乃愛と、旅行 ④
ロープウェイ乗り場までのバスに乗ってロープウェイ乗り場へと到着する。
ロープウェイに乗るのも子供の頃以来な気がする。まさか女の子と二人旅をすることになるとは思っていなかったものである。
「博人、どんどん上に行くね」
「景色がいいよね。でも落ちたらどうしようって少し怖いけど」
「落ちても博人は私が守るよ?」
乃愛はそんなことを簡単に言ってのける。
ロープウェイからの景色は、とても綺麗だった。色づく紅葉。そして小さく見える街の光景。きっと夜にきても綺麗なんだろうななんて思ったけれど、ロープウェイは大体夕方に終わるみたいだ。
「夜に見ても綺麗そうなのになぁ」
「夜に二人で来る?」
「……ロープウェイしまっているよ? 野生動物もいるだろうし」
「私と一緒ならいけるでしょ? 本当に博人は、私の力を使おうとしないよね」
「それはあくまで乃愛の力で僕の力じゃないし」
そう言ったら、乃愛は何だかおかしそうに笑った。
ロープウェイが到着し、乃愛に手を引かれて降りる。此処から降りる時も足を踏み外したら大変そうだななんて心配してしまったりもする。
下りた先で猿が飼育されているので、見に行った。結構匂いがしてびっくりした。乃愛はそう言う匂いをかいでも特に気にした様子がなさそうだった。それにしても乃愛が軽く睨みつけるだけですぐに逃げるんだよなぁ。猿も。
やっぱり動物だと乃愛のこと本能で感じられるんだろう。そう考えると人って結構鈍い種族なのかな。
乃愛が本気で殺気でも出したら皆逃げそうだけど……、僕も乃愛に本気で殺気を向けられたら流石にびっくりするかもしれない。でも乃愛は僕に本気でそういうのを向けに来ることはないだろうし、考えても仕方がないことか。
「ねぇねぇ、あっち行く?」
「お祈りするところあるね。お祈りする?」
「んー、私はこの世界の神様にお祈りすることはないなぁ」
「……挨拶だけしたら? 僕は一応お祈りする」
そういうわけで、お賽銭箱に五円玉を入れてから手を合わせる。乃愛はなんか挨拶だけしたっぽい。その後、上の方にご神木とかがあるみたいというのが分かったので、そちらまで向かってみることにする。
結構険しそうな道だけれども、乃愛と一緒だし大丈夫だろう。
でも獣注意みたいなことかかれているとびびるけれど。あと、僕の体力は持つかな?
「博人、体力不安なの? ご飯食べてから行こうか。というか、博人が倒れそうになっても私が抱えるから大丈夫だよ?」
「……いや、それ見た感じ情けなさすぎるじゃんか。それは最終手段で。命の危機とか有る時だけ」
「博人は結構頑固だよね。自分の意志を感じない感じが、博人っぽい」
そう言う会話を交わしながら食事をとった。
結構道のりが長さそうなので、先に体力は回復しておかないと。あと飲み物を買っておく。
「よし、行くか」
「うん」
にこにこしている乃愛と一緒に道を歩き始めた。
何だか中々険しい道。この先にご神木みたいなのがあるって不思議だよ。
土日だからまだ人は結構いるけれど、これ、人がいない時間帯だと大変だと思う。というより不安になりそう。
僕は乃愛が隣にいるから、そういう不安は一切ないけれど。
というか、僕は乃愛と一緒じゃなければこういうところにはやってこないだろう。ロープウェイ乗り場の周辺で終わりそうだ。僕も乃愛が一緒だからこそ、結構行動的になっている気がする。
乃愛の影響を僕も受けているんだなって改めて思った。
「……というか、こけそうで怖いな」
「博人はこういう道歩きにくい?」
「うん。乃愛はすたすたいくね」
「私が住んでたところだと、もっとこう……こんな風に大変な道あったし。私は幾らでもそういう所行けるよ。博人もいきたかったら、一緒に色んな所行こうね。というか、こけそうだね。手かして」
僕は乃愛に手を引かれながら道を進む。乃愛は本当に運動神経も抜群だと思う。
「はぁはぁ」
「博人疲れた?」
「ちょっと、飲み物飲む」
ずっと歩いていると僕はすぐに息切れする。乃愛が涼しい顔をし過ぎだと思う。
乃愛は僕が息切れしていても、汗だくでも、嬉しそうににこにこ笑っている。
飲み物を飲んでからまた進む。結構階段もあって疲れたけれど、何とか時間をかけて到着する。
「はぁ、疲れた」
「お疲れ、博人。それにしても結構面白いね。人間にとってはちょっとした冒険なのかもね」
「そうだね……。小さい子とかだと特に大変かも」
こういう場所って、小さい子とかもきたりするんだろうか。
でも小さい子とかだと元気だから進めるのかな? ただ獣注意の表記はあるから、あんまり来れないものかなって思うけれど。
帰り道も大変だった。乃愛が僕を背負おうか? なんてよく聞いてきたけれど、拒否した。なんとか自分の足で、ロープウェイ乗り場まで戻った。疲れたけれど、何だか妙に達成感がある。ただ筋肉痛になりそうな気もするけれど……。