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運動会 ③



 玉入れに参加している僕。正直玉入れというのは籠に玉を入れるだけなので、そこまで労力を使うものでもない。運動会の競技の中でもそんなに目立つ競技でもない。どちらかというと、運動会ではリレーなどの走る競技の方が目立つだろう。


 とはいえ、運動会に真剣な生徒たちは玉入れだろうとも一生懸命応援しているわけだが。

 玉入れも立派な競技だし、ちゃんとした得点にもなる。何だか杉山たちも張り切っている。ただ流石にそこまで応援が白熱しているわけではないけれど。


 でもそんな中で乃愛だけは僕のことをそれはもう必死に応援していた。というか僕のこと以外応援していないので、大分、視線が痛い。頑張りはしたけれど、運動神経のよくない僕は当然、それなりしか活躍は出来ない。

 色んなものに向き不向きがあるものだからなぁ。







「博人、お疲れ様ー」

「乃愛、僕はあんまり活躍で来てないよ?」

「あのね、活躍しているとか、活躍していないとかどうでもいいの! 博人が博人としているだけで奇跡だからね!!」



 ……乃愛は僕のことを全肯定しすぎでは?

 そんな風にひたすら僕のことを延々と褒めて、甘やかして――そんな風にされ続けると何だか不思議な気持ちになる。



 今の乃愛の発言からも、乃愛の価値観というか、どういう風に考えているかに関してもよく分かるというものである。



「博人が一生懸命玉入れしているの見ているだけで楽しいしね」

「そっか」




 座り込んだ僕の頭をなぜか乃愛が「いい子いい子」するように撫でてくる。僕の頭を撫でるのが楽しくなってきたのか、滅茶苦茶撫でてくる。何だか周りからの視線が痛い。


 そうこうしている間に、何だか女神様がやってきているみたいだった。


 女神様は相変わらず文化祭の時みたいに依り代みたいなのに入ってきているようである。女神様は存在感が強すぎて、僕はすぐに来ているのに気付いてしまった。女神様の方に視線を向けていたら、乃愛に「お姉ちゃんの方を凝視しないの」と、乃愛の方に顔を向けられた。


 


「博人は私の方だけをじーっと見てたらいいの!」

「いや、運動会で乃愛のことだけを見ていたら中々おかしいでしょ」

「全然。私も博人のことだけをじっと見ているつもりだし」

「うん、それはそれでおかしいから。というか、運動会の競技のことも気にせずに互いだけを見つめあうとかどこのバカップルなの」

「バカップルでいいと思う」

「いや、僕と乃愛は恋人でもなんでもないでしょ」

「バカップルでいいと思う」


 ……何で二回いったの?

 強調しているの?



 僕はそんなことを思いながらも思わず乃愛の態度に笑ってしまった。




 そんなこんな会話を交わしている間に、女神様と杉山たちが会話を交わしていた。

 女神様はよっぽど杉山という『勇者』を気に入っているらしい。『勇者』だからなのか、杉山個人だからなのかは分からないけれど。でもそういう地位って、その地位も含めてその人だよなとは思う。

 そういう地位で見てほしくない、自分自身を見てほしい的な心情の登場人物って結構創作物見ているといたりするけれど、結局その地位がなければその人でもない気がするし。






 乃愛は凄く自由気ままな神様で、人の営みのことなども知らないなどという存在なので邪神的な感じの神様だから誰か一人の傍にいてもそんなもんかって感じだけど。でも女神様に関しては人を全て愛しているみたいな慈愛のある感じの神様らしいので、その存在が誰か一人を特別視しているって何か周りから思われたりしないのだろうか?

 まぁ、幾ら慈愛がある女神様でも、神様なので周りのことなんて知るかって感じなのかもしれないが。




 それにしても女神様は杉山ハーレムの中でもやっぱり一番特別な地位なのかもしれない。フラッパーさんたちもその姿があると少し遠慮しているようにも見える。というか、これだけ杉山を奪い合っている風なのに杉山はハーレム状況にいまだに気づいていないのだろうか?




「……ハーレム系の主人公って、難聴で、中々鈍い系が多いよなぁ」

「あの『勇者』、戦闘の勘はいいけど、そういうのは鈍いみたい」


 戦闘の勘はいいんだ、へぇーって感じである。

 僕は戦闘中の杉山のことを一切見た事がないので、杉山が『勇者』として動いているところが僕には分からない。



 やっぱりそういう戦闘面でのかっこよさみたいなのを見ると、余計に惚れたりするのだろうか。




 僕はああいう風に大量の女性に囲まれたら落ちつかないので、そのまま平然としている様子を見ると凄いなと思ってしまう。




「博人は、人の好意に無頓着じゃないよねー。私が博人のこと、大好きなのも分かってるし」

「いや、乃愛の態度見て逆にわからなかったらヤバいと思うけど」

「ふふふ、博人らしいなぁ。私の好意に気づいても、全く変わらない博人が私は大好きだよ」



 ……なんかからかうようにそんなことを言われた。

 




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