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バタバタしている勇者たち ①

7/15 三話目




 すっかり寒くなってきた。

 僕は寒すぎるのも得意ではない。



「博人、寒かったら言ってね。マフラーと手袋あげる」

「……えっと、それどうしたの?」

「自分で編んだ。お揃い!」


 乃愛はマフラーと手袋を編むこともお手の物のようだ。でもまだマフラーと手袋は早い。身に着けるとしたら来月ぐらいになってからだろう。



「乃愛、準備万端すぎない?」

「だって博人をさ、私が作ったものだけで着飾らせたいじゃん。マフラーと手袋は寒い時に必要だっておばさんいってたし」

「……それにしてもお揃いか」

「シンプルなのにしたよ。本当は、それぞれの名前入れようかと思ったけど。博人大好きとか」

「いや、やめて。恥ずかしすぎる」

「博人がそう言うと思ったからシンプルにしたんだよ?」



 ……うん、お揃いで互いの名前入りで、大好きとか入っているものとか凄くバカップルすぎる。

 乃愛がとどまってくれて本当に良かった。とどまってくれなかったら僕は恥ずかしすぎてどうにかなっていたと思う。



 いや、というか幾らバカップルでもそういうのしないんじゃないかな。実際にバカップルって僕、見た事ないからあれだけど。




 そういえば乃愛は運動会のご褒美の僕に抱き着く権利を手に入れたわけだが、一回しかまだ使われてない。なんか大事に取ってあるだそう。



 その一回は僕が寝ている間に使われていて、目が覚めたら乃愛に抱き着かれていたから僕は狼狽したものである。しかもその様子、母さんに写真をとられていたし。





 とりあえず乃愛の編んでくれたマフラーと手袋の件は、一旦おいておく。まだ使わないしね。



 乃愛は僕と手を良くつなぎたがるので、登校中も最近は繋いだままだ。

 



「博人、ちょっと先にクリスマスってあるんだよね」

「うん」

「恋人たちが過ごすって聞いた。博人は私とおでかけね!」

「僕、クリスマスに皆が行く場所とか知らないよ?」

「そのあたりは一緒に行きたい場所考えるの!」



 いつの間にか僕のクリスマスの予定が、一か月以上も先のことなのにもう埋まっていた。



 一度目の高校二年生の時はどうしていたっけ。

 たしか母さんからクリスマスプレゼントとしてお小遣いをもらって、ゲーム買ってゲーム三昧だった気がする。


 二度目の高校二年生で、クリスマスの予定が出来るとは人生は分からないものだ。




「どっか食べに行って、イルミネーション見るとか?」

「イルミネーションってキラキラ夜に光ってるものだよね。クリスマスだと違うんだっけ」

「うん、結構派手にキラキラしてると思う」



 確か近所にも有名なイルミネーションの飾られた場所があったっけ。あとクリスマスだと色んなジンクスもあったりして、確か一度目の時にそういう噂はきいたことがある。



 乃愛と話しながら教室にたどり着く。

 おはようと挨拶をしあって、席に着く。隣の席に着席した乃愛は僕の方を向いてにこにこしている。






「ひーろーと」

「……本当に乃愛は僕の名前呼ぶの好きだね」

「うん。大好き」



 乃愛がはっきりとそういうから、周りからの視線が痛い。絶対に恋人を作りたいという男子生徒たちの声が聞こえる。うん、僕と乃愛は恋人ではないけどね……。





 担任の先生がやってきたタイミングで、杉山たちは居ない。

 というより運動会の後から杉山たちは結構学園にきていない。



 正直高校生なのに、そんなに休みまくって大丈夫なのか? と思うが、そこはやっぱり常識改変がきいているので、問題はないらしい。

 あの運動会で杉山たちが飛び出してから、僕は詳しくは全く知らないけれど……でもやっぱり異世界からの魔物の気配とかが活発になっているらしい。



 僕には魔物の気配や魔力を感じるといった異世界を感じることは出来ないので、とりあえず早くおさまってくれればいいなとそう思って仕方がない。




 だって壊れた跡とか見かけたこともあるし。

 うん、そういう物騒なのはどうにかしてほしい。





 女神様も依り代の状態でちょくちょくこっちにいるみたいだ。そういう異世界からの事情があるかららしい。でも神なので、異世界での仕事も結構しているようだ。乃愛がいうにはあの女神様は本当に働き者らしいから。



 杉山はこの地球での立場は、ただの高校生だ。

 だけれども異世界では立派な勇者である。



 勇者として魔物の脅威は放っておけないのだろう。でも旅行中に落ちてきたものといい、本当にただ魔物がまぎれているだけなのかというのは分からない。

 ……なんか物騒なこと起きそうで嫌だなって思う。



 というかさ、異世界から勇者が地球に帰ってきたってなるとやっぱり何も起こらないっていうのはなさそうだもんなぁ。



 僕に常識改変がきいていれば、何も気にしなくて済んだんだろうけどって本当に思う。





 僕がちらりと杉山の席に視線を向けたのが分かったのか、乃愛に脳内で声をかけられる。




『博人ー、勇者は色々動き回ってるっぽいよ! 勇者は派手にやるから結構色々壊れているけど』



 街の破損された箇所って、杉山たちが暴れた跡って言えるのか。

 あとこの街以外でも破壊跡があるっぽいのは、多分、それだけ範囲が広がっているということ?


 やっぱり物騒だからどうにかなればいいなとは思う。




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