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第108話 赤ちゃんカニ人間の日常

 「(まずはお互いの背中の一番右上のはさみからね。それじゃあいくよ、アイシア)」


 「(はい、マスター)」


 「おんぎゃっ!」


 「ばあっ!」


 「おんぎゃっ!」


 「ばあっ!」


 僕達がスヴィェートさんの元で新たな転生を迎えてから約1週間が経過していた。

 

 普通の赤ん坊の成長速度ならまだベッドで寝ていることしかできない頃だが、僕とアイシアは既に上半身を起き上がらせるぐらいはできるようになり、今は座った状態で互いに向かい合っている。


 今回僕達が転生したこの人間と蟹のモンスターが融合した存在。


 その力を最大限に発揮する為に最も重要になるのが父親であるデルトゥーカさんから受け継いだ7つの鋏であると僕達は感じていた。


 特に背中についた6つの鋏はとても有用な戦術を生み出せると同時に限りなく扱いが難しいだろう。


 腕の太さに比べれば細く貧弱そうに思えるが、長くいくつもの節に分かれた肢で繋がれており背中から体の前側にまで伸ばすこともできる。


 僕とアイシアはこの6つの鋏を自在に使いこなせるようになる為互いの鋏をタッチさせる訓練を行っていた。


 タッチの度に発する赤ん坊の掛け声が僕達の赤ちゃん部屋に木霊する。


 「おんぎゃあっ!」


 「(よしっ!。遂に6つの鋏を10周連続でタッチできるようになったねっ!)」


 「(はい。両腕に加えてこの背中の6つの鋏を使いこなせるようになれば攻撃の手数においては他を圧倒することができそうです)」


 パチパチパチっ!。

 

「まだ生まれて1週間だっていうのにもうそんなことができるなんて凄いじゃないかっ!、ウルカっ!、アイシアっ!」


 僕達が6つの鋏の訓練を成功させると共に部屋の扉の方から拍手が鳴り響くともに共に歓喜の声が聞こえてくる。


 振り向くとそこには僕達と同じく蟹と人間が混じった姿をしたまだ幼い男の子がいた。


 僕と同じく顔の右半分から右腕に掛けてが蟹の形状をしたその男の子の名はダルカと謂い僕達の3つ上の兄さんだ。


 淡い色合いの金髪が穏やかで優しい雰囲気を漂わせていて、実際にもそのような性格をしていて弟と妹である僕達の面倒も良く見てくれる。


 今回の転生を迎えてからこれまでの間、今のような訓練を行いつつ目に入るものと耳に入るものから色々と情報を収集し今回の僕達の境遇についても大分把握することができていた。


 まず僕達が今回の転生を迎えた時代だが、前回『味噌焼きおにぎり』の連中によって無残な殺され方をしてから1週間も経過していないようだった。


 つまりヴェントやSALE-99『味噌焼きおにぎり』の連中達、そしてその支配下に置かれてしまっているPINK-87さん達もあれからほとんど変わっていない状況で存在しているだろうということだ。


 連中のアジトやその内部の構造についても以前の転生で大部分を把握することができているしいつでも乗り込むことができる。

 

 次に現在の僕達を取り巻くこの場の環境についてだが、まず両親がデルトゥーカさんとスヴィェートさんであることはもう確認が取れた。


 しかし残念なことに既に父親であるデルトゥーカさんは亡くなってしまっているらしい。


 スヴィェートさんとその従者を務めるリティシアの話を聞いていた限りではどうやら何者かによって送り込まれた刺客によって暗殺されてしまったようだ。


 もしデルトゥーカさんが勇者であることを理由に狙われたのだとすればこの次は自分が標的になるかもしれない。


 そう考えたスヴィェートさんは従者のリティシアさんと僕達の兄のダルカ、それから少数の護衛のみを連れて極一部の者にしか場所の知られていないこの山奥の屋敷へと身を隠し、僕達を出産することにしたようだ。


 身を隠す以上少数になるのは仕方のないことだが万が一敵の襲撃を受けた際戦力不足になることをスヴィェートさん達は懸念していた。


 そんなスヴィェートさん達の懸念が現実のものとならないことを願い、いざという時には僕達も早く戦力として加われるようになろうとの思いもあって日々の訓練を怠らないようにしていたのだ。


 「は~い、ウルカ~、アイシア~。今日もお乳を貰う時間がやってきましたよ~」


 「あっ、母さん」


 「あら、ダルカ。今日もウルカとアイシアのことを見守ってあげてくれてたの。あなたみたいな優しくて思い遣りのある子がお兄さんでウルカとアイシアもきっと喜んでるわよ」


 「うんっ!。でもそんなことより母さんっ!。ウルカとアイシアったら凄いんだよっ!。ついさっきあのいつも背中の鋏をタッチさせる訓練を10周連続で成功させたんだっ!」


 「まぁ、それは確かに凄いわね。だけどすくすくと成長してくれるのは嬉しいけど赤ん坊の内から訓練だなんて母親としてはやっぱり心配になっちゃうわ」


 「おぎゃあっ!、おぎゃあっ!」

 

 「おぎゃあっ!、おぎゃあっ!」


 「あっ、ウルカとアイシアが早くお乳をくれって言ってるよ、母さん」


 「あ~、ごめんなさいね~。今行くからちょっと待ってて~」


 先程訓練に熱中していた僕達だが母親であるスヴィェートさんがやって来ると普通の赤ん坊と変わらぬ態度へと変わり駄々をこねるように泣き叫んでお乳をせがむ。


 スヴィェートさんが乳房を差し出してくれるや否や物凄い勢いで母乳を吸い尽くしていく。


 んちゅっ!、んちゅっ!。


 「もうぉ~、そんなに夢中になってそんなに母さんお乳が美味しいのかしら~。一杯吸ってくれるのは嬉しいけどあんまり強く吸われたら母さんの乳首が痛くなっちゃうわ~」


 「(ふぅ~、訓練後に貰うスヴィェートさんのお乳は格別の味だね、アイシア)」


 「(はい。やはり訓練の直後に頂いた方が我々の肉体への吸収の効率も良いみたいですね)」


 「(そうだね。これからはなるべくスヴィェートさんがお乳をくれる時間に合わせて訓練を行うようにしよう)」


 訓練も大事だがやはり今の僕達の成長に最も欠かせないものはスヴィェートさんの母乳だ。


 訓練後の疲れた体にスヴィェートさんの母乳が染み渡っていき自分達の肉体が更なる成長を遂げていくのがハッキリと実感できる。


 勇者としての高いスペックを秘めた今回のこの肉体ならもしかしたら1カ月もしたら立って歩けるようになるのではないだろうか。


 早くPINK-87さん達を救い出しに向かいたいと思いつつ、僕達は『味噌焼きおにぎり』の連中に対抗する為の力をしっかりと身につけていく。

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