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運動会 ②




「皆、優勝するぞ!」


 教室にたどり着いたら杉山がクラスを仕切っていた。

 

 ちなみに一年生と二年生と三年生のそれぞれのクラスを組分けしている感じである。僕たちは赤組なので、赤いハチマキを渡される。何だか杉山は熱血な感じというか、主人公って感じがあるから赤いハチマキがよく似あっている。


 フラッパーさんとルードさんや、他の杉山に惚れている女性たちはぽーっとした表情をしている。気合十分な杉山は流石『勇者』というべきか運動神経も良い。



 あと他の学年の生徒たちがいても仕切ってる風だったし、何だかやっぱり確実に目立っているなと思った。



 こうやって張り切っているのは、女神様もやってこようとしているからなのだろうか?

 



「博人の出番、楽しみ。応援するからね」

「……一応同じ組の生徒は最低限応援しようね?」

「博人がそういうならするけど、でも私がちゃんと応援するのって博人だけだよ? そもそも正直どうでもいいしねー」


 乃愛がそういうことを堂々と言っているから、運動会に真剣な生徒たちにじろりと視線を向けられる。僕は乃愛に少し静かにするようにと、人差し指を口にあてる。



「ふふ、静かにすればいいの?」

「うん」

「じゃあ、静かにして博人にひっつく」


 いや、ひっつかなくてはいいのだけど……。

 

 でも乃愛が静かにしてくれるなら、いいか。





 担任からの話があったあと、校庭への移動である。秋だけれども、少し暑い。昼頃になったら、もっと暑くなるだろうかと少しうんざりする。

 最初に学園長や生徒会長からの挨拶があった。そういえば、杉山は来年は生徒会長になりそうな感じらしい。一度目の二年生の時は、杉山が居なかったから別の生徒が生徒会長になるとかそんな感じだった気がする。……本当に杉山が戻ってきたことで、色んなことが変化しているということが分かる。




 そもそも僕の隣に乃愛がいるのも、一度目の二年生ではありえなかったことだったから本当に色んなことが変わってきているわけだけど。






「ねぇねぇ、博人」

「乃愛、挨拶中は静かにね」



 挨拶中も乃愛はその様子をおかまいなしに、僕に話しかけようとしてくる。僕が静かにといったら乃愛はにこにこしながら、僕をじっと見ている。……いや、前を見ようよ。僕の方ばかり見ていても駄目だと思うんだけど。



 挨拶が終わった後は、乃愛と一緒にクラスのテントに向かう。




「テントの下だと暑くなくていい。博人も、涼しい方がいいよね?」

「うん。涼しい方がいい。あついとやる気もなくなるし、熱中症にもなりそうだし」

「熱中症って、人が暑すぎるとかかるやつだよね? 博人も、具合悪くならないようにね? 身体冷やす?」

「まだ僕何の運動もしてないし、ちゃんと飲んでいるから大丈夫だよ」

「ほら」

「……なんで飲ませようとしているの? 自分で飲むから大丈夫だよ」



 乃愛がわざわざ僕に対して飲み物を差し出してくるので、それを拒否しておく。うん、何でいちゃついているんだみたいな目をこちらに向けられているし。正直言ってそう言う視線を向けられるのはちょっと何とも言えない気持ちになって、まだ慣れない。



 そういえば乃愛ににらまれて漏らしてしまったあの男子生徒も、何だかんだ学園にちゃんと来ていた。このまま不登校にならなくて良かったとそんな風に思ってしまう。だって乃愛のせいで不登校になるとか、乃愛は気にしないだろうけれども僕は正直気にする。


 乃愛の評判が悪くなるのは、僕は嫌だと思っている。それは僕が乃愛に対して悪い感情を抱いていなくて、乃愛は周りのことを気にしていない子だけど――そんな風に言われるほどではないと思っているからというか。うん、僕もすっかり乃愛に何だかんだ絆されている気がするなぁ……。




 競技が進められていく中で、乃愛は僕のことばかり見すぎである。それよりもっと競技見よう?


 そういえばちょくちょく、保護者たちもきている。保護者席には母さんと父さんたちの姿も見える。母さんは大きな重箱を持っている。乃愛が母さんと準備をしていたものだろう。昼の時間のお弁当が結構楽しみだ。

 





「博人、博人ー」

「何で僕の名前連呼しているの?」

「博人の名前を呼びたくなっただけだよー。私は博人の名を幾らでも呼びたいからね!!」

「そう……」

「博人も私の名前、何回も呼んでいいんだよ」

「……」

「ほら! 呼んで、呼んで」

「……乃愛」

「うん、もっともっと!!」

「乃愛乃愛」

「ふふ、うんうん、いいね」

「……もういい?」

「もっと呼んでほしいなー。博人がくれた乃愛って名前、幾らでも博人に呼んでほしいから」



 乃愛はそんなことを言いながら、僕のことを下から見上げるように見る。



 ……なんだろう、周りの目が生暖かい気がする。僕はちょっと恥ずかしくなったので呼ぶのをやめた。



 そう言うやり取りをしている内に僕の番が来たので、僕は準備に向かうことにした。乃愛はなぜかついて来ようとしたので、待っておくようにいっておいた。

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