乃愛と、旅行 ⑤
ロープウェイから降りて、次は少し気になっていたミニチュアの世界遺産の建物が並んでいる観光スポットに行くことにする。
僕は海外旅行に行ったことがないからなぁ。だからこそ、結構世界中の建物って気になったりもする。
乃愛は僕が行きたいと言えばすぐに一緒に行くなんていうけれど、乃愛が行きたいところはないのだろうか?
「乃愛は行きたいところ大丈夫?」
「私は博人と一緒ならどこでも嬉しいし。それに私もここ気になってたもん。だって此処って日本って国なんでしょ? それ以外の国も気になるもんね。博人が望むのならばびゅって移動してもいいんだけど、嫌なんでしょ?」
「うん。いや」
「ふふ、そういうから私は人と同じように移動しようとしているんだからね? 博人同じように楽しむよ」
にっこりと笑いながら、乃愛はそんなことを言う。
……本当に乃愛は、別に僕が言うように人の枠組みにおさまったまま行動する必要は何もないんだよなぁ。だって乃愛は神様で、そもそも人とは違う生き物で。
だから、僕の言う事なんて聞く必要もないし、僕の意見何て聞く必要も全くないのに。
「乃愛は、一人で行きたいなら行ってもいいけど……。この世界で過ごすなら人としては過ごしてほしいけどぼくがそれを制限なんて出来ないし。もちろん、周りにバレないようにはしてもらわないといけないけど」
「博人ー? 私はそもそもこの世界にこんなにとどまっているのは博人がいるからだよ! というか、博人は私がそんな風に自由に動いてたら私を傍にはおいてくれないでしょ? 私はなら普通になるべくそういうの使わないよ。ほら、それより楽しい旅行なんだから、写真撮ろう!」
乃愛は全く気にしないとでもいう風に、とても楽しそうに笑ってそんなことを言った。
そんな乃愛の言葉を聞いて、僕も笑った。
それからは世界遺産のミニチュアとの写真を沢山撮ったりした。
「ねぇねぇ、博人、こっちが日本の奴? 私も行った事ないの結構あるね。同じ国でこれだけ文化が違うっぽいの面白いかも!」
「国内でも色々違うからね。僕も行ったことないの沢山あるからなぁ」
「ねぇねぇ、博人、全部行こうよ」
「……んー、全部はお金が足りないんじゃないかな。だから行きたいところ考えて厳選してやる形かな。あとは特に海外だと高いから。国内も旅行するとやっぱり高いけど」
なんだろう、多分乃愛はお金を作ろうとすれば幾らでも作れるんだと思う。だからやろうと思えばなんだって出来るし、何処へだっていける。でも僕は海外旅行とか行くならちゃんと自分でお金を稼いでからがいいなぁと思うし。
「国外に出る時って、なんか乗り物のるの? 陸地?」
「いや、飛行機か船だね。乃愛、飛行機はのったことある?」
「なんか空飛んでるものだっけ。この世界の人間ってそういうところ凄いよね。あんな飛べる鉄の塊作るなんてさ」
でも確かに飛行機って、凄いと思う。
だって、鉄の塊をあんなに高い位置で浮かせているのだから。それも魔法も使わずに言うんだから改めて考えると凄いよなぁ。
でも時々飛行機も落ちることもあるから、怖いものだと思う。だってまず落ちたら死ぬからなぁ。いや、乃愛は死なないんだろうけれど。
そんなこんな話しながら見て回って、乃愛はヨーロッパのお城とかも気に入ったみたいだ。異世界だと西洋系の建物の方がなじみ深いのだろう。
乃愛がぼそっと、「海底神殿とかは流石にないのか」とか言ってたけど、異世界だとやっぱりそういうのあるの? って思った。外だし詳しく聞かなかったけれど。
ファンタジーの世界だとやっぱり、地球よりもずっと幻想的で非現実的な光景が広がっているんじゃないかなとそんなことを思った。
乃愛は沢山写真を撮っていた。他の観光客の人に僕と乃愛とミニチュアと撮ってもらったりした。
それにしてもやっぱり土日だと観光客も多くて写真を撮っている人が沢山いるのが見かけられる。
カップルも多い。というか、僕たちもカップルとみられているみたいで、お店に入ると「彼氏と仲良いね」とか言われていた。しかも、乃愛が否定しないし。
結構写真を撮ったり見て回ったりしてから、僕と乃愛は旅館へと向かった。
それにしても結構歩き回って僕はつかれた。やっぱり僕は体力がなさすぎるなと思う。
布団を引いて横になっている僕に対して、乃愛はにこにことしながら元気そうである。
「博人、疲れたの? マッサージとかする?」
「乃愛、マッサージ出来るの?」
「漫画とかで見た」
見ただけで出来るのか? って感じだけど、乃愛なら出来るんだろうなぁ。
疲れ切っていて僕は、乃愛にマッサージしてもらった。乃愛は誰かにマッサージするのも初めてだろうに、とても気持ちがよかった。
「博人、気持ちよさそう」
「うん、ありがとう、乃愛」
「博人にマッサージするの楽しいから全然いいよ」
乃愛はそんなことを言いながらにっこりと笑った。