしょうか。【転生マスター】である我々と違……いえ。転生先の世界ではこちらでの記憶はないわけですし確実に火属性の魔法を習得できる保証はありません」


 「けどこの方が転生先の世界で自分に火属性の魔法の才能があることに気付き易いだろうが。中途半端に他の属性の転生スキルを取得したところでほとんど使い物にならないだろうしよ」


 「それは……確かにそうかもしれませんが……」


 RE5-87君の考えにアイシアは頷いて見せてはいるものの本心ではあまり納得いってない様子だった。


 確かにRE5-87君の言う通り転生スキルの系統をなるべく統一させるのは僕達が魂が成長させる上での基本だ。


 僕もアイシアもそのことは十分承知している。


 しかしながらどれだけ念入り転生の計画を立てても不測の事態が幾多も起こり得るのが僕達の転生する世界というものだ。


 あまり転生スキルの系統を統一することに拘り過ぎると転生先で遭遇する事態への対応力が損なわれてしまう場合もある。


 そう考えるとRE5-87君の転生スキルは少し偏りが過ぎる気がする。


 ここまで魂を成長させるだけのソウル・ポイントがあったのならもう少し幅広く転生スキルを取得しても良かったのではないだろうか。


 別に得意とする魔法の属性が2つや3つぐらいあっても問題はないはずだ。


 まぁ、他の魂の成長の仕方に口出しするのはあまり好ましいことではないのだが。


 「まぁ、どんな風にステータスを成長させるかはその魂の自由だからね。それよりこの【地獄の業火(インフェルノ)】っていうのは……」


 「ああ。自分から地獄に転生して地獄の業火による火あぶりの刑を1年間耐え抜いて手に入れることができたエキストラ転生スキルだ」

 

 「そうか。この前ジェイス兄さんに転生した時に使ってた魔法もこの【地獄の業火(インフェルノ)】の転生スキルによるものだったんだね」


 エキストラ転生スキル。


 僕達のソウル・マネジメントのページからではなく転生先の世界で特定の条件を満たすことにより取得できる特別な転生スキルのことだ。


 かなり条件の厳しいものも存在してその性能は僕の【転生マスター】や他の隠し転生スキルに匹敵するものある。


 そんなスキルを取得しているなんてやはりRE5-87君はかなりやり手の魂みたいだ。


 「さぁて。与太話はその辺にしておきなさ~い、2人共。折角集まってくれた魂さん達をこれ以上待たせるのも悪し早く面接を始めるわよ~」


 「あっ……はいっ!」


 「はいよ、御袋おふくろ


 雑談はここまでにして僕達はいよいよPINK-87さんと夫、そして僕とアイシア、それにRE5-87君の父親となってくれる魂の面接を開始した。


 今回僕達の募集に応募してきてくれた魂は全部で5人。


 まず1人目は……。


 ソウルナンバー・BD3-56の現在のステータス

  魂Lv201

  生命力ヴァイタリティ 78

  知性インテリジェンス 82

  魔力マジック 203

  精神力メンタル 89

  魅力カリスマ 79

  幸運ラック 51

  

  主な取得済み転生スキル

  【水術師Lv6】

  スキルのLvに応じて転生先の世界において水属性に属する魔法の技量が上昇す 

  る。

  【水撃ストリームLv3】

  スキルのLvに応じて転生先の世界において水撃ストリーム系統の魔法の技  

  量が上昇する。 

  【槍術Lv5】

  スキルのLvに応じて転生先の世界での槍の技量が上昇する

  【魔法の才能Lv5】

  生まれた直後から高い魔力を有し周りから魔法の才能があると判断される。

  魔法の習得に適した環境を与えられやすくなる。

  スキルのLvに応じてそれらの効果は上昇する。

 

  その他色々……。


 「おおっ!。これは早速良い魂さんが応募してきてくれたんじゃないっ!。僕と同じ【水術師】系統の転生スキルも沢山取得してるし父親として申し分ないよ。できれば【錬金術師】系統の方が良かったけどRE5-87君も初めの内は扱いが難しいって言ってたし僕はこの魂さんでも……」


 「駄目っ!」


 「えっ……」


 「良さげな転生スキルを並べてLA7-93ちゃんは騙せても私はそうはいかないわよっ!。面接する前にあなた達のこれまでの転生の履歴はちゃんと調べさせて貰ってるんだからっ!。それによるとBD3-56さん……」


 「は……はい……」


 「あなたはここ最近の転生で閻魔大王から10回も家庭内暴力の注意を受けてるわね。地獄行きにまではなってないようだけどどうして家族に手を出すような真似をしたの」


 「そ……それは……その……」


 「隠し通そうとしても無駄よ。ソウル・ネットで連絡を取ってあなたの旦那さんに転生した魂さん達からの証言も取ってあるんだから」


 ソウル・ネット。


 それは霊界での僕達魂にとって地球の世界に存在するインターネットに等しいものだ。


 ソウル・マネジメントを通じて接続できるそのソウル・ネットには魂達が協力して作り上げた転生先の世界のデータベース、それからPINK-87さんが魂からの証言を取るのに利用したネット掲示板やSNSのような機能も存在している。


 「“私は以前『グレイスト・ファンタジア』の世界に転生した際一流の冒険者に転生していたBD3-56と結婚しました。一流の冒険者として稼ぎが良く、冒険に出ていない日はよく家族へのサービスもしてくれましたがそんな彼にも1つだけ欠点があり酒癖がこの上なく悪いのです。ダンジョンの攻略や依頼に失敗した翌日には一日中酒に溺れて私や子供達家族に八つ当たりしてきました。仕事のストレスによるものだと最初の内は我慢していたのですが……彼が自身の水撃ストリームの魔法で私を水攻めにしたその日の夜私は子供達を連れて家を出て行きました。”」


 「うぅっ……」


 「他にも転生先の世界であなたの配偶者パートナーだった魂さん達から同じような証言をいくつも頂いてるのよ。このような魂を私達のソウルメイトとして迎え入れることはできませんっ!」


 「はい……」


 PINK-87さんに断然と拒否されてしまいBD3-56さんは落ち込んだ様子で僕の天国の部屋を後にして行く。


 少し可哀想にも思えるけど僕としてもできれば家族に暴力を振るうような魂とソウルメイトとなるのは避けたい。


 これまでの転生で虐待された経験は何回もあるし虐待をしてしまう側にも色々と理由があるのも分かってる。


 けど今回は僕だけでなく恐らくはまた僕の姉か妹して転生するであろうアイシアにまで危害が及ぶ可能性があることを考えると到底BD3-56さんを受け入れることはできなかった。


 「はい、では次の魂さん」


 「はいっ!。よろしくお願いしますっ!」


 次に面接を受けたのはTZ9-88という魂さん。


 TZ9-88さんはBD3-56さんよりも更に魂Lvが高くおまけに僕が転生先の世界でなることを夢見ていた【錬金術】系統の転生スキルも数多く取得していた。


 先程のBD3-56さんのようにこれまでの転生の履歴にも特に問題となる点はなく僕としても是非このTZ9-88さんに僕達の父親としてのソウルメイトになって欲しいと思ったのだがPINK-87さんは……。


 「駄目っ!。一見すると【錬金術】系統の転生スキルをバランス良く取得していて転生先の世界で立派な錬金術師としてやっていけそうだけれども経済面を向上させる為の転生スキルが1つもありませんっ!。それじゃあとても私達家族に良い暮らしをさせてくれるとは思えないわっ!」


 「い……いや……。別に良い暮らしをさせて貰えなくてもそこそこの収入があれば十分なんじゃない。さっきのBD3-56さんと違って特に家族を迷惑を掛ける傾向もないみたいだし……」


 「家族に家計の心配をさせるのは十分迷惑な行いでしょっ!。もし私がLA7-93ちゃんやアイシアちゃん達を残して共働きに出なきゃいけないような環境になったらどうするのっ!。寂しい思いをしたあなた達がグレちゃって冒険者になるどころか非行に走って人生を台無しにしちゃうかもしれないのよっ!」


 「そ……それはその……。正直僕とアイシアならどんな家庭環境でもグレたりする心配ないはないから折角応募して来てくれた魂さん達をそんなに選り好みしなくても……」


 「あら?。グレたりしないなんてどうしてそんなに自信を持って言えるの?。ほとんど魂の成長を行えていないあなた達は精神メンタルの値だってほとんど初期値のままなんでしょ?」


 「そ……それは……」


 い……いや……。


 精神メンタルの値とか関係なく人格に関して謂えば【転生マスター】である僕達が生まれ育った環境の影響を受けることはほとんどないんだって。


 僕達にとって良き母親であろうとしてくれるPINK-87さんには悪い気がするけど例え貧困で両親が不在の環境で育とうと、その反対に裕福で両親の愛情に包まれて育とうと僕達は僕達のままだ。


 そりゃ勿論裕福な家庭に生まれる方が望ましい。

 

 PINK-87さんとRE5-87君に関しては普通に家庭の環境を受けるわけだし……。


 僕達が【転生マスター】であることは2人に話すわけにはいかないからあまり声を大にして言うことはできないけど……。


 「折角応募して来てくれた魂さん達を大事にしたいって気持ちは分かるけどソウルメイトとして共に転生する相手は慎重且つ厳格に選ばないと駄目よ。特に家族としての関係を持つような相手は転生先の世界で私達に多大な影響を及ぼすんだから」


 「う……うん」


 「はい、それじゃあ次の魂さん」


 結局【転生マスター】としての僕達の意見は言えないままPINK-87さんは応募して来てくれた魂達の面接を行っていく。


 しかしその後に応募して来てくれた魂達も皆PINK-87さんのお眼鏡にはかなわなかったようだ。


 そして僕達の父親に応募して来てくれた魂はあっという間に最後の1人へとなってしまった。

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