13話 頑張るシエラちゃんpart2
翌日。
今日は剣術に関する座学だ。内容は昨日教わった剣聖流や勇者が使っていた剣術、その他主流とされている剣術についてだ。根本から理解することも大切だろう。それに、異世界の剣術なんて学ばない理由がない。
「ではさっそく始めます」
なぜか部屋にはしっかり黒板が設置してある。本格的だな。
「まず、主流なものとしてカウンター特化の剣聖流、速度と威力で押し通す剣帝流の二つがありますね。この二つの流派の起源は——」
剣聖流は勇者のいない時代、人の身でありながら魔族と互角に渡り合った剣聖と言われているいわば英雄が使っていたとされる剣術で、とにかくカウンター重視らしい。攻撃を防ぐのではなく最小限の動きで躱すか受け流すか、そしてカウンターに繋げる。使いこなせたら一切攻撃を受けず相手にダメージを与えられる強力な剣術で、二大流派と呼ばれるほどに使用者が多いらしい。
一方剣帝流はお隣アーマランド帝国の英雄である剣帝が使っていた剣術で、とにかく素早く、かつ威力も高い攻撃で押し切るパワー特化らしい。極めた人は相手に避ける隙すら作らせず倒すとかなんとか。
他にも勇者が使っていた剣術や対魔物、対魔法に特化した剣術もあるらしいが、これに関してはあまり縁がなさそうなので今はいいだろう。
今覚えておきたいのは剣聖流だ。
あくまで伝承だが、剣聖は温厚で優しい人だったらしい。故に自ら攻めることはなく、ひたすらに相手の攻撃を誘って、その悉くを返す。つまりまあとにかくカウンター、ただただカウンターという感じだ。
エレノア曰く剣聖流はそれを極めるまではまともに攻撃できないから我流でもほかの流派でも攻められる剣術と合わせて使わなければ使うのは難しいとのことだ。
なら、そもそもの考え方を変えよう。
剣聖流はカウンターを主軸とした剣術だ。今まで私はこれをとにかくカウンターするものと考えていたが、そうではなく、戦闘している中で隙を作ったり誘い込んで一気に勝負を付けたり、そういうものだと考えよう。それに、最低限の動きでする回避や受け流しはカウンター以外でも普通に役立つしね。
まあ考え方が変わったところでそもそも習得が難しいことに変わりはないが、きっとこれも何かヒントにはなるだろう。
一時間程度の座学が終わり、さっそく実践授業に移った。私の要望もあり、最初から模擬戦だ。まずは昨日寝る前にイメージした動き、そして剣聖流のカウンターに繋げるながれを実際に試してみる。
エレノアの動きをよく見て攻撃を回避して攻撃し、防御に切り替えさせる。そして、私はとにかく攻撃。対格差のせいで攻めが難しいが、そこはエレノアも理解しているようでしっかり防御に徹してくれている。
今度はあえて隙を作り、エレノアに責めさせ——
「これでどうだぁ!」
普通にカウンターだったな。剣聖流とか関係なかった気がする。
「シエラは型にはまらず自分の思うように戦う方が向いているのかもしれません。いろいろな剣術を組
み合わせているようで肝心な部分は独自のもの、しかし技は実用レベル……まさに天才ですね」
「そ、そう?」
「ええ、本当です」
お世辞でも本音でもうれしいな。確かに私は特定の流派に縛られるよりその時々に合わせて動くほうがあっているかもしれない。それならなおさら剣聖流を習得したほうがいいだろう。何なら剣帝流やほかの流派も習得すればいざ魔法で戦えなくても対応できるようになるのでは。
「……でも、やっぱり習得したいわ!」
「では、引き続き練習を続けましょう」
こうして私の訓練は一月の間毎日続くことになった。
頑張るシエラちゃんシリーズはなろうでの各partの文字数減らしておきます