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ちやほやされるための努力は人に見せません

作者: 橘みかん

こんにちは、あるいはこんばんは!

橘みかんです。

今回は、主人公のキャラがほんの少し私自身と似ておりまして、こんなことないかな~と勢いで書いた次第です。ゆがみ方が私に似てるんですよ。主人公と違って私の母はめっちゃいいお母さんなんですけどね。しかも、なんでこんなにねじくれた性格になったかは不明なんですけどね。

私は鴻池舞子。


所謂お嬢様で、何でもできる、あこがれの人。

両親以外のみんなからちやほやされてるわ。

まあ両親にとっては跡取りである弟のほうが大事だからしょうがないわよね。


でもね、一つだけいやなことがあるの。


私は右足が動かない。

何をしてもみんな私に哀れみの情を抱いているとしか思えないの。


だから私、新しい自分に生まれ変わった瞬間とてもうれしかったわ。

健康、っていう条件をまず満たしているのだもの。



私は身分制度の厳しいこの異世界でド平民に生まれ落ちた。父は売れない作曲家で、母は男爵をパトロンにもつピアニストだ。


うちの生活はまあ普通くらい。

前世に比べたら笑っちゃうくらい貧相だけど、そんなに不満があるわけじゃないの。


だって、努力のし甲斐がありそうじゃない?


自分で言うのはどうかと思うわよ?

でも、ぶっちゃけ私には才能がある。

ほかの人の2分の1の努力で私は目的を達成できる。

そう自負しているし、そうじゃない分野にしても、絶対人に努力しているところなんて見せたくないの。


だってね、「え?すごい!」そういう人の顔が私好きなの。


「こんな奴に抜かされた」って悔しそうな顔をする人の前で謙遜するとき。爽快感がたまらない。


純粋にすごいね、ってちやほやされると、万能感に酔える。


つまるところ、私って至極性格が悪いのよ。

もうちやほやされるの大好き。


そのための努力だってなんだってしてやるわ。


そういう意識で、私は0歳を過ごした。

ええ、0歳の赤ちゃんに何かできると思う?

せいぜいにっこりするとか、そんなもんよ。


でも本能と生理的欲求に耐えることはできない。

普通におなかがすいたらぎゃあぎゃあ泣くし、おしめに垂れ流すわ。


しょうがないじゃない。


尊厳とか考えても無駄よ。

私は赤ちゃんなの。

これがスタンダードなの。



1歳になったわ。

別に大したことないわ。


3歳くらいまで普通に成長してきたわ。


あとね、この世界、異世界チートとか全然通用しなさそう。


まあ、努力する楽しみがあるからいんだけど。


うちってね、音楽一家なの。

話の流れ的にわかるでしょ?

私、めっちゃピアノを練習したわ。

それはもう、国王様の前で弾けるくらいには。


5歳の時に御前演奏に呼ばれたの。

緊張なんてしなかったわ。


かわいいって言われる笑顔を浮かべてただ一心不乱に弾いたの。

研究しつくした笑み。この私が死にそうになりながら練習したピアノ。


陛下にお言葉を賜って、さらには褒美までもらったわ。

もううれしくてしょうがなかった。

並みいる貴族たちの前でたかが平民の5歳の小娘が栄誉にあずかったのよ。

表情にこそ出さなかったけど、もう、うれしすぎて脳内炸裂してたわ。


ただ計算違いも起こったわ。

母が私の才能をねたんで虐待してきたの。

5歳児って逃げ場がないでしょう?

ちょっと途方に暮れたわ。


「死んでおしまいなさい。ミレーユ、お前なんて死ねばいいのよ。」


母は私へそう言って暴行を加えるの。


あ、ミレーユっていうのは私の名前ね。


すごくない?いくら自分の娘がちょっと優れてるからって、「死ね」まで行く?


私なら行かないと思うなあ。


もっと別の手段で心をぽっきり折るとか、そういうことなら考えるけどねえ。


母だって男爵をパトロンに持ってるでしょ?

私にパトロンなんていないのだから、もっと余裕を持ってもいいと思うのだけど。


まあいいの。

とにかく私は努力し続けるだけだから。


この世界ではすらりとしたしなやかな体を持つ人が好ましいとされるそうよ。

幸い、5歳児に体型も何もないけれど、それでも私は努力するわ。


幼児に筋トレは厳禁。

だから私はジョギングをするの。

毎朝誰よりも早く起きて1kmくらいだけれども、全力で走るわ。

そのあとは着替えて汗を拭いて、何事もなかったような顔で澄まして家族の前に行くの。

ジョギングは良い習慣よ。

健康にも、お肌にも。


母は私に食事を与えない。


鴻池舞子だった時...つまるところ前世の私だけど...も親に育ててもらった記憶なんてないから別に構わないわ。

親ってそういうもん、くらい思っちゃってる。


親からの無償で絶対的な愛情をもらい損ねた分、「ちやほやされるのが好き」っていう今の自分になったんじゃないかしら、と思うの。

性格が歪んじゃったの。うふふ。


いいじゃない、誰にも迷惑かけないし。


ちょっと私自身むなしいだけよ。


もう今は、気にならないわ。


私はすきっぱらを抱えて一人でお出かけするの。

近所の豪商、アルノルドさんの家よ。

私は彼のためにピアノを弾き、彼は私に報酬をくれる。

陛下から褒美をいただくほどの腕前だもの。

みんな私の演奏を聴きたいと思ってるわ。

うぬぼれでも何でもない、事実よ。


アルノルドさんからもらった報酬で飢えをしのぎ、残りを貯金する。

貯金額はまだまだ足りない。

あと五年で、もっと貯めないといけないの。

でも、評判を落とすような稼ぎ方はできない。

たまにしか姿を現さない、神童がピアノを弾くから価値があるの。


5歳の一年間はそうやって過ぎたわ。


でもね、最近、自分の容姿に気づいたの。

私、結構かわいいのよ。

紫の瞳に金の髪の毛。

磨けばもっと光るわ。

瞳と同じ色のリボンを買って、左右から持ってきた三つ編みをまとめたらすごくかわいかった。

リボンは高価すぎて、一本しか買えなかったからツインテールは夢のまた夢ね。


6歳になってしばらくしたとき、私はまた城に呼ばれ、御前演奏をしたわ。

王太子殿下9歳のお祝いで、同年代の優れた特技を持つ人間を集めたとか。


平民なんて私しかいなかったわ。

ぜんぜんちやほやされなかったの。

けなされて、けなされて、もう心も体もボロボロだった。


思惑があることは理解できる。

王太子殿下の婚約者はまだ決まっていないから、貴族連中は自分の娘を押し出すので必死。

そんなところに空気を読まずにやってきた平民なんて、目障り以外なんでもない。


ピアノを演奏し終え、与えられた控室に行ったら、パーティ用に用意したドレスはびりびりに破かれていた。

お色直しをして改めてパーティに出ようと思っていたのだ。

書き込みをして大事に大事に扱っていた楽譜は見るも無残だった。

友人が「頑張ってね」と言って渡してくれた楽譜入れの鞄には泥水がかけられていた。


必死にピアノを弾いて買ったドレス。

おばちゃんたちが作ってくれた。

思入れのある一着ではある。

これではパーティに出席はできまい。


毎日毎日練習して、部屋で必死に書き込んだ楽譜。

はねるように...明るく...アップテンポで...フェルマータ...

前世の音楽記号を用いて、表現を書き加えた。

私にしか弾けない一曲に、どれも完成させたつもりだ。


こんな性格の悪い私の友達になってくれて、私を応援してくれて、王城へ行くと言ったら鞄を縫ってくれた。


「王城行くのにこの鞄じゃ恥ずかしいよね。だからさ、普段の時に使ってくれたらいいの。でも、応援の気持ちを伝えたくて...私は何にもできないから...」


もらったとき、涙が出るほどうれしかった。

必死に縫ってくれた鞄だ。

彼女の家は鞄職人をしている。

たくさん練習して作ってくれたのだろう。


「持ってくわ。王城に持ってく。」


鞄をひとなですれば、私が使いやすいように考えてくれたことが手に取るようにわかる。


「この鞄と一緒に行って、帰ってくるわ。私は楽譜入れに、あなたが作った鞄以外を使わないわ。」


「ミレーユ...」


「心の底から本当にうれしいのよ。こんな私に、あなたが鞄を一生懸命作ってくれて...」


「ひどい...」


部屋の現状を見て、なぜか涙が止まらなかった。

やるべきことはわかってる。


誰か大人を呼んで、片づけて、可憐な私を印象付けてお暇したらいいのだ。


なぜだろう。


なぐってやりたい。


鞄に泥をかけたやつを、殴ってやりたい。


このままパーティに出て、泣きわめいて、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。


ああ、と唐突に理解した。


私は、今、激怒しているのだ。


ちやほやされたい。

それだけしか思っていなかったけど、今、友人の優しさを踏みにじられて、激怒しているのだ。


その感情を理解した瞬間、私の頭は冷静になった。


「そう。そうなのですね。」


さあ、とりもどせ。


いつもの私を、取り戻せ。


私は微笑んだ。


私の復讐を、ご覧くださいな?


私は控室の扉を開けて、ほろほろと涙を流した。

廊下に配置されている騎士が一人、事情を聴きにやってきた。

私はその騎士に縋り付いて、部屋の惨状をつっかえつっかえ話したわ。


たかが平民の訴えだ。

相手にされはしまい。


けれど、今は何をやっている?

王太子殿下の誕生日パーティよ。

国王が殿下のお祝いのために呼んだ私へ危害を及ぼすものがいた。


それはきっと、貴族の奴らの心に残るだろう。


「なんたることだ。」


騎士がうめいた。


「代わりのドレスを用意しよう。鞄も楽譜も、責任をもって王室御用達でよいものを...」


うれしいはずだった。

すごくいいものを、一生かかっても買えるかわからないものを身に着けられるのよ。


「いりません。」


思いのほか硬い声が出た。


「町のおばちゃんたちが私に似合うドレスを一生懸命考えて作ってくれたんです。予算内で、一番素晴らしいものを。楽譜はずーっと長い間片時も離さなかったものです。暗譜してますからいりません。鞄は友人が作ってくれたんです。どれほど素晴らしいものでも、替えのものはいりません。」


「しかし...」


「ここを片付けるのを手伝ってくださる人を呼んでいただけませんか?先ほどは取り乱してしまい、申し訳ありません。もう大丈夫です。ありがとうございました。」


騎士はしばし迷ったのち去っていく。


私は一人自己嫌悪に浸ったわ。


なにをやっているんだろう。

私は可憐で、なんでも自分の武器にできて、賢くて...


復讐も満足にできないような人間だったかしら。


自分がランクアップできるなら、すぐさま私は乗り換えるではないか。

何を血迷ったの、私。


でもね、やっぱり、だめだわ。


あんなにやさしくしてもらって、それを踏みにじるようなこと、言いたくないの。


でもね、一番悔しいのは、みんなの気持ちを駄目にしてしまった、私の詰めの甘さよ。


おバカな私。


泣く権利なんて、ないのよ。


なのにどうして、涙がとまらないのかしら。


悲しくて、悔しくて...やりきれないなんてぬるい気持ちじゃあないわ。


ほんとうに、ひどいわ。


騎士が戻ってきたとき、私はまだ泣いていた。

騎士は私の背中をそっとさすってくれていた。

私の気持ちをわかってくれているような気がして、少し悲しみがゆるんだ。


騎士が連れてきたのは侍女たちのよう。

彼女らはてきぱきと動いている。


「ミレーユ様、元通りとまではいきませんけれども、ね?」


その声にのろのろと顔を上げると修復されたドレスを侍女が指し示していたの。

生地が足りないところにはさりげなくリボンやレースをつけてリメイクされている。

できる限り変えないように、それでもおしゃれになるように苦心してくれたのでしょうね。


鞄は丁寧に拭かれ、磨かれていたわ。

縫製がしっかりしているから大丈夫だって侍女が言ったの。

絶対ピカピカにしてみせるって。


心の底からうれしかったわ。


すごく厄介なわがままを言ったのに、みんなが私の願いをかなえてくれたの。


何もしていない私に対して彼女たちは手助けしてくれたの。


城へ呼んだ客人である私への償いなら、金貨でも持たせておけばいいだけなのに、みんなで私の者を直してくれたの。


何度もお礼を言ったわ。

そうしたらね、侍女さんはね、笑って言うの。


「大切なものですもの。わたくしたちで力が及ぶなら、なんでもいたしますわ。」


こんな人たちにははじめて出会ったと思うの。


無償の愛ってなんて暖かくて、優しいんだろうって、泣けてきたの。


いつのまにか騎士はいなくなってて、侍女たちが私にリメイクしたドレスを着せてくれたの。


とてもうれしかった。


してやったりの喜びじゃなくて、感謝の喜びだった。


軽く化粧もしてもらったところで、先ほどの騎士が戻ってきたわ。


「会場まで、エスコートを務めさせていただきます。」


私は感謝の意味を込めてくしゃりと笑って、その手を取ったわ。


お互いに小さい手。


ん????


小さい手?


私は騎士の顔をまじまじと見つめてみたの。


だってね、私より2,3歳年上かどうかなの。その手のサイズは。

あんまりにも行動が大人びてるから大人だと思ってたけど、子供なのよ。


しかもどこかで見た顔...?


どうせアルノルドさんの家であったのね、あの家は出入りが激しいから。


そう考えてそれ以上の思考をやめたの。


あとで死ぬほど後悔したわ。


なんでって?

教えてあげようじゃない。


私は推定騎士に手を引かれて大広間に入ったの。


そうしたらすごい目線を感じたわ。

もう視線じゃなくて目線よ。

貫通してたわ。

ちやほやでもなく悪意でもなくわけのわからない目線なの。

ちょっと不思議な気持ちになったわ。


「で、殿下。その方は...平民のミレーユではございませんか?」


口髭のおじさんが騎士に話しかけてきたの。


私が冷や汗をかいたのは言うまでもないわよね?


うちの王国に殿下って呼ばれる男の子は一人しかいないの。

お名前も口にするのも恐れ多いほどの神童。

私みたいな似非神童とは違うまじの神童なのよ。

セドリック・エル・フリッツ王太子殿下。


つまり、私の横にいるのは王太子殿下よ。


私はそんな王太子殿下に縋り付いて泣いて、こき使ったのよ。

あまつさえ反論もしたの。


ああ、さらに絶望的なことにも気づいたわ。


考えてみてよ。

私は殿下の誕生日のお祝いに招かれているのよ?

そんなやつが殿下のお顔すら覚えてないなんて「祝う気あるん?え?」って感じでしょ。

いや、もう、首が2,3回飛ぶ未来しか想像できないわ。


「ああ、大臣か。ミレーユ嬢とともに父上に挨拶をしようと思って。道を開けてくれるかな?」


大臣と呼ばれた口髭おじさんは、嫌そうに、されどさっと道を開けたわ。


ああ、死刑への道筋が開けた。

ああ、死刑宣告を受け、処刑日時も決まった気分。

気分というか決まってる感あるけれど。


父上に挨拶?

国王陛下が私が犯した罪を決定すると...?


まず口の利き方が不敬罪よね。

考えれば考えるほどアウトよね。うん。

しかも許可なく王子に近づいた...どうしよう...大逆罪も付け加えられるかもしれない...。


さようなら

私の首と胴体。


自分の犯した罪から逃げることはできないわ。

逃げたいとも思わないわ。


ちっぽけなけれども大切な、私のプライド。

私が失敗したとき、その報いは潔く受ける。


みっともなく座り込んで茫然としたい自分を叱咤しながら、騎士、いや、殿下に手を引っ張られてついて行った。


そうよ。

エスコートみたいな形をとってくれてとても素敵ね。

うん。

死ぬ前の思い出作りね。

うんうん。

「私、王太子にエスコートされたことあるの。」

うん、結構すごいんじゃない?

他の人の威を借りるのはちょっと私の主義と違うけど、結構いんじゃない?

殿下のエスコート。

あは。

やばい、笑けるわね。


国王陛下の御前についた。


私はカーテシーをする。

不断の努力によって磨き抜かれたカーテシー。

そのへんの貴族令嬢に負けているつもりはないわ。


「セドリック、そのご令嬢は...。」


顔を上げないままじっと耐える。

ここで上げたら、うん。

罪状がもう一個ふえるだけね。


「父上、彼女なのです。」


「...そうか。して息子よ、どうするのだ。」


「彼女に対する一切の権限を賜りたく存じます。」


まじで?

言い直すわ。

まじでございまして?

9歳の王子に裁かれて私の人生終わるの?

彼は神童よ。

でもね、それでもたんなる子供なのよ!?


「しかし彼女は平民だが。」


陛下の重々しい声が響く。


平民は普通、王族が直々に裁いたりしないの。


適当な下級官吏が適当に令状作って終わりなの。


「アルノルドを後見につかせましたので、ご心配にはおよびません。」


そんな...

私をさばきたいがために豪商のアルノルドさんを私の後見に?

というかいつの間に?

もしかして、私の処刑は、殿下の中で昔から確定していた...?

でも、なぜ...?


「よい。お前に任せる。セドリック、くれぐれも無理強いするでないぞ。」


「父上、申し訳ありません。もう十分無理強いしてます。」


「...そうだな。...ミレーユ嬢、顔を上げよ。」


この時やっと私は普通に立つことができた。


もし私に明日があるのなら明日は筋肉痛だと思う。


「国王陛下に拝謁いたします。」


最敬礼をする。


「楽にせよ。しかし、災難なことだな...よきにすごせ。このままセドリックの執務室で事務手続きでもするがよい。」


「お言葉賜り恐悦至極にございます。」


もう一度最敬礼をしたタイミングで殿下に手を引かれ、私たちは無言で殿下の執務室へ歩いた。


処刑の事務手続きって容疑者と一緒にやるのね。


しかも、容疑者と殿下が一緒に歩いてて誰も止めないのね。


殿下がお強いからかしら。



執務室は驚くほど汚かったわ。


私は女子力を演じるために部屋は綺麗にするから、眉を顰めそうになったの。

でも、殿下の執務室は殿下だけがいるわけじゃない。

官吏が書類をもって出たり入ったりするのだから、汚くなるのかもしれないわ。


そんなことを考えていたら、羽ペンと書類が差し出されたの。


さすがは王族。

平民は字が書けないなんて、ひとかけらもおもってないのね。

普通の6歳児は読み書きができないって、知っておいてほしいものだわ。

この世界の字、そこそこ苦労したわよ?


どうせ処刑後の遺体の処理とか墓とかそんなのの同意書だろうと思ったけど、ちゃんと読むことにしたの。


はじめ、私は目を信じなかった。


次に、自分の正気を疑ったわ。


「申し訳ありません。書類についてご説明いただけますでしょうか?」


書類から顔を上げても殿下の姿が見当たらない。


「ミレーユ嬢。」


下から声がしたので下を見ると殿下がひざまずいていた。


私の手を取って口づける。


「僕と婚約してくれないだろうか?」


ああ、これはきっと白昼夢なのね。

それか死んだ後の出来事ね。


そう思って私は頷き、サインをしたけれど、夢はいつまでたっても冷めなかったわ。


18歳で成人するまで、溺愛され続けたの。


アルノルドさんの家で私を一目見てから、私に興味を持ってくれたそうなの。


私を見てくれる人っているのね。


ピアノを通して人脈をあらゆるところに広げて置いたおかげで、殿下との結婚は驚くほどスムーズだったわ。


私の努力のおかげね。


殿下は私を信じて私を愛してくれるの。


だから私も、この世界を愛しているわ。


ちょっと溺愛については恥ずかしいから、心の整理ができてからお話しするけれど、まあ、楽しみにしてほしいわ。


殿下の愛情表現で、私の心はとかされたの。


この世界には愛情深い人がたくさんいるのよ?


驚くほどひどい人もいるけれど、私は愛と感謝に生きたいわ。


愛と感謝を音楽に託して、世界を彩りたいの。

お読みいただきありがとうございます。

まあ人間性格色々ありますけど、個性だと思ってもらえればうれしいですよね。

この主人公の性格全否定されると私ギャン泣きしますんであんまりディスらないでくださいね笑

ちなみに、なんで溺愛が18歳までかというと、主人公18歳の時に悲劇が起こる。っていう示唆です。

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