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乃愛と、旅行 ⑨

 滝というのはやはり迫力が凄い。

 テレビとかで、滝の上から飛び込みみたいな恐ろしい真似をしている人とかも世の中にはいるらしいけれど、普通にヤバいと思う。僕は絶対にしたくない。

 ものすごい勢いで水が流れ落ち、その光景は神秘的だ。


 やっぱり滝というのは、こうやって観光で見るものだよなとおもう。

 乃愛は何でこんなの見るんだろう? って顔をしていた。




 僕はこういう自然とは離れた場所で暮らしているから、こういう滝を観光で見に行こうとするけれど乃愛は異世界でこういう自然の中を自由気ままに移動していたのだろうと思う。

 実際になんか、凄い巨大な滝から飛び込んだこともあるらしい。

 



 異世界には謎の、天より落ちる滝みたいな名所があるんだとか。その滝の上には、不思議な空間が広がっているらしい。……やっぱりファンタジー世界というのは、不思議な場所で溢れているのだろう。

 魔法という力がある分、それだけ摩訶不思議な光景ばかりなのだろうと思うと聞いている分には楽しくなる。

 まぁ、実際には絶対に行きたくないけれど。僕みたいな凡人がそんなところにいったら即死ぬ未来しか見えない。



 何だか滝の方に身を乗り出している子供がいて、落ちそうになっているのを見てはっとなる。

 乃愛がすぐにその子供を抱きあげて助けていた。さっきまで隣にいたのに凄いスピードだ。


 明らかに人間業じゃない動きだったが、相変わらず常識改変がきいているのか周りは全く乃愛の様子を疑問には思っていないらしい。




「乃愛がああやって人助けするの意外だった」

「博人があの人間死ぬの嫌そうだったから助けただけだよ? 博人、目の前で人が死ぬとか嫌そうだもの」

「当然だよ。そもそも僕は目の前で人が死ぬのなんて見た事ないし」



 こそこそと乃愛とそんな会話を交わす。



 それにしてもやっぱり乃愛は生き物の死とかになれているのだろう。異世界だとやっぱり命も軽そうだし、乃愛もそういうことを行っているのだろう。とはいってもしばらく一緒に過ごしているからか乃愛に対する恐怖は感じないけれど。



 

 そして滝を見た後は、明日も学園なので帰宅することにする。

 乃愛は「もっとみて回ってもいいよ? びゅって帰るのも」と冗談で言ってたけれど、僕が当然それを拒否することは分かっていたようだ。



 それにしても頼む気はないけれど、瞬間移動ってどんな感覚なのだろうか? 乗り物酔いみたいになんか色々酔ったりするんだろうか?


 そんなどうでもいいことを考えながら、電車に乗るための駅へと向かう。バスなどを乗り換えてしかつかないので、乗り換えを間違えないようにちゃんと調べる。

 こういうところで乗るバスを間違えると、予約している帰りの電車の時間に間に合わないかもしれないし。



 僕は二日間の歩きですっかり疲労しているが、乃愛はやっぱり元気である。体力お化けというか、こういう移動ぐらいで疲れる意味も分からない様子だ。やっぱり神様ってすごいんだなと思う。




「博人、大丈夫?」

「……ちょっと疲れているだけだから、大丈夫」

「博人、私がついたら起こすから寝てたら?」



 乃愛の言葉に甘えて、眠ることにする。

 電車への乗り換えのタイミングなどで起こしてもらった。電車に乗ってからは長距離移動なので、ぐっすり眠ることにする。



 乃愛の視線は感じるが、眠いものは眠い。

 僕の体力不足がよくわかる。もう少し運動でもしたほうがいいのだろうか。……まぁ、結局本を読んだりで時間をつぶして運動なんてしなさそうだけど。







 何だか時々目を覚ますと乃愛がお菓子を食べさせようとしてきたりする。



「乃愛?」

「博人を餌付けしているみたい。楽しい!! 寝ぼけている博人、可愛い」


 などという乃愛に、お菓子を食べさせられる。

 寝ぼけた状態でパクパク食べる僕に、乃愛がにこにこ笑っているのが分かった。


 まぁ、寝ぼけててあんまり乃愛が何て言っているか聞き取れなかったけれど。






 そして家の最寄り駅に到着する。さっきまで寝ていたので、ぼーっとしている僕の手を乃愛が引く。

 



 そのまま迎えにきている両親の車に乗った。






「おかえりなさい。博人、乃愛ちゃん」

「ただいま」

「ただいまー!」



 母さんの言葉にも、乃愛は元気である。




 何だか助手席に座っている母さんにカメラで撮った写真を見せている。



「博人がね」

「これは、博人が」



 と、僕の名前ばかり口にしている。



 乃愛の写真もあるんだけどなぁ……。まぁ、乃愛が僕の写真をとりまくっていたからだろうけれど。






 それにしても僕はやっぱりまだ少し眠い。

 明日の学園でもまだ疲れているかもしれない。




 そんなことを考えながら家に到着し、母さんの用意してくれた夕飯を食べた。

 そして風呂に入ってから寝ることにする。



 乃愛が「一緒の部屋で寝る!」とか言い出したけど断っておいた。疲れている僕なら押し切れると思ったんだろうか?



 


 そして僕と乃愛の初めての旅行は終わるのだった。




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