第114話 【転生マスター】の研究者 MR9ー72
「(こ……このベルモンデスも【転生マスター】だって本当なのっ!。それもベル達の知り合いの魂が転生しているだなんてっ!)」
「(ほ……本当なの……。こいつの魂の名前はMR9ー72と謂って、【転生マスター】として持つ魂の記憶の知識を活かして毎回科学者や研究者として転生し、これから僕達にしようとしてる人体実験のように色々と危険な研究を行っている奴なの。以前僕達がLA7-93以外の細胞として転生している時に今回のようにそいつの肉体の精密な検査をMR9ー72にされた時があって、その時にも僕達が他とは異質な細胞をしていることから【転生マスター】だとバレたことがあったなの)」
「(バレたことがあったなの)」
「(な……なる程。それじゃあベル達はその時にこのベルモンデスに転生しているMR9ー72と知り合ったってわけか)」
「(そういうわけなの)」
「(なの)」
アイスラッドに連れて来られた人体実験施設内にて不意に出会うこととなった新たな【転生マスター】。
この施設の研究者であるベルモンデスに転生しているこの魂の名はMR9ー72と謂うらしい。
以前にも転生中に出会ったことがあるベル達によれば毎回その転生先の世界においての法を無視して人やその他の生物の肉体を隅々まで弄繰り回す謂わばマッド・サイエンティストと呼ばれるようなことをしているようだが、『味噌焼きおにぎり』のような特定のソウルギルドに所属しているようなことはなくどの転生において中立な立場を保っているようだ。
違法な実験を好んで行うような危険な魂であることは承知で僕はMR9ー72に協力を仰いで貰うようベル達にお願いする。
僕達の研究の担当となったMR9ー72の協力を得ることができればアイスラッドやあのこの施設の所長の老人にも従う必要はなく再び自由を得ることができる。
更に上手くすればこの研究施設を利用することで『味噌焼きおにぎり』の連中に対抗できるだけの力を手にすることができるかもしれない。
「(なる程……。まさかがあなた達が転生している細胞の持ち主であるこのウルカ君とアイシアさんまで【転生マスター】だったとは……。まさか一度に4人もの【転生マスター】と出会えるとは思ってもみませんでしたよ)」
「(僕達もまさか余儀なく連れて来られたこの場所で【転生マスター】であるMR9ー72さんに出会えるとは思ってなかったよ。それでさっき話した通り同じ【転生マスター】の好でMR9ー72さんに僕達に協力して貰いたいんだけど……)」
「(構いませんよ。研究者としての職も私の道楽としてやっているだけのことで所長やこの施設には何の義理も感じていませんから。只あの『味噌焼きおにぎり』の連中に対抗できるだけの力をあなた方に授けてあげられるとは約束できませんがね)」
「(僕達としてはアイスラッドやこの施設に捕らえられた状況でMR9ー72さんの協力を得られるだけで有難いんだからそこまで約束して貰わなくても構わないよ。只MR9ー72さんの研究によって僕達の力を少しでも引き出すことができるならできる限りのことはして貰いたい)」
「(分かりました。では現在転生している肉体ではなくあなた方の魂自身についての情報を詳しく教えて下さい。魂のステータスや取得している転生スキル、それから転生先の世界で実際にどのような能力を習得しているようにしているか等も。それらを参考にして総合的にあなた方の力を最も引き出せるプランを考えますので)」
「(分かった。転生先の世界で僕が得意としているのはまだ固有転生スキルとしては未完成だけど『注射器魔法』という能力なんだ。その名の通り注射器を用いてあらゆる物を対象から抽出したり反対に注入したりするできる能力なんだけど流石に赤ん坊のこの状態ではまだ扱えそうにないや)」
「(ならばまずはなるべく早くあなた方がその『注射器魔法』の能力を習得できるように致しましょう。私もその習得を手助けさせて頂きますの能力についてより詳細に教えて下さい)」
「(了解)」
意外にもMR9ー72さんの協力はあっさりと得られることとなった。
それからあっという間に3年という月日が経ち、成長を遂げた僕達は普通に人語を話して皆とコミュニケーションを取れるようになっていた。
流石【転生マスター】の科学者というだけあり、MR9ー72さんの手助けを受けた僕達は僅か3年の内に前回ヴァン・サンクカルトととして転生していた時以上の性能を誇る『注射器魔法』の魔法を習得することに成功する。
そして今回手にしたデルトゥーカさんの7つの鋏の特性と勇者としての力、そして『注射器魔法』の魔法を総合的に合わせて引き出す為の僕の設計図が明らかとなった。
「ええっ!。これがMR9ー72さんの研究によってパワーアップした際の僕の姿なのっ!」
「ええ。私になりにお2人の力を最大に引き出せるよう考えた結果ですがお気に召して貰えましたかな?」
ベルモンデスさんことMR9ー72さんの手元のモニターには研究の完成後の僕の姿がその肉体の細胞の隅々に至るまで事細かに把握できるよう立体的に映し出されていた。
その完成後の姿の僕だが7つの鋏の内側にある全ての開口部に錬成した『注射器魔法』の魔法の注射器が僕の肉体と完全に一体となった形で装着されている。
因みにそのモニターや研究室内にあるその他の高性能の器材についてはMR9ー72さんが【転生マスター】として持つ他の世界の知識を活かして魔法が主体のこの『ソード&マジック』の世界においても作り出したもののようだ。
「こ……これは……。僕達の鋏と『注射器魔法』の魔法の注射器が一体となっているの?」
「はい。あなたの体内と直接連結させることで『注射器魔法』の魔法の性能を最高レベルまで高めることができると思います。例えばLA7-93君の得意とする『水撃』の魔法等もこの鋏の開口部の注射器を通して発動するのとでは全然威力の程が変わってくると思いますよ」
「な……なる程。元々僕達の鋏の内側の穴からは結構な威力で水撃を放つことができていたしそれと同じ感覚で扱えば良いのかな?」
「しかしこうして肉体と完全に融合した形で結合しているということはこの『注射器魔法』の魔法の注射器はマスターの魔力によって具現化されたものではなく、錬金術等によりこの世界に実物として製造されたものということなのですか?」
「ええ。前回の転生であなた方が愛用していたというメルクリオ注射器のようにね」
「えっ……。だけどメルクリオ注射器はメルクリオさんっていう凄腕の錬金術師に頼んで錬成して貰った物なんだよ。そんなものを合計7つもどうやって用意するつもりなの?」
「勿論私が全て用意するつもりですが。一応錬金術の心得もそれなりにありますからね。錬成に最適となる素材もこの施設の保管庫に全て揃っていますし」
「け……研究者としてだけでなく錬金術も扱えるなんて凄いね」
モニターに映る姿の僕の鋏に結合された7つの『注射器魔法』の魔法の注射器。
それは全てMR9ー72さんが錬金術によって用意してくれるとのことだった。
今回の転生においても前回のメルクリオ注射器と同じ、それ以上の性能ほ誇る『注射器魔法』の魔法の注射器が手に入るとは幸いだ。
そして更にMR9ー72さんが考案した僕達の鋏と結合した『注射器魔法』の魔法の注射器は僕達が想像もしてなかった使用法が用意されていた。
未だかつてないやり方で『注射器魔法』の魔法の注射器を自在に操る僕の姿がモニターへと映し出される。
「こ……これはっ!。僕が自在に空を飛び回っているっ!」
「背中の6つの鋏に結合した注射器から爆風を発生させスラスターのような役割をさせているのでしょうか。まるで『地球』の世界に転生した時に見せて頂いたアニメに登場するガ〇ダム等のロボットのようですね」
「まさにその通りだっ!。滅茶苦茶格好良くて最高だよっ!、MR9ー72さんっ!。本当に僕はこんなガ〇ダムのように自在に空を飛び回れるようになるのっ!」
「私の計算に狂いがなければね。勿論あなたの努力もそれなりに必要としますが」
「そんなの当たり前だよっ!。『味噌焼きおにぎり』の連中からPINK-87さん達を救い出す為に僕達だって全力を尽くすっ!。だから早速このMR9ー72さんが僕の力を完成させる為の訓練を開始しようっ!」
「まぁ、そう焦らずともまずはあなたの『注射器魔法』の魔法の注射器を私が錬成し終えるのを待って下さい。その後であなたの鋏の開口部とその注射器を結合する手術を行います。術後に注射器があなたの体に完全に適合するまでの期間も含めて最低でもこれから1年程の期間を要するでしょう」
「い……1年も掛かっちゃうのっ!。僕達がこうしている間にも『味噌焼きおにぎり』の連中は着々と自分達の計画を進行させているかもしれないっていうのに……」
「(焦る気持ちは分かるけど今はMR9ー72さんの元で力を身に付けることに専念するなの、LA7-93。しっかりと準備をしてからでないとヴェントやSALE-99に返り討ちにされてしまうだけなの)」
「(しまうだけなの)」
「わ……分かったよ……。ベル……ベルル……」
「あなた方の研究に努めている間にこの施設の職員としての伝手を使ってメノス・センテレオ教団に関するできる限りの情報は集めておきますよ。あと前回の転生であなた方が協力関係にあったというミーズ・ニーズ教団についてもね。今ではメノス・センテレオ教団に更に力の差をつけられてしまっていますが、本気でメノス・センテレオ教団、しいてはその裏で手を引く『味噌焼きおにぎり』の者達に立ち向かおうと思えば彼等の協力は必要不可欠でしょう」
「そうだね。そのことについてもよろしくお願いするよ、MR9ー72さん」
MR9ー72さんから提示された僕の強化計画をすっかりと気に入った僕だけど、『注射器魔法』の魔法の注射器の結合手術を終えて本格的な訓練を開始できるのは1年後になるということだった。
それから更に『味噌焼きおにぎり』の者達に対抗しうるだけの力を手にしようと思えばどれだけの時間を要するか分からない。
しかしベル達の言う通りこの残された最後の転生で無謀な真似をして犬死をするわけにはいかない。
僕はもどかしさと悔しさで一杯の心を必死に抑え込みながらMR9ー72さんの元でパワーアップを図ることに専念した。




