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第113話 謎の人体実験施設

 「着いたぞ、降りろ」


 「お……おぎゃぁ……」


 な……何なんだ……ここは……。


 馬車で大方丸3日掛けて僕達が連れてこられた先に広がっていたのは人里から遠く離れた森林の奥に佇むまるで刑務所とも思える重苦しい雰囲気の巨大な収容所のような施設だった。


 重厚な壁に覆われ至る所にフェンスが設置、警備員と思われる人物達が配置されている。


 正面の入り口にある検問所にも3人の警備員がいてまさに犯罪者のような危険人物達を取り扱っているような感じだ。


 そんな施設の検問所のゲートの向こうから如何にも怪しい雰囲気の片眼鏡モノクルを掛けた男の老人が僕達の元へと歩み寄って来た。


 「これはようこそお越しくださいました、アイスラッド様。本日は一体どのようなご用件でいらっっしゃたのでしょうか」


 「ちょっと面白そうな素材が手に入ったのでな。この施設で私の戦力として使えるように矯正して貰いにきた」


 「ほほぅ……。その面白そうな素材とは後ろにいるその子供と赤ん坊達のことですかな。蟹のモンスターと人間の種族の混血ハーフであることはともかくその小ささの赤ん坊の姿でまともに立ち歩けるとは……」


 「ああ。こいつ等は2人の勇者、デルトゥーカとスヴィェートの間に生まれた子供達だ。その潜在能力は計り知れずこいつ等だけで私の部下のサーシャを打ち破ってしまった」


 「なんとっ!。それは末恐ろしい子供達ですな。そのような素材を頂けて家の研究者達もさぞ喜ぶことでしょう」


 「ああ。だが赤ん坊の2人はまだまともに人語を喋ることはできないようだが意思能力に関しては成人と変わらぬ程のものを持っているから油断はするな。厳重に服従な魔法を掛けて対応をした方が良い。勿論再び私の手元に返す時には決して歯向かえないようにしておけよ」


 「畏まりました」


 「じゃあ私はもう行くから後のことは任せたぞ」


 「お……おぎゃぁっ!」


 えっ……アイスラッドは僕達をここに置いて行ってしまうの?。


 「なんだ。寂しそうな顔をしてまさか私と別れるのが辛いだなって言っているわけではないよな」


 「お……おぎゃぁ……」


 い……いや。


 そういうわけじゃないけどできればもっとメノス・センテレオ教団についての情報を聞きたかったなと思って……。


 赤ん坊の泣き声と無垢な視線で必死にそう訴えかえる僕だけどその内容が伝わることもなくアイスラッドは再び馬車に乗ってこの場から去って行ってしまう。


 僕達が取り残されて置いていかれたこの施設は一体どのような場所なのだろうか。


 僕達のことを素材とか研究者達が喜ぶとか先程の会話の中で話していたしもしかして違法な人体実験のようなものを行っている場所なのかもしれない。


 だとしたら命と引き換えだったとはいえ相当危険な場所で連れられて来てしまったぞ。


 「さぁ、ではあなた方を担当する研究者の元へと案内しますで私について来て下さい」


 アイスラッドがいなくなったとはいえ今度は屈強な警備の男達に囲まれとても逃げ出すことなんてできそうにない。


 この施設に関しては嫌な予感しかしなかったが僕達は渋々と老人の後をついて行くしかなった。


 「ううぅぅーーーいやぁぁっはあぁぁぁぁーーーーっ!」


 「がるるるるるるぅぅぅーーーっ!」


 「うががががががぁぁぁーーーっ!」


 老人に案内されて施設内を歩いていくとそこには警備員や他のここの職員と思われる者達と違って布切れを一枚羽織っただけの正しく囚人のような恰好を人達が数多くいた。


 その中の一部の人達が気が狂ったように喚きながら頭を壁に何度もぶつけたり床で転げまわったりして大暴れしている。


 一体あの彼等はどのような人物なのだろうか。


 「な……何なの……あの人達は……」


 「ここはあなた方のように希少且つ有望な人材を集めてその能力を限界以上にまで引き出す研究を行っている施設でしてな。只そのような人物達皆高い能力を有するのと引き換えに精神に異常をきたしている者達がほとんどなのです。そんな彼等に手を焼いて最早自分達では対処できなくなった家族達によって彼等はこの施設へと売られて来たというわけです。まぁ、最初はまともだったにも関わらず実験の弊害で頭がおかしくなってしまった者達も多々いますがね。あなた達は大事なお得意様であるアイスラッド様から預かった商品なのですからそのようなことにはならないように願っておりますよ」


 「………」


 老人の言葉を聞かされて僕達の気は更に重くなった。


 アイスラッドに服従を誓った以上まともな扱いをされるとは思ってもいなかったけどまさかこんな場所に連れてこられてしまうなんて……。


 馬車の中でミルクや食事を貰ったことで抱いていた淡い期待が僕達をより深い絶望の底へと突き落とした。


 「失礼しますよ、ベルモンデス。アイスラッド様からまた新たに3体もの研究素材を提供して頂きました。現在他の研究者達で手が空いている者はいないようなので3人共あなたにお任せしてよろしいですかな」


 「お~、これは所長。勿論ですとも。ちょうどお気に入りだった実験体が死んでしまって暇を持て余していたところです」


 「この者達はアイスラッド様からしっかりと戦力として扱えるように調整するように念を押されていますからね。そんな風に簡単に死なせて貰って困りますよ。アイスラッド様から聞いた話ではこの者達はデルトゥーカとスヴィェート、あの2人の勇者の間に生まれた子供であるようですし我々としてもとても貴重な実験材料なのですからね」


 「ほほぅ、それは楽しみな素材ですね。では早速研究の方に取り掛かりましょう。まずはその子達の肉体の精密な検査をさせて頂きましょうか」


 「それは仕事熱心なことで結構。では後のことは任せましたよ」


 この施設の責任者と思われる老人に案内されて僕達はベルモンデスという男の元へと連れられて来た。


 ベルモンデスは高身長で瘦せ型、研究者というだけあって白衣に身を包み、無精髭を生やした顔に縁のない丸型の眼鏡を掛けていて、研究に没頭する如何にも身の回りのことにはまるで手が及んでいないと思えるような汚らしい恰好をした人物であった。


 そんなベルモンデスの風貌を見て僕達は不潔感を通り越しておぞましさを感じてしまう。


 なんせ僕達はこれからこの男に肉体の隅々までいじくりまわさられることになるかもしれないのだ。


 そのことには変わりはないだろうかせめて育ちの良いエリート風の研究者と思えるような清潔感のある恰好をしていて欲しかった。


 「さてと……ではまずこちらの装置の方に横になって頂きましょうか。最初は一番年上と思われる君から」


 「は……はい……」

 

 「あっ、その前にまずあなた方の自己紹介をして頂きましょうか。先程の所長のお話ではなんでもあなた方はあの勇者同士のカップル、デルトゥーカ殿とスヴィェート殿の間に生まれたお子さんだとか……」


 「は……はい。僕は一番上の長男でダルカ・ドゥスミエリ。それで僕の弟と妹であるこっちの双子の赤ん坊がウルカ・ドゥスミエリとアイシア・ドゥスミエリと謂います」


 「おんぎゃぁっ!」


 よろしくっ!。


 ダルカの紹介に合わせて僕は赤ん坊の泣き声で明るく挨拶をする。


 少しでも相手への印象を良くしておけばあまり酷いことをされなくなるのではと気休め程度に思ったからだ。


 「これは丁寧なご紹介して頂きありがとうございます。私はこの研究所で科学者として務めているベルモンデス・エグザムと申します。では早速ですがそちらの装置でダルカ君から肉体の精密検査をさせて頂きたいと思います。準備はよろしいですかな?」


 「う……うん。別に検査するだけなら痛いこととかは何にもないよね」


 「ええ。個人差もありますがほぼ何も感じることなく終わると思うので安心して下さい。最もそれは今回だけで明日以降から始まる実験においてはどうなるかは分かりませんがね。ふふっ……」


 「ううぅ……」


 装置の台座へと寝かされたダルカがとても不安そうな表情を浮かべている。


 そんなダルカには少し悪いが僕達はダルカの座らされている装置のことの方が気になっていた。


 「(な……なんかファンタジー色の強いこの『ソード&マジック』の世界に珍しい装置だね)」


 「(はい。以前マスターと共に『地球』の世界へと転生させて頂いた時に見たSF物の映画なんかに登場するようなとても高度な技術が用いられた装置のように思えます)」


 「(うん……。大抵ことは魔法で代用が利くこの世界でこんな装置が作れるだけの技術が発達することなんてあり得ないはずなんだけどね)」


 書類やゴミがあちこちに散らかっていてとても汚らしく思えるが、このベルモンデスの研究室と思われる部屋に設置されている器具はどれもアイシアの言う通り『地球』のSF映画ばりの高性能と思える見かけをしたものばかりだった。


 台座に寝かされたダルカの上を緑色のレーザーのようなエフェクトが走り、それによってスキャンされたと思われるダルカの体内の映像がベルモンデスの手元にあるモニターへと映し出される。


 「おおっ!。これは一目見ただけとてつもない潜在能力が秘められていることが分かる素晴らしい組織ですっ!。流石は勇者同士の間に生まれた子というだけのことはありますね。それでは次はウルカ君の検査をさせて頂きたいと思います」


 「お……おぎゃぁ……」


 わ……分かったよ。

 

 赤ん坊の言葉で恐る恐る返事をして僕もダルカに続いて装置の台座へと横になっていく。


 先程のダルカと同じようにレーザーのようなエフェクトが僕の体内をスキャンしてその映像がモニターへと映し出された。


 「ほほぅっ!。これはお兄さんのダルカ君以上の潜在能力を秘めていると感じさせる程の組織ですね。それにこれまでに観測されたことがないと思われる未知の細胞も多数……っとんんっ!?。この明らかに他とは異質な形状を持つ2つの細胞はもしかして……」


 「(もしやあなた方はベルさんとベルルさんではありませんか?)」


 「(……っ!)」


 僕の体内の映像を見て何かに気付いた様子のベルモンデス。


 そのすぐ後にそれについての内容がベル達を通して僕とアイシアにも明らかになった。


 「(あ……あのなの……LA7-93、アイシア)」

 

 「(あ……あのなの……)」


 「(んん?。どうしたの、ベル、ベルル)」


 「(実は今このベルモンデスが【転生マスター】のテレパシーを通して僕達に話し掛けてきたのなの。どうやらこのベルモンデスには僕達の知り合いの【転生マスター】の魂が転生していたみたいなの)」


 「(な……なんだってぇーっ!)」


 ベル達から突然告げられてきた衝撃の事実。


 なんとこのベルモンデスにも僕達を同じく【転生マスター】の転生スキルを取得した魂が取得しているというのだ。


 更にどうやらその魂は僕の細胞に転生しているベル達と知り合いであるらしい。


 モニターに表示された特徴的な細胞を見てベル達だと気付くことができたようだが知り合いと謂っても一体どのような関係性なのだろうか。


 僕達に友好的な対応をしてくれる【転生マスター】だといいのだれけれど……。

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