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バタバタしている勇者たち ②

2022/7/15 四話目



 杉山たちは色々とバタバタしている。

 その様子は時折見かける異世界のモノらしきものたちを見れば見るほど実感する。

 だって前よりも異世界を感じることが結構多いから。





「乃愛、異世界関連増えてる?」

「かもねー」



 昼休みになって、屋上でのんびりとしながら会話を交わしている。


 今も空を見上げると、遠くの方で不思議なものを見た。あれも異世界関連か? そうじゃなきゃもっと騒がしくなっているだろうから。





 それにしても異世界関連が少しずつバタバタしているのは何か理由でもあるのだろうか。






「杉山たちも来年には受験なのに、全然勉強している様子もないしなぁ」

「博人、勇者のことはそんなに気にしなくていいよ? 私のことだけ、気にしておこう?」

「んー、でも僕の生活にまで支障をきたしたら怖いし」

「博人の傍にいるのは誰だと思っているの? 私が傍に居るのに博人を危険にさらすわけはないよ?」




 平穏な生活というのは、正直異世界関連の出来事が起きてきたことですっかり日常は変化している。でも出来る限りもっと平穏なまま時間が過ぎてくれればいいと僕はそう思っている。



「乃愛が僕を守ってくれることは知っているよ。乃愛は嘘をつかないし」

「うん! 私、博人に嘘なんてつかないよ?」

「うん、知ってる」



 乃愛は僕に嘘はつかない。というより、誰にも嘘なんてつこうとはしない。そういう風に誰かに嘘をついて取り繕う必要が乃愛にはないから。そもそも告げた言葉を全て真実にしてしまうだけの力だって乃愛にはあるから。




「ふふ、ねー、博人、ごろんってしていい?」

「寝転がりたいならそうしたら?」

「博人から膝枕されたい」

「僕に膝枕されてもどうもないでしょ」

「私は嬉しいから。ね、いい?」

「……まぁ、いいけど」



 何故か乃愛に膝枕を所望されたので、僕は頷いておく。乃愛は僕の膝の上に頭を乗せる。そして上を向いて、僕の方を見ている。横を向くとかじゃなくて僕をじっと見ているのが乃愛らしい。



「博人はね、何も心配しなくていいんだよ。私が居るんだから。私は仮に博人が誰かに傷つけられることがあったら、その存在を絶対に許せないし。それにね、仮に博人の命が失われたとしても、私は博人を手放さないよ。もちろん、人間として生きている博人が死なないように守るけど」


 ……僕が死んでも手放さないってぼそっと聞こえてきたけど、どうするつもりなのだろうか。



「博人はね、博人らしくただ生きていればいいの。博人を煩わせるものは全部私がどうにかするし」

「……いや、それじゃあ僕暴君みたいじゃん」

「暴君になってもいいよ? 暴君の博人もきっと素敵」

「嫌だよ。乃愛はもう少し僕に厳しくしていいと思うんだけど、僕が好き勝手動いたらどうするの」

「博人はそんな風に動かないよ? そもそも動いても博人は博人だしねー。博人がこの国でトップになりたいとか、そういう願望あったらすぐに教えてね」

「ないから」

「ふふ、博人はそうだよね」



 僕に膝枕されている乃愛は、大変楽しそうである。





「私はね、博人が普通の人間として生活してほしいっていうから勇者たちが色々動いているの関わる気ないよ。でもね、もし博人に何かあったら私はすぐに動くからね」

「……うん」


 乃愛は普通の人間として過ごしてほしいという僕の言葉を守っている。

 だから何か力を使うことはせずに生きている。普通の人間に擬態して、ただ生きている乃愛はにこにこと笑っている。




 例えば僕が何か大変な目に遭ったら、乃愛はブチ切れることだろう。僕はいつもひょうひょうとしていて、完全にキレることはない。……でも多分、僕に何かあれば本当に怒ると思う。下手したら街が崩壊とか、日本が崩壊とか、本気で出来そう。というか、出来るだろうし。

 僕は危険な目に合わないようにしておかないと……。




 そんなことを考えながら校庭の方に視線を向ければ、今頃学園に登校している杉山たちの姿が見えた。



 ……なんか戦った後みたいな雰囲気を醸し出している。

 どこかで戦闘でもしてきたのだろうか?



 なんて思っていたら杉山たちを追ってきた何者かが居たのか、杉山に倒されていた。動きが速い。僕には見えなかった。なんか魔法的もののでも使っているのだろうか?

 普通の身体能力ではなさそう。



 そんなことを考えながら、膝に乗っている乃愛の頭を撫でる。割と無意識に撫でてしまったけれど乃愛が嬉しそうに笑っているので、まぁ、いいだろう。




 乃愛は戦闘音がしても特に気にした様子もなく、いつも通りである。乃愛にとって杉山たちが何をしようがどうでもいいのだろう。





 そうこうしているうちに昼休みが終わったので教室へと戻る。

 教室へと戻ったら、杉山たちが席についていた。



 周りに聞こえないと思っているからか、凄い大声で異世界からやってきたものたちのことを語っていた。






「それにしてもこれだけ魔物達が入り込んでいるなんて……。俺が日本に戻りたいなんていったせいかな」

「ひかるのせいではないわ!」

「ひかるは落ち込まなくていい」



 フラッパーさんとルードさんが杉山を慰める言葉を口にしていたけれど、いや、杉山のせいといえばそうだろうと僕は思った。




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