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天真爛漫おてんば娘は異世界を自由気ままに満喫したい  作者: cvおるたん塩
第二章 アキツ旅行編
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22話 剣と魔法のある世界 1/2

吊り橋効果なんてないか(´・ω・`)

 出発当日、町周辺の遺跡——紅桜深星珠の遺跡にて、私たちは冒険者が集まるのを待っていた。すでに私たち含め五パーティー集まっている。全員で六パーティー、二十六人来るらしい。Aランクの冒険者が集まっているというだけあって、歴戦の猛者といった風貌の冒険者たちばかりだ。私たち以外の女性冒険者は各パーティーに一人ずつ僧侶がいるのと、あとは三人ほど魔法使いがいる。それでも、さすがに私たちほど若くはない。勇者パーティー以外だと最年少でも二十代後半くらいだろうか。みんな相当強そうだ。


「へぇ、彼らが例の……見た目はそうでもないが、気配はなかなかだ。特にその子を見ていると足が竦んでしまうよ」


 最年少であろう男が私たちのことを見ながらパーティーメンバーと話している。どんな話をしているのかはよく聞こえないが、雰囲気からしていい話というわけでもなさそうだ。成人してすぐのまだまだ子供の冒険者と発展途上の獣人、そして明らかに幼い私と、どう見てもAランクには見えない私たちがこんなところにいたら、当然注目も噂もされるだろう。


「なんだ、こんなガキも……いや、そうでもないか」


 最後のパーティーも到着したようだ。私を見て一瞬嘲笑ったが、すぐに訂正した。魔力に込められた感情や気配ならわかるが、それ以外でも気配というのはわかるものなのだろうか。きっと、熟練の冒険者ともなると気配だけで実力がわかるのだろう。


 全員が揃ったところで、私たちは遺跡に足を踏み入れた。

 一番最初の広間に入った刹那、吐き気お催すとんでもなく醜悪な魔力を感じた。あまり近くはないが、それでも感じ取れるほどだ。他のパーティーの女性冒険者は彼氏だか旦那だか、同じパーティーの男にぴったりとくっついている。男として良いところを見せるチャンスだぞ、と思いながら仲睦まじい姿をしっかり目に焼き付けておこう。うらやましくなんてないんだからねっ。けど、それほど恐怖を感じてしまうのもわかる。私とてさっきからニーナの手を離せずにいる。


「ひゃんっ」

「アリア?」

「ごめんなさい、ちょっとびっくりしちゃって……」


 水が落ちる音がしているし、それがちょうどアリアにでもあたったのだろう。意外と可愛いなこの聖女。


「というかこの水……魔力が含まれていますね。ニーナちゃんには悪影響かもしれないので、気を付けてくださいね」

「わかった。でも、なんで?」

「この水の魔力は魔族の魔力を含んでいるのである程度の魔力がないと体に毒なんですよ。死ぬことはないけど、少し体調を崩すかもしれません」


 波長の合わない魔力の影響を受けてしまうと魔力酔いするとセナが言っていたな。まあその時基本別種族同士でなければ大した問題にはならないとも言っていたが、まさかそれを気にしながら進まなければいけない時が来るとは。そういえば昨日から魔力の流れ方に少し違和感があるのは例の助けてくれた人の影響があるからなのだろうか。人族か魔族かわからないが、まあこの程度ならそのうち馴染んでくるだろうし魔法も問題なく発動出来ているので、今は気にしなくてもよさそうだ。


 それより、魔力が濃くなっていることが気になる。そのせいかニーナも殺気立っているし、前を歩いている冒険者たちも過剰ではないかというくらいに警戒している。ここまでくれば、なんとなく魔力の発生源も察知できるが、道がわからないのでさすがにすぐにはたどり着けなさそうだ。それに、魔物の気配もする。


「右の道から魔物が三体来てる。多分あの人たちがやってくれるかな」


 ニーナがいるというのならいるのだろう。前を歩いている冒険者たちが倒してくれるだろうが、一応魔法を使う準備くらいはしておこう。


「おじさんたちに任せな。この程度——どりゃあ! 一撃で終わるさ」


 両手剣を持っていた男は、飛びかかってきた魔物三体を一人で両断した。


「すごい……」

「だっはっは! おじさんもう三十年も冒険者やってるからな!」

「グランツ、油断しないの」

「おっと、すまねぇな」


 気配もなくグランツを襲った魔物を、彼の仲間の魔法使いが一撃で焼き払った。これがAランクか……魔力切れ覚悟で戦わないと初手で負けるだろうな。


「君らも、戦うかい?」

「戦いたいわ!」

「だっはっは! やる気は十分だな、お嬢ちゃん。それじゃあポジション交代だ」


 グランツたちに代わり、今度は私たち勇者パーティーが先頭に出た。壮馬とニーナが前衛の剣士、私とセナが後衛の魔法使い、そしてその少し後ろでアリアがサポートという五人用の陣形——というか立ち位置だ。


「壮馬、まずは私がやるわよ」

「邪魔しないから思う存分やっていいぞ」

「ありがと。それじゃあ早速——」


 正面から魔力が一つ。それなりに大きい魔物だろう。とりあえず、挨拶代わりに炎魔法を撃ち込む。魔杖のおかげでいつもより少ない魔力で強力な魔法を撃てた手ごたえがあった。魔力は……消えている。


「シエラ、後ろから大きいのが四体とその後ろに小さいけど濃い魔力のが一体」

「おっけー、ぶっ飛ばす!」


 魔杖から剣を射出するイメージで水の剣を生成し、それらをすべて正面の魔物めがけて放つ。いつもと同じ魔力で数倍の本数生成できたし、射出速度もいつもより早めにセットしたからしっかりダメージは与えられただろう。


「手前のが一体死んだ。他は生きてる」

「魔法で魔物を攻撃する時はダメージによる弱体化を狙うか、核を破壊するのがいいわよ」


 グランツの仲間の魔法使いがそうアドバイスしてくれた。核を破壊か……ピンポイントに狙うのは難しそうだし、剣の生成量を増やしてダメージを狙おう。前には壮馬とニーナがいるし、少し時間をかけて明確にイメージする。水の剣を五十本、それぞれの強度を強めにして、私の刺突攻撃と同じくらいの速度で発射。


「どう?」

「後ろの濃い魔力のだけ」

「マジか……まだ正式に登録できるような年じゃないような子が、これほどとは……」


 グランツも驚いているようだ。頑張って身に付けた力にそれを増幅する道具があればこの程度余裕ね。相手が何もして来なければ。


「私たちも負けてられないわね」

「ああ、年長者として、いいとこ見せないとな」


 どうやらグランツたちも一層気合をいれたらしい。頼もしい限りだ。


「……待て、後ろにいた奴らの気配がないぞ!」


 グランツが焦りながらそう言った。振り向いてみると、確かについてきていたはずの四パーティーがいなくなっている。気配すらしないが、一体何があったのだろう。嫌な予感がする。今すぐにでもこの遺跡から離れなければ死ぬ気がする。


「アリア……?」


 聞くのは怖いが、アリアの未来視に頼るとしよう。


「探索はここで打ち切りにして今すぐ遺跡を出たほうが——」

「逃がすと思います?」


 アリアに言われ、踵を返したその時、どこからともなく声が聞こえてきた。声に魔力が籠っているのか、聞いただけで鳥肌が立つ。


「全員固まれ! 兄ちゃん、そこの嬢ちゃん二人を何が何でも守るぞ!」


 グランツの指示で、私たちは全方位を警戒するように陣形を変えた。気配がする方にグランツと壮馬、そして後ろを警戒しているグランツの仲間と真ん中には私とニーナ、さらに私たちを守るようにセナとグランツの仲間の魔法使いが立った。


「ごめんなさい、私がもっと早く力を使っていれば……」

「気にすんな。この程度の状況、乗り切って見せるさ」


 グランツに励まされ、アリアは気持ちを切り替え、全員に強化魔法と防御魔法を付与した。


「そこの男はなかなか出来るようですね。しかし、どう動こうが人族風情が私に勝てるわけありませんから。まあせいぜいそうやって仲間ごっこでも楽しんでください」


 嫌な奴だ。魔力を含んだ声だからか、ますます苛立ってしまう。


「耳を貸したらダメよ。敵を煽って集中力を削ぐのは対人戦ではよくあることだから、注意して」


 今日初めて会ったのにいろいろと教えてくれるな。いい人なのだろう。おかげで冷静でいられそうだ。


「なかなか調子に乗ってるみたいだが、誰だお前」

「ほう、あなたが勇者……いやはや、こんな子供とは。これでは、魔王様が復活する前に私に殺されてしまうかもしれませんねぇ」

「はっ、言ってろ。少なくとも、口だけは達者な奴に負けるほど俺等は弱くねぇよ」

「はっはっは。では、姿を見せるとしましょうか」


 声が消えると、突然私の前に羽の生えた男が現れた。恐らく、この遺跡内に充満していた魔力の発生源だ。恐らく、こいつは魔族だ。ケルベロスに襲われた時に感じた嫌な魔力と全く同じ気配がする。


「私を攫いにでも来てくれたのかしら?」

「そうですね……グラディオンの貴族を攫えば面白いことになるかもしれませんね」


 私の正体を知っているのか。この魔族があの時いた魔族と同じだとすれば、グラディオンで情報収集でもしていたのだろう。そうだと仮定して、私も動揺を隠しつつこいつの情報を探ってみよう。


「それなら王女のほうが騒ぎを起こせると思うけど、そんな勇気はなかったかしら?」

「いえいえ、あなたを攫った方が面白いですからね。そうすれば、王女も王子も、それにほかの貴族も騎士団だって動かせるでしょうし」


 私の正体だけでなく、私の交友関係まで把握しているようだ。しかし、なぜ王子まで動くのだろう。王子があのクズ野郎のことなのか、それともガーセルやジエルのことなのか。なんだか今すぐ国に戻って動かないといけないレベルの事件に巻き込まれている気がする。


「そういう訳ですので、来てもらいますよ」

「強引すぎるわね。レディを誘うならもっと雰囲気を作った方がいいわよッ!」


 足を強化して、思いっきり魔族の脛を蹴って後退する。私に合わせて近くにいた魔法使い全員後ろに下がったし、これで剣士たちも存分に戦えるだろう。


「さすがに剣がなくともその程度はできますか。しかし、転移できるので——」

「転移できるから、なんだって?」


 壮馬は咄嗟に魔法で魔族を拘束し、転移を阻止した。その拘束もすぐ破られたが、一瞬の隙をついてグランツが仕掛けた。


「ほう、転移で避けることはできねぇのか」

「おや、バレてしまいましたか。魔法というのは肝心なところで不便でしてね」


 欠点を見せたように見えたが、素手でグランツの攻撃を防ぎながら言っているあたり、この程度なら余裕なのだろう。


「なら、隙を作らなければ問題ないな」


 壮馬は聖剣に魔力を込め、グランツと変わって魔族に攻撃を仕掛けた。


「危ういですね。聖剣の力は苦手なのでやめてほしいのですが」


 やけに弱点をあっさり話す奴だな。逆に怪しくなってきた。


「それなら、当たるまでやってやるよ!」

「勇者様待ってください、そこは——」


 後退した魔族に追撃しようと地面を蹴って距離を詰めようとした壮馬の足元に、魔法陣が展開された。そして、その魔法陣は光を放ち、壮馬を攫って行った。


「勇者、どこです!」


 セナが大声で呼びかけるも、返事はない。壮馬の魔力も気配も感じないし、ニーナも場所を把握できないようだ。強制転移魔法……厄介な技だ。事前に設置してあったとすれば、まだあるだろうから警戒しながら動いたほうがいいだろう。


「まだまだ経験不足だな。カミラ、魔法陣の特定と破壊頼んだ」

「時間稼ぎは任せたわよ」


 カミラは目を瞑り、そして魔力を放った。魔力を使った索敵だ。これで魔法陣の場所を特定して破壊するのだろう。セナは高度な技術が必要だから学院でゆっくり習得すればいいと言っていた魔法を、まさかこんな間近で見られるとは。


「シエラさん、私が印をつけた場所の地面にあの剣の魔法を挿してくれる?」

「わかったわ」


 印は八箇所。その程度なら一瞬だ。


「もちろん、この間に魔法を発動しようとしてるのもお見通しよ」


 カミラはいつの間にか闇に紛れ隠れていた魔族の男に魔法を放った。そこまで考えながら動いていたとは、さすがAランク冒険者だ。やはり、私たちとは潜ってきた修羅場の数が違うのだろう。


「さすがに舐めすぎでしたね。こうなれば、全滅させる方が早いですね」


 魔族も多少本気を出すようだ。ならば私もそうしよう。前衛にはグランツとニーナもいるし大丈夫だろう。


「万物を切り裂く水の刃、魔力を喰らいて我が敵を滅する剣となれ」


 動きを魔杖とリンクさせ、ニーナたちの後ろから攻撃できる距離に水の剣をセットする。


「さあ、お互い全力でやるわよ」


 さっさとこの男を倒して壮馬や後ろにいた冒険者たちを探さないといけないし、全力で殺そう。


「ふふっ、面白いですね。では、行きますよ!」

 男は魔法陣を展開し、そこから魔剣を取り出した。禍々しいオーラを纏っている魔剣は見ているだけで気が狂いそうだ。聖剣を持った壮馬がいない今、普通の剣では相手できないかもしれない。


「ニーナ、これ使って!」

「うん、ありがとう」


 魔剣をニーナに渡しておこう。普通の剣よりはマシだろう。

「万象を焼き尽くす炎よ、我が道に立ち塞がる敵を焼き払え!」


 カミラが魔法を放ったのと同時に、ニーナも攻撃を開始した。


「成熟した獣人に匹敵する動き……強化だけでなく、素の能力もなかなかのもののようですね。しかし、魔法が使えないのなら雑魚同然です」

「それを補うための私よ」


 男の後ろに展開された魔法陣から放たれる魔法をニーナに当たらないように迎撃する。さすがにこれでは水の剣を操ることはできないし、とりあえず男めがけて飛ばしてあとは魔法の迎撃に専念しよう。


「ッ——厄介な……」


 私とニーナの連携がなかなか効いているようだ。


「我が召喚に応じよ《ソウルイーター》《ケラスヴォルフ》」


 男はニーナを力技で弾き飛ばし、その隙に魔物を召喚した。影響を受けたのか直接魔力を与えられたのか、どちらも霧を纏っている。計十二体、処理するのになかなか骨が折れそうだ——

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