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天真爛漫おてんば娘は異世界を自由気ままに満喫したい  作者: cvおるたん塩
第一章 貴族の生活編
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4話 はじめての王都

シエラにいっぱい食べさせてあげたい

 知らない天井だ……。

 どうやらいつの間にか王都について、宿で寝ていたらしい。我ながらよく寝たものだ。全く気付かなかった。


「おはようございます、お嬢様」

「おはよう、セナ……」

「よく眠れましたか?」

「うん、寝た……」


 何ならまだちょっと眠い。前世でもこんなのはありえなかったくらいには眠い。


「それにしても、本当に宿でよかったのですか?」

「うん、一回こういうところにも泊まってみたかったから」


 そういえば出発前に「宿に泊まってみたい!」と私がわがままを言ったんだった。さすがに一日だけという縛りはあるが。個人的にはこういう質素な感じのほうがしっくりくる。まあベッドの質はいまいちだが。ただ、おばあちゃん家の一室という雰囲気で嫌いじゃない。


「今回は護衛を連れているので問題ないですが——」


 また長い説教が始まりそうだ。今のうちに半分ほど寝るモードに移行しておこう。

 こうして無事長い説教も乗り越え、外に出ることになった。

 初めての王都だ、ワクワクする。


「おー、都会だ!」

「王都ですからね、この国で一番発展しています。それと、こういう場ではしっかり貴族としてのふるまいを忘れぬよう」

「そ、そうだった……」


 メイドに手を引かれた貴族の少女がそこらにいる親子のように歩いているのだ。当然注目されるし、振舞には気を付けなければいけない。手はつないでるけど。


「そうだセナ、まだ騎士団に行くのは明後日だし観光したいわ」

「そうですね、それではいろいろ回りましょうか」


 王都にはどんなところがあるんだろう。ゲーセンはまああるわけないか。けど、娯楽施設はそれなりに期待できそう。あとはいろんな店で料理を食べたり、広場でゆっくりしたり、冒険者ギルドで冒険者も見てみたい。とにかく、異世界っぽいものをたくさん見たい。


 まだセナと手をつないでセナが知っている場所に向かっている途中だが、正直王都の景色を見るだけでも結構楽しい。まさにネトゲやアニメで見た景色といった感じで、それを五感で体感できるのだからそれはもうテンションが上がる。


 エイオス領とはまた少し違った建築様式、様々な種族、店、そして数人の冒険者グループがちらほらと、もうまさに異世界だ。

 エルフやドワーフ、奴隷の恰好が多いが、獣人も少しはいる。この辺りも実際に見たのは初めてだが、セナに教えてもらった通りだ。こうして実際に見ると、さらに興味が湧く。獣人の奴隷とか一人?一匹?くらい買ってもいいかな。さすがに怒られるか。でも、毎日一緒に過ごして好きな時にモフモフさせてくれる獣人が身近に一人くらいいたっていいと思うんだ。


「お嬢様、楽しそうですね」

「勉強しただけで実際に見たことがなかったものがたくさんあるから、歩いているだけでいろいろ興味をそそられるの」

「さすが、お嬢様は好奇心旺盛ですね」


 絶対言わないけど、だって心は異世界人だもの。この世界のことならなんでも興味があるし、いろいろ知りたい。

 そして、街のあらゆるものを見ながら数分、まず最初に冒険者ギルドに着いた。

 セナ曰く、ここでご飯も食べられるらしい。


「どうも、お久しぶりです」

「あらセナ隊長、お久しぶりです」


 セナとこのギルドの受付嬢はどうやら知り合いらしい。セナ隊長と呼んでいるあたり、この人も親衛隊関係の人なのだろうか。


「ああ、それとこの方、シエラ・エイオス様です」


 と、二人のことを考えていると、セナが受付嬢に私の事を紹介した。


「シエラ様、初めまして、ギルドの受付嬢をしているニーナと申します。どうぞお見知りおきを」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「それで、今回はどのような用件で?」

「お嬢様が王都を見て回りたいと言うので観光しようかと。それと、ここには昼食もかねて」

「そうでしたか。ではあ、シエラ様が満足なさる料理を出さなければいけませんね」


 ほう、それは楽しみだ。豪華な肉料理を期待しよう。


「それでは、あちらに座って待っています」

「はい、それではおすすめのメニューを急いでお持ちいたしますね」


 冒険者ギルドで出る料理、楽しみだ。やはり冒険者ギルドなのだから丸焼き系の料理や見たこともないような大きな魚、私はまだ飲めないけど酒やビール、あとは狩ゲーの食事シーンに出てくるような料理も食べてみたい。

 想像しただけでよだれが出てくる。


 そんな風にワクワクしながら待っていると、ちょうど昼時で冒険者が集まってきて、私たちは見事に注目の的になってしまった。


「なんでこんなところに貴族がいるんだ?」

「それも、あの娘とメイドだけだよな? 大丈夫なのか?」

「まあ何かあったときは俺たちもいるし、ここなら逆に安全だろ。あいつらが戻ってこなけりゃな」

「がっはっは、確かに、あいつらが帰ってきたら大変そうだ」


 あいつらとは誰なのだろう。大変そうって、面倒ごとは嫌なんだけど。


「てか、あのメイド……」


 と、あいつらの話題が出て間もなく、今度はセナの話題に移った。


「なんか見覚えあるな」

「あれ、親衛隊初代隊長のセナだ」


 やはり、親衛隊の隊長だったというだけあって、冒険者たちにも名が知れているようだ。そんな有名人に魔法や礼儀作法を教わっている私、なかなかに幸運なのでは。


「うわー、話しかけたいけど迷惑だよな」

「俺も、実はファンだったんだよ」

「おいおい、誰か言って雰囲気作って来いよ」


 小声で話しているのだろうが、全部聞こえている。

 苦笑いしながら冒険者たちの話を聞いていると、セナが珍しく不機嫌そうにため息をついた。


「どうしたの?」

「いえ、久々に私が注目される感覚にどうも慣れなくて」

「有名人も大変なのね」


 前世の友人に一人有名人がいて、一緒に遊びに行ったときなど毎度のように注目されて疲れると言っていた。それはこの世界でも同じなのか。


「まあすぐに慣れますし、ゆっくりご飯を待ちましょう」

「そうね、対応なんてしても大変だろうし」


 セナのマネージャーみたいなことをするのは嫌なので、今は空気になろう。近づいてきても目を合わせない。話しかけられても適当にあしらう。というかそもそも話しかけられないように気配を消す——というのも、どうやら無駄になったようだ。


「おうおうおう貴族様がどうしてこんなところに居んだ?」

「うわっ、あいつが帰ってきちまったよ」


 どうやら、あいつが帰ってきたらしい。これがあいつか。いかにも反貴族という顔をしている。ガタイもいいし、強面だし、絡まれたくない。睨まれたらちびっちゃう。が、貴族として粛々と対応しよう。


「少々予定より早く王都についてしまったので、予定の日まで観光しているだけですわ」

「へぇ、平民を嘲笑いに出も来たのか?」


 めんどくさい捉え方するなこの人。


「いえ、平民とは言え国を支える一員、そのどこに嘲笑う要素があるというのですか?」

「へぇ、ちっこい割にはなかなかわかってんじゃねぇか」


 あっさり丸め込めたが、ちっこいとは無礼な。ああは言ったけどこれでも私は貴族なんだからその辺もう少しオブラートに包めなかったものか。貴族じゃなくてもちょっと不快。


「んで、本音は?」


 建前というのは見透かされているようだ。まあ別に本音を言っても問題はないだろう。


「昼食を取りに来ただけですわ」

「ええ、ただお嬢様の観光もかねて昼食を取りに来ただけです」

「昼食ねぇ、貴族様の肥えた舌に合うものなのかね?」


 ほんと無礼な奴だなこの男。いったい私をなんだと思っているんだか。というか、もしかして貴族って意外とイメージが悪い?


「おいガラン、その辺にしとけよ。首落とされるぞ」

 この無礼な男、ガランというのか。この程度で斬首刑にする気はないが、確かにお仕置きくらいはしたい。貴族平民以前に態度が悪すぎる。しかし、煽ってくるだけで特に手を上げる気配はないあたり、ただ貴族を嫌っているだけなのだろう。それなら特に問題もなさそうだ。しかし、セナはそうでもない。ガラン、大丈夫かな。


「ガラン、そろそろその口を閉じねば指の数本は覚悟してもらいますよ」

「んなっ、メイドのお前……セナか!」

 ガランがセナに気付いたとたん、一気に顔色が悪くなった。セナって有名なだけじゃなくて実はすごい人だったのか?


「お嬢様の前であまり惨いものは見せたくないので、ここはどうか大人しく引いてくれますか?」

「ちっ、わーったよ。おい、酒と肉、あとあの貴族にキングロークボアの肉だ!」


 セナがいるからか、大人しくなるどころかキングロークボアの肉なるものを奢ってくれるようだ。なんやかんやでいい方に動いたみたいでよかった。


 それにしても、セナって本当にすごいんだな。まさかあの明らかに強そうなガランを言葉だけで大人しくさせて、キングロークボアの肉まで奢らせるとは。本当に何者なんだろう。セナがしゃべらないのだからあまりこちらから詮索しないほうがいいのだろうが、どうしても気になってしまう。


「時が来たら、お話します」

「あれ、心読んだ?」

「いえ、見ていればわかりますよ」


 セナのほうを見ているのがバレバレだった。


「貴族のお嬢さん、セナさん、どうかガランのことは——」


 と、今度はさっきひそひそ話していた男の一人がガランのことを謝りに来た。


「キングロークボアの肉で帳消しです。あの程度で腹を立てているようでは、貴族など務まりませんわ」


 そう、私は寛大なので、肉で許すのだ。そrねい、貴族の威厳もいいけど、強気に出すぎて悪いうわさが広まるのも避けたい。そもそも貴族が存在する社会なら相手が無礼を働いた時点で多少の罰を与えても問題はなさそうだが。


「ありがとうございます。我々からもガランには厳しく言っておきます」

「おい、なんでお前がそんなへこへこしてんだよ!」


 あんたのせいだよ。キングロークボアの肉を奢ってくれるとはいえ、もう少しわかりやすく反省してもいいと思うんだけど。


「ほんっとにすみません」

「大変そうですね……」


 こうして無事まるく? 収まって少し経ち、ようやく料理が運ばれてきた。


「お待たせしました! ワイバーン肉に焼き飯、ドラルアジュースにグラディオン酒。そしてキングロークボアの丸焼きです!」


 まさに狩ゲーで出てくるような料理だ。大きなワイバーン肉にまさかの焼き飯、ドラルアというフルーツで作ったらしいジュースにグラディオン酒、この酒は多分グラディオン王国の伝統的な酒とかそんな感じだろう。にしても、まさか焼き飯があるとは。まあこういう偶然くらいならあるか。そんな偶然より、やはり味だ。


「いただきます」


 みんなの前なので、なるべく上品に食べよう。


「ん!」


 これはおいしい。ワイバーン肉は少し硬いが、味付けが素材の味を生かしているし、噛んだ時に出る肉汁も最高だ。焼き飯もなんだかなつかしさを感じる味だし、ドラルアジュースも炭酸飲料のような感じで、なんだか前世のクリスマスパーティを思い出す。


 キングロークボアの丸焼きも皮がパリッとしていて、中の肉はロークボアとは少し違う野性味あ

ふれる味を感じる。これ、上品に食べるよりほかの冒険者のようにガツガツ食べる方が正しいのでは。あー、誰かこうやって食べるんだって言ってくれないかな。そうすればそれに乗って楽しく食べられるのに。


「おいおい、こういうのはな、そんな上品に食うんじゃねぇんだ。こうやって食うんだよ」


 ナイスガラン! 私に見せつけるように、ガツガツ食べている。これに便乗して私ももっと気楽に食べよう。セナも私が考えていることを察した上であえて何も言ってこないようだし。


「なるほど、それでは——」


 馬車旅一日目の夕飯のように、豪快に。肉を頬張り、焼き飯を頬張り、ドラルアジュースを飲み、キングロークボアの丸焼きにかぶりつき。


「ガハハッ、うまいじゃねぇか! そうだ、こういうところではこう、豪快に食うのが作法なんだよ」

「はぁ、まあ冒険者を知るという事も大切ですからね。しかし、ほどほどにしてくださいよ」

「わーってるよ」「わかってるわ」


 私もガランも肉を持ちながら返事する。それを見て、セナは頭を抱えるが、もう考えるのをやめようという雰囲気で再び肉に手を付け始めた。

 にしても、なかなか減らないな。


「ねえセナ、この量、二人で食べきれるかしら?」

「そうですね、頑張って半分といったところでしょうか」


 頑張って半分か。残すのももったいないし、ちょっと持って帰れないかな。


「お嬢様、お持ち帰りはダメですからね?」


 またもや心を読まれていた。ダメだったか。


「でももったいないわ」

「なら護衛を呼びましょう」


 そう言うと、セナは指を鳴らした。それとほぼ同時に、冒険者ギルドに護衛の騎士たちが入ってきた。ずっとついてきていたようだが、全く気付かなかった。私が気にしてなかっただけなのか、騎士たちにストーカーの才能があるのか。


 騎士たちが入ってくると、何かあったのかと少しざわついたが、騎士たちが席に座ったのを見て、再び明るく賑やかなギルドに戻った。まあさっきガランがあんなことを言っていたのだ、突然騎士が入ってきたら怖いだろう。


「この量です、皆さんもどうぞ食べてください」

「よろしいのですか?」

「ええ、むしろ食べてもらわないと困ります」

「なるほど、それではいただきましょう」


 さすが騎士達、数名来ただけで料理の減り方が一気に増した。

 こうして騎士が救援に入ってからはものの数分で間食し、私たちは代金を払ってギルドを出た。なんだかんだ言って最後はガランも「また食いに来いよ」なんて言っていた。ちょっと怖かったけど、なかなかチョロい男だ。というか、根はいい奴なのかもしれない。


「次、服が欲しい!」

「服ですか……確かに、街の観光をするならこちらで調達したほうがよさそうですね」


 そう言うことではないが……納得してくれたようだしまあいいか。


「それでは、いい店があるのでそちらに向かいましょうか」


 やっぱりセナは王都に詳しいようだ。さすがは元親衛隊隊長だ。

 セナの案内で、少し遠回りにはなったものの、ついでにアクセサリーや武器も買えた。ちょっと無駄遣いしてしまったかな。


「ここです、が……すでに荷物が多いですね。まあ男どもに荷物持ちをさせましょうか」


 やはり男は荷物持ちか。まあせっかく護衛としてついてきているんだから、護衛の一環という事で荷物持ちを頼むとしよう。護衛と全然関係ないけど。


「よーし、買うぞー!」


 張り切って選ぼう。見た感じ結構おしゃれな服が多そうだし、これはなかなか選び買いがありそうだ。前世ではそもそも見かけすらしなかったような服がたくさんある。私服として着られるような服から、正直コスプレにしか見えないような服までいろいろある。でもこの世界ならコスプレっ

ぽい服でも堂々と着られるんだよね。


 このちょっと質素な服に魔法使いが着てそうな可愛いローブ、意外とおしゃれなミニスカートにジーンズっぽいものもある。他にも別エリアに意外と可愛い下着やタイツも売っている。意外と衣類のバリエーションが多くて選ぶのが楽しい。


「あの、お嬢様、この量は……」

「え、うわぁ、いつの間に!」


 服選びに熱中していると、いつの間にかバランスを崩して落としてしまいそうなくらいの量を抱えていた。


「まあこの程度までならいいでしょう。ただ、これまでにしてくださいよ」

「えー、まあ……わかったわ」


 他にも欲しい服はあったけど、これで会計しよう。


「大銀貨八枚になります」


 うわ、高い。そういえば値段とか一切気にせず選んだな。この程度なら私も持ち合わせているけど、ちょっと気が引ける。自分で欲しくて選んだものだからきっちり支払うが。


「お買い上げ、ありがとうございました!」

「さて、それでは荷物持ち、よろしくお願いしますね」

「セナ隊長……」

「頼みますよ」


 頼んでいるだけなのに、断れない圧力を感じる。

 セナの頼みだからか圧力に屈したのか、騎士達が武器やアクセサリーも含めて荷物を持ってくれた。メイドと手をつないで歩く小さな令嬢、そしてその後ろには荷物をもって歩く騎士。なかなか異様な光景な気がする。もし騎士がフルフェイスの鎧だったら本当にシュールだった。


「いやー、買った買った。みんなも荷物持ちありがとね」


 宿につくと、騎士達は私の荷物を部屋に置き、各々の部屋に戻った。


 にしても、さすがに今日はいろいろ買いすぎたかな。異世界だし収納魔法みたいなものもあるのかなと思ったけどそういうのもなさそうだし、馬車の移動じゃなかったらなかなか荷物運びが大変そうだ。いっそのこと自分で魔法開発でもしてみようかな。もし出来るとすれば、魔法で異次元の扉を開いてそこに放り投げるとかそんな感じだろうか。まあそれを考えるにはそもそも知識が足りないし、もっと勉強してからだな。


モンハン飯作ってくれる人募集中です(モンハン飯の画像見ながら書いてた)

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