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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

涙ほど役に立つものはない。

作者: いなばー
掲載日:2022/12/13

 涙ほど役に立つものはない。

 胸を締め付ける悲しみを身体の外へと流してしまえるのだから。


 そう思っていたのに、恋が実らなかった今の悲痛と混乱を、洗い流してはくれなかった。

 いつからあるのか思い出せないほどの恋心。


 遥は、「これからも友達なのは変わらないよ」そう言ってくれた。


 残酷なようにも聞こえるその言葉は、わたしを思い遣って出てきたもの。


 わたしが、ひとりでは何もできない奴だと知っているから。

 告白さえも、想い人から促されないとできない奴だから。


 遥が恋をする相手は男の人で、女のわたしをそういう目で見ることはできない。

 そのことは、知り合った小学生の頃から分かっていた。


 十年近く側にいる間、遥は何度も恋をしている。

 誰からも好かれるのに、実らない恋の方が多かった。


 失恋した彼女を慰めるのがわたしの役目。

 そのはずが、中学の半ばくらいから恋の話をしなくなった。


 わたしの恋心に気付いたからだ。


 なのに、気付かれたとは思いもしないまま、わたしは友達という地位に安住しつづけた。

 その友達が、どれほど胸を痛めているのか知りもしないで。


 遥はいつもわたしを助けてくれた。

 想いを伝えてほしいと促したのも、わたしが前へ進めるよう願ってのこと。


 それは受け容れられないと、はっきりと伝えるのは決して楽なことではない。

 わたしのために苦しむ道を選択してくれたのに、わたしは涙で応えてしまった。


 涙ほど楽なものはない。

 自分の悲しみを一方的にぶつけてしまえるのだから。


 涙ほど卑怯なものはない。

 それを止められない言い訳をしなくていいのだから。


 遥は泣きやまないわたしの頭を撫でつづけてくれた。

 下唇を噛み、目尻を潤ませ、だけれど一滴たりとも頬を滑らすことなく。


 遥はつなぎ止めようとしていた。

 ふたりのこれまでを大切に想ってくれている。わたしには不相応なくらい。


 わたしはなにも失っていないと、ようやく気付けた。

 ふたりの結び付きは、お互いが求めるかぎり在りつづけるのだ。


 ようやく涙が止まったわたしの頬を、遥が両てのひらで拭ってくれた。

 顔中の力がどこかへ行った、いつもの無防備な笑みで。


 涙ほど役に立つものはない。

 胸をちくちくと刺す、恋心の尖りさえ溶かしてくれる。


 溶けてちいさくなった恋心なら、胸の奥にそっと仕舞えそう。


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