第116話 意外な再開、GGZ-72さん
「では今度は全目標を5秒以内『爆風水撃』で撃墜して下さい。正し使うのは上部2つの鋏のみ。残りの下部4つの鋏はスラスターにしてホバリングの状態を維持して下さい」
僕が背中の6つの鋏をスラスターにして初めての飛行に成功してから更に半年が経過。
MR9-72さんの手術によって僕の鋏は更に強化されていた。
スラスターの爆風を発生させる為に開口部の中央の注射器に加えてその周りの3方に小型の注射器が添えるように結合されている。
この3つの注射器には爆風を発生させる為の『エアラジン』ではなく『水撃』の魔法を放つ為の水が収容してある。
スラスターの爆風と『水撃』の魔法を同時に撃ち放つことで水撃の威力を増した『爆風水撃』が僕の新たしい技だ。
更にスラスターの注射器の周りを水を収容した3つの注射器がファンのように回転し、3つの水撃が合わさり更に威力の増した螺旋状となって訓練用のバルーンをあっという間に撃ち落としていく。
「クリアっ!。只今のタイム3.86秒、水撃の計測威力値は8709ポイント。どちらも素晴らしい数値です。もう完全に新たに強化された体にも慣れたようですね」
「うんっ!。飛びながらでの戦いにも大分慣れて来たしもうこれならいつでも実戦に迎えそうな感じっ!。鳥みたいに自在に飛び回れる相手であっても対等に戦える気がするよっ!」
「実力だけでなく自信もついてきたようで結構。実戦においては精神の強さもその時の実力に多大な影響を及ぼしますからね。折角気分も乗っているようですし今日は引き続き今度は『大渦大剣』の方も使用してみましょう」
「よーしっ!、任せといてっ!」
MR9-72さんに言われて僕は背中の物より2倍以上もの大きさのある右腕の鋏を開く。
この鋏の開口部にも背中の物と同じようにファンのように3つの注射器が新たに追加されていた。
中央の物と合わせて4つの注射器があるわけだがこの右腕の注射器には全て大量の、合計で1200トンのも水が収容してある。
この1200トンの水を圧縮して生成するのが僕のもう1つの新技。
『水剣』の強化技に当たる『大渦大剣』だ。
目一杯に開いた右腕の鋏を柄のようにして生成された特大の水の剣は周りに強烈な渦を巻いていてドリルのようにも見える。
通常の『水剣』のように小回りが利かず少々扱いにくい面もあるけどその分破壊力は抜群だ。
その『大渦大剣』で僕はMR9-72さんが用意した標的物。
この世界で最高クラスの硬度を誇ると言われている『ディアマント』の鉱物の巨大な塊目掛けて振るっていく。
「うおぉぉぉーーーっ!」
勢いよく振り下ろされた僕の『大渦大剣』が見事『ディアマント』の鉱物を粉々に砕き割った。
やはり破壊力に関しては十分過ぎるものがあるようだ。
動きが素早くこちらも小回りが必要とする相手には人間のものである左腕に通常の『水剣』を構えて戦えば良い。
その場合は右腕の鋏を盾として活用することも可能だ。
「うぃーすっ!。ベルモンデスー、いるかー?」
「お~、これは誰かと思えばアイシーンではありませんか。随分と久しぶりですが一体何のようです」
「えっ……アイシーンってもしかして……」
僕達が訓練を行っているこの施設の地下の巨大な演習場。
そこへベルモンデスさんことMR9-72さんを訪ねてアイシーンと呼ばれる女性の人物がやって来た。
そのアイシーンという名と声を聞いて僕はハッとしたように彼女の方を振り向く。
するとそこには不遜な態度で煙草の煙を吹かす金髪の竜人の女性。
前回ヴァン・サンクカルトとして転生した対魔王アークド合同部隊の時に戦ったGGZ-72さんが転生していると思われるアイシーンという女性の姿があったのだった。
「(あ……あれは正しくGGZ-72さんが転生しているアイシーンさんじゃないかっ!。MR9-72さんはGGZ-72さんとも知り合いだったの?。もしかしてGGZ-72さんソウルメイトを組んで転生しているとか?)」
「(いえ。別にソウルメイトではなくアイシーンとは偶然知り合っただけですよ。最も彼女が扱う『煙草魔法』の魔法から私も彼女がGGZ-72であることには気付いていましたがね)」
「最近お前に造って貰った『煙草銃』の調子が悪くてな。悪いがちょっと調整して貰えないか」
MR9-72さんの元へとやって来たGGZ-72さんは銀メッキに金の装飾模様が施されてた拳銃。
以前にヴァン・サンクカルトとしての僕と戦った時に使用していたあの煙草の吸殻を弾薬として発射する拳銃を取り出して見せた。
「(あっ!。あれって僕達と戦った時に携帯用の灰皿に入れた自分の煙草の吸殻を弾倉にして銃弾を放っていた銃だっ!。あれもMR9-72さんが錬成したものだったのっ!)」
「(ええ。GGZ-72の『煙草魔法』の魔法には私も興味がありましたからね。折角ですので彼女の役に立つ品を色々と錬成して差し上げたのですよ。しかしこのタイミングでGGZ-72が訪ねて来てくれたのは幸いでした。ちょうどミーズ・ニーズ教団との連絡が取れてこの施設からの脱出計画を実行に起こそうとしていたところです。折角ですから彼女にも協力して貰いましょう)」
「(えっ!。ミーズ・ニーズ教団と連絡を取った上にこの施設からの脱出を計画していたなんてそんなの初耳だよっ!、MR9-72さんっ!)」
「(あなた方には訓練に集中して欲しかったのでね。ギリギリまで伏せておいたのです。ミーズ・ニーズ教団の者達がこの施設を襲撃するとともに我々も内部から反乱を起こす手筈となっておりますので心しておいて下さい)」
「(分かった。だけどミーズ・ニーズ教団の人達がよくそんな計画に手を貸してくれたね。一体どんな交渉を行ったの?)」
「(ミーズ・ニーズ教団も自分達の信仰の支配下にある地域にこのような非人道的な実験施設があると分かって放置しておくわけにはいかないでしょう。内部からの援護と施設制圧後の全面降伏を打ち出せばすんなりと了承して頂けましたよ)」
「(そうか……。でもそういうことなら色々と覚悟しておかないといけないね。この施設には警備は勿論MR9-72さん以外の研究者達からの実験を受けた危険な被験者達が大勢いるわけだし……)」
意外なところでアイシーンことGGZ-72さんと再会できた僕達であったが、なんとそのタイミングでMR9-72さんが驚きの計画をしていたことが明らかになった。
近々ミーズ・ニーズ教団の襲撃に合わせてこの施設を脱出するつもりだというのだ。
確かにヴェント達率いるメノス・センテレオ教団、しいては『味噌焼きおにぎり』の連中に対抗する為にもミーズ・ニーズ教団との協力関係をなるべく早い段階で気付いておいた方が良い。
僕のパワーアップも大方完成したようだしそろそろこの施設とお別れするのにちょうど良い潮時なのかもしれないな。




