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運動会 ⑥

7/15 二話目



 女神様が幸せそうに笑っている様子が視界に映る。

 乃愛は自分の姉だというのに、女神様がにこにこしていても興味なさそうである。



「博人も借り物競争で借りられたら駄目だからね?」

「僕を借りるお題なんてないと思うけど」


 あったとしても眼鏡の人とか、そういうぐらい?

 とりあえず僕の軽率な行動で乃愛が暴走するのもアレなので、僕は大人しくするつもりである。



 それにしても運動会は、文化祭と違って思ったよりも何か起きない。

 杉山たちや女神様まで揃っているので何か起きるのではと危惧していたけれど……。まぁ、起きないなら起きないでそれでいいけど。



 



 借り物競争が終わった後は、乃愛はリレーに出ていた。男女混合のリレーである。杉山もこれには出ることになっている。杉山への声援が凄まじくて、他のリレーの選手の男子生徒が少しかわいそうだった。



 というか、違うクラスや学園の生徒たちからも応援されていて本当にすさまじいと思っている。ちなみに乃愛もそれなりに応援されている。



 乃愛はじーっと僕のことを見ている。

 僕に応援してほしいのだろうか。乃愛は本当にわかりやすい。


 ……こういうところで応援の声を出すとか、僕らしくないし、少しだけ恥ずかしいけれども僕は期待する乃愛を見ていると応援しようかなという気持ちになっていた。




 リレーはクラスメイトから六人が出ている。アンカーは杉山である。それでその前が乃愛である。乃愛は杉山より早く走る事は出来たらしいが、目立つと面倒なことになると僕に言われたからかセーブしていたらしい。

 足の速い乃愛のことを杉山は認めているというか、良い感情を抱いているのか時々話しかけているんだよな。定位置に向かうまでの間に杉山は乃愛に話しかけていたし。


 乃愛にほぼ無視されていたっぽいけれど。

 女神様がぐぎぎって顔しているけど、貴方がぐぎぎってしている相手は女神様の妹だよ……。女神様も乃愛の常識改変がきいてなく、乃愛をノースティアという神様だって認識していたらこんな表情はしないだろうなと思う。だって乃愛は杉山に関心ないし。



 そうこう考えているうちにリレーが始まっていた。



 僕たちのクラスは、他のクラスより出遅れていた。というより他のクラスがちょっと速い生徒が多いのだろう。それにしてもあの不名誉なあだ名をつけられた生徒も結構速い。声援の中に不名誉な名前が混じっているのが可愛そうだけど……。

 その辺は頑張って挽回してくれることを祈るしかない。



 さて、乃愛にバトンが渡るまでの間、そこそこの差は広がっていた。……そして乃愛はバトンを渡されるまでの間も僕を凝視しすぎである。何とも余裕そうな様子に、一緒にバトンが渡されるのを待っている生徒たちが凄い形相である。

 




 そして他のクラスにバトンが渡った後に、乃愛に最後にバトンが渡される。



 僕の方を見ながらバトンを受け取るのやめようよ。落としそうではらはらするよ。

 走り出した乃愛を見て、僕は少し恥ずかしいけれど、「乃愛、頑張れっ」って声をあげた。そしたら乃愛が、僕の方を見て本当に心から嬉しそうな笑みを浮かべる。

 その後の乃愛は速かった。

 流石に僕から言われているのもあって、人間離れした走りはみせなかったけれど、それでも十分速い。


 いつの間にか他のクラスを全員抜いて、杉山にバトンを渡していた。

 というか、乃愛、杉山にバトンを渡したからってこっちにこようとしない方がいいよ……。先生に注意されているじゃん。もうちょっとそこに留まろうよ。




 結局杉山は一着のままゴールした。

 杉山も十分速かったが、全員抜き去った乃愛が一番注目を浴びていた。



 終わってから僕の元に戻ってきた乃愛は、「博人が応援してくれたからはりきっちゃった」なんていって笑っている。

 



「博人に応援されると思うと何でも頑張ろうって思えるね! ふふ、運動会って結構楽しいかも」

「良かったね、乃愛」



 さて、そうやって競技が次々と終わっていき運動会も終わりに差し掛かった頃、



「この気配はっ!!」


 何だか漫画とかで出てきそうなセリフを言って、杉山がかけだした。その後ろに女神様たちが続く。


 最後までいられない不測の事態?



「なんか魔物の気配とかするね。誰かこっちにきてる?」

「……それ大丈夫?」

「お姉ちゃんと勇者たちがどうにかするから大丈夫でしょ。まぁ、博人のことは私が守るからね」



 どうやら魔物がやってきているようである。杉山たちの焦っている様子を見るに結構強い魔物だったりするのだろうか? 乃愛がのんびりしているのを見ていると、そんなに慌てる必要がいるのか全く分からないけれど。



 結局杉山たちはその後、戻ってこなかった。

 杉山たちの競技は全部終わっていたから問題はなかった。僕たちの赤組は無事優勝していた。クラスメイト達の一部はこれからファミレスやカラオケでお疲れ様会をするそうだ。


 僕たちも誘われたけど、乃愛が「博人は私と帰るの」というので不参加になった。




 そうして僕たちの運動会は終わった。





 

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