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運動会の準備 ②



 今日は乃愛は僕の家のリビングで、運動会用のお弁当の練習をしている。乃愛は何でもそつなくこなすタイプだから、練習なんていらないかもしれないが、母さんに誘われたらしい。

 でも練習で作ったものをどんどん僕に食べさせようとするのだけはやめてほしい。僕がぶくぶくと太ってしまう……。


 乃愛は「太っても博人は博人だよ?」とか言っていたけれど、僕はそこまで太りたくはない。

 僕はリビングの母さんと乃愛を横目にゲームをしている。さっきまで勉強をしていたので、今はゲームの時間である。



 折角なので、一度目の高校二年生でやっていなかったゲームをやっている。

 一度目の時にやったゲームもよっぽど好きだったものはやっているけれど、それ以外だとやっぱりやったことのないゲームに手を出してしまっている。




「博人、今日は何のゲームやってるの?」

「育成ゲーム」

「育成ゲームって、なんか育てるんだけっけ? 現実で色々育てるではなく、こういうので育てるのって面白いよね」




 乃愛は異世界だとなんか気まぐれに育てたりとかしていたのだろうか?

 僕はそんなことを思いながら、ゲームを進める。今回やっているのはモンスター育成ゲームである。僕が気に入っているのは見た目がかっこいいドラゴン系である。




「博人、私がドラゴンもってこようか? 飼う?」

「……乃愛、いらないよって僕が言うの分かって言ってるでしょ」

「うん。まぁ、博人が断っても断らなくても私にとってはどっちでもいいもん」



 にこにこと笑いながら乃愛はそう言って、先ほどまで卵焼きを持ってきて僕に食べさせようとする。

 自分で食べようと思ったけれど、ゲーム中で両手が埋まっているのであきらめて乃愛に食べさせられた。




「美味しい」

「良かった。博人の好みを追求しているからね!」


 ……確かになんか乃愛は、僕の好みの味のものばかり作っている気がする。僕の胃袋も結構掴まれているのかもしれない。




「博人、運動会のお弁当は博人の好みのものばかり入れるからね!」

「乃愛の好みのものもいれなよ」

「私好き嫌いないしー。そもそも食事は私にとって必須のものでもないし。私が食事を楽しいなって思えるのは、博人が一緒に食べてくれるからなんだよ?」



 乃愛はそんなことを言いながら、僕に向かって笑かける。

 食事に対してこれといって何か特別なものを見出さない乃愛。それでいて人に関しては何の興味も抱かない乃愛。……僕のこと以外、多分、その辺に転がっている何かだと思ってそうな乃愛。


 ……うん、想像しただけでも本当に乃愛は退屈だったんだろうなとは思う。僕がその退屈を紛らわせられているかは正直実感は分かないけれど、目の前の楽しそうな様子は本心だというのは分かる。



 もっと乃愛が折角普通の人間として此処にいるのならばもっと、乃愛がこの世界を普通の人間の女の子のように楽しめるようになればいいのに。いつか、乃愛が僕に飽きたとしても乃愛の世界が輝いて居られたらきっといいのになってそういう風に思うのは、僕が乃愛に情を感じているからだろう。






「博人、運動会も頑張ったらご褒美ちゃんともらうからね。下手に目立たないようにもするからね」

「うん」

「ふふ、私、博人からのご褒美がもらえるかもって思っているだけでとっても楽しみなんだよ。人間って本当に不思議。同年代で集まって、運動をする日を作るなんて。私には理解出来ない日だけど、博人からご褒美もらえると思うと、そういう理解出来ない日も楽しみ。博人が頑張っているのも沢山応援する」

「うん」



 まぁ、確かに異世界出身の乃愛は運動会って何でするんだろうって感じなのだろう。異世界だとこの地球よりも命のやり取りが多い世界だし、この世界は大変平和ボケしているように見えるだろう。



「あ」

「博人、どうしたの?」

「育成失敗した」



 つけたくない負のスキルをつけてしまった。

 育成ゲームってこういうのもつくし、その辺は大変なんだよな。



「ふぅん。博人の言う事きかないとか生意気」

「……乃愛、ゲームのモンスターだからね?」



 まさか、流石の乃愛もゲームのモンスターをどうにかできないだろうが、一応そう言っておく。

 それにしても乃愛も大分、地球に慣れてきているとはいえ、こういう物騒な発言を時々することはあるものだ。






「私なら博人が育成してくれるなら、喜んでなんでも言う事きくのになぁ」

「乃愛はモンスターじゃないでしょ」

「モンスターじゃなくても飼おうと思えば飼えるよ。私は博人が飼ってくれるのなら従順なペットにぐらいなるのになぁ」

「そんなアブノーマルなの、いらないから」




 そう言ったら乃愛は何だか楽しそうに笑っていた。






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