第101話 ターナとトド
「………」
余程激しい戦闘が繰り広げられたのか至る所の壁が崩れ落ち、死体が散乱するティアリス城の中を黙々と歩いて行く。
ベル達に気絶させられた僕が次に目を覚ました時には既にテネリタース教団との戦闘は終結してしまっていた。
戦いは僕達メノス・センテレオ教団の勝利で終わり、皆が祝杯をあげる中僕はひっそりと抜け出し戦場の跡地となった城の中を散策していた。
ターナやトド達がどうなったのかこの目で確かめる為だ。
正直確かめるまでもなくターナ達がどうなったかなんて予想がついている。
けれどもしかしたら無事でいてくれるかもという淡い希望をどうしても消し去ることができず、ターナや他の子供達が避難しているであろう地下のシェルターを目指して歩き続けた。
すぐに絶望に変わってしまうであろうことは承知の上で……。
「うっ……うっ……」
「(ターナさん……トドさん……)」
地下シェルターの扉を開けるとそこにターナとトド、他の子供達とそれを守ろうとした大人達の姿があった。
勿論最早息をして動くことのない姿となって……。
「ごめんね……皆。僕達の自分勝手な計画のせいでこんなことになってしまって……」
「(気持ちは分かりますがどうか自分を責めないで下さい、マスター。『味噌焼きおにぎり』の者達に対抗する為にも今回の件は仕方のなかったことです)」
「(アイシアの言う通りなのっ!。仮に僕達が任務を引き受けてなくたって『味噌焼きおにぎり』の連中はテネリタース教団を殲滅するつもりだったろうし落ち込んでいる暇があったら奴等への対抗策を考えるなのっ!)」
「(考えるなのっ!)」
「(無事任務を完遂したことでメノス・センテレオ教団内でのマスターの評判も高まりより高い地位が与えられるやもしれません。それで何か突破口が掴めるやもしれませんし今は前向きに考えなさって下さい)」
「そうだね……。こんな酷い目に合わせてしまった皆に少しでも報いる為に何としても僕達の手でメノス・センテレオ教団を打倒さないと……」
「やぁ。こんなところで一体何をしているんだい?、ヴァン」
「……っ!。ア……アズールさん……」
ターナ達の遺体を前に物思いに耽る僕達の元にSALE-99が姿を現す。
今の僕の発言を聞かれてはいないかと焦りを露わにしながら僕はそちらへと振り向いた。
「もしかして友達だったという子供達のことが気になって見に来たのかい?。少しの間共に過ごしただけの異教徒のことをそこまで気に掛けるなんて君は本当に優しい子だね」
「う……うん。異教徒ではあったけど皆良い子達だったからね。だけど異教の教えを信じてしまった以上こうなることは仕方のないことなんだよ。そのことはちゃんと理解できてるから心配しないで、アズールさん」
「ふっ……そんなこと言って本当は僕のことが許せないんじゃないかい。何だったら今ここで僕のことをぶん殴るぐらいはしてもいいんだよ。なんたって君は僕達の教皇にして神の子であられるヴェント様の弟なんだからね。多少の横暴はしても許されるよ」
「そ……そんなまさか……。メノス・センテレオ教団の最高幹部としてヴェント兄ちゃんを立派に支えてくれてるアズールさんに対してそんなことできるわけないよ」
「ふぅん……そうかい」
「(でも彼等の死に際の様子を聞かされてもそんなこと言ってられるのかな?)」
「(……っ!)」
「(確かターナとトドと謂ったけ?。君の友達だったという子は。殺す前に君の名前を出したら喜んで名乗り出てくれたよ)」
くっ……。
どうやら先程の発言は聞かれてはいなかったようだが、怪しまれないよう取り繕った会話をこなす僕に対しSALE-99は【転生マスター】によるテレパシーを用いて裏で話しかけてくる。
僕を挑発するような内容だが絶対に返事をするわけにはいかない。
返事をして僕が【転生マスター】だと自白するよう鎌をかけてきているんだ。
「(最後の最後まで君が本当に裏切り者だったのか僕に問い質して来てね。あんまりしつこかったら死ぬ前にハッキリと言い聞かせておいてあげたよ)」
「(……っ!)」
「(ヴァンは初めから君達のことなんて何とも思ってない。異教の信者共と友達になるだなんてあり得るわけないだろってね)」
ぐぅぅぅぅっ……!。
SALE-99の言葉にはらわたが煮えくり返る思いだが必死に感情を堪える。
ぶん殴るどころかこの場で八つ裂きにしてやりたい程だけどここで怒りを露わにしたところでターナやトド達の無念を晴らすことはできはしない。
「(その時の彼等の絶望した表情ときたら最高に哀れで溜まらなかったよ。どうやら向こうの方は裏切られても尚本気で君のことを友達だと信じていたみたいだね)」
「(………)」
SALE-99が挑発を続けるが僕は何も言わない。
何食わぬ顔で無視し続け【転生マスター】のテレパシーでなく普通に言葉を発して返事をする。
「さて……皆の生死も確認できてスッキリしたことだし僕はそろそろ皆のところに戻ることにするよ。モタモタしてたら折角の祝杯の豪華の料理をヴィンス兄ちゃん達に全部平らげちゃうからね」
「………」
これ以上鎌を掛けても無駄だと判断したのかヴェント達のところに戻ろうとする僕をSALE-99は何も言わずに見送っていた。
しかしこれでもまだSALE-99は僕が【転生マスター】だと疑うことを止めはしないだろう。
一体いつなればこいつの気持ち悪いストーカ行為から逃れることができるんだ。




