表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天真爛漫おてんば娘は異世界を自由気ままに満喫したい  作者: cvおるたん塩
第二章 アキツ旅行編
24/27

21話 報酬

 先日のケラスヴォルフ討伐の件で、私たちは冒険者ギルドアキツ支部支部長のトウマに呼び出された。手紙には報酬の件と書いてあったが、もしかして家を破壊したから報酬から修繕費を引いておくよとかそう言う話なのだろうか。だとすれば説教されるのは間違いなく私だ。怖そうなおじさんが出てきたらどうしよう。考えるだけでチビりそうだ。


「よく来てくれたな、勇者たち。私が現アキツ支部支部長のトウマだ。ケラスヴォルフの件については報告を受けている。それでその子は……どうした?」

「緊張してるみたいで」


 壁のような体の強面のおじさんの前でまともに話せる気がしない。必死に震える手を抑えるのが限界だ。


「まあそう緊張するな。家の件はすでに始末もついたしな」

「……ほんと?」

「ああ、本当だとも」

「じゃあ私は……」

「ガハハ、こちらでも手が付けられないような魔物を倒したのだ。あの程度問題にもならんさ」

「そ、そっかぁ……」


 家を壊した件ではなかったようだ。なら普通に報酬をもらえるだけだろうし、気楽にしていよう。


「では、報酬と依頼の話をしよう。まず報酬だが、ケラスヴォルフの討伐難易度と被害を考慮して——これくらい用意している。俺としてはもっといい報酬を用意したかったのだがな」

「とんでもないわね……」


 金貨十枚と大銀貨八枚、冒険者ランクを現状の最高ランクであるAへの引き上げ。さらに、破損した魔剣の替わりだけでなく、特注の魔杖まで作ってくれるらしい。正直これでも大袈裟に感じるが、あのレベルの魔物討伐となると、アキツでの爵位と領地が与えられるのが普通らしい。ただ、さすがに国がうるさかったようだ。だとしても、Aランク昇格は別の国でも、グラディオンに戻ってからでも有利になるし、新たな魔剣に加えて魔杖までもらえるというのは剣も魔法も得意な私としてはとても助かることだ。しかも金貨十枚と大銀貨八枚、これだけあれば、しばらく資金面で困ることはないだろう。


「それと、君たちに直々に依頼したい緊急の任務があるのだが」

「任務?」

「ケラスヴォルフ討伐に影響を与えた魔族と悪鬼の親玉の捜索任務だ。念のため、ほかのAランク冒険者との合同任務だ」


 まさかの緊急任務、それも支部長直々の依頼か。捜索なら別に問題ないだろうが、私には判断しかねるので勇者パーティーのリーダーである壮馬に判断をゆだねよう。


「ちなみに場所は?」

「明後日出立でまずはあの町の近くにある遺跡の探索、そして東のほうにある葭山の捜索だ」

「確かあの町のあたりの遺跡は少し強い魔物がいるんでしたね。葭山は噂でしか聞いていませんが、鬼の姫がいると……」


 セナの顔を見るに、捜索とは言ってもあまり安全な任務ではなさそうだ。


「危険度としてはどれくらいなんだ?」

「そうだな、まあ君たちとほかの冒険者もいるから現場ではBランク相当だろうな。Aランク昇格直後とは言え、さほど問題にはならないはずだ」

「俺としては是非受けたいが、シエラとニーナが心配だな」

「そうですね。シエラちゃんは強いですが、まだ不安定ですから……。ニーナちゃんも、きっとシエラちゃんがピンチになれば身を挺してでも守るでしょうし」

「シエラなら私が絶対守るよ」


 ニーナなら私に飛んできた攻撃を真っ先にかばってくれそうだ。それはそれで不安ではあるが……。確かに、強力な魔物との実践であれば、私はまだまだ未熟だ。ニーナだけなら正直獣人の身体能力と技術、そして私より肉体が成長しているという面では十分だろうが、そこに未熟な私がいてしまうとパフォーマンスも落ちてしまうだろう。何かあったときのことを考えると、私としても守ってもらう前提で動くことはできない。


「ちなみに、この魔杖はどれほどの物なのですか?」

「これは《ドゥエルマリク》という魔族の魔具師が作ったもので、魔力効率は四倍程度で多少なら近接戦闘も可能だな」

「そうですか、ならシエラが後衛の魔法使いとして動いてくれれば問題はなさそうですね」


 それなら、壮馬とニーナもいるし、魔力切れや武器破損が怪我につながることもないだろう。あの魔物との戦闘で私の剣術は強力な魔物には通用しないというのは痛感した。魔族や鬼がいないとしても、もしあのレベルの魔物がいたら私はまあ戦えないだろう。しかし、ほかの冒険者の戦い方も見て、しっかり実戦と言うものを学びたい。


「私は行きたいわ」

「絶対に無理をしないと約束できますか? 無理な戦いで魔力切れを起こさないと、約束できますか?」

「もちろんよ。あんな無茶はもうしないわ」


 さすがに同じ二度同じ失敗をすることはない。今は何が出来て何ができないのかもしっかり把握できている。


「その依頼、受けるよ」

「勇者——」

「大丈夫、シエラは俺が絶対に守るし、シエラもあんな無茶はしないと思う。しっかり五人で連携が取れるならシエラも一人でやろうとはしないと思うぞ。そうだろ?」

「うん」

「では、出発の日にまたここで会おう。食料などの物資はこちらで用意するので、君たちは武器と装備さえ用意してくれればいい」


 そんなわけで、この後少し雑談して、私たちはギルドを離れた。報酬金の分け前は私に金貨八枚と銀貨四枚、これだけで相当お金がたまった。緊急任務が終わったら買い物を楽しむとしよう。服でも買おうかな。これだけお金があれば、高めの本だって買えるだろう。魔法の本に歴史の本、服も本も、欲しいものが沢山ある。


「シエラちゃん、なんだかうれしそうですね」

「うん。何買おうかなって考えてたらね」

「それじゃあ任務を達成したら一緒にお買い物にでも行きましょうか」

「うん、行く!」

「私もシエラと一緒に行きたい」

「もちろん、ニーナちゃんも一緒です」


 アリアとニーナと一緒に買い物をするためにも、なんとしてでも無事に任務を達成しよう。無理はしない。出来ることを出来る範囲でやりながら今よりも強くなる。


あのケラスヴォルフを単独で苦戦することなく撃破出来て一人前!なんて言ったら一人前の冒険者なんてほとんどいなくなる気がした

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ