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乃愛と、旅行 ②

「博人、おはよう!! 起きて―」

「……乃愛、もう、時間?」

「うん」


 旅行の当日。

 乃愛に朝早くから起こされた。


 僕はまだ眠たいけれど、旅行を楽しむために早い時間の電車を予約しているから仕方はないのだけど。

 というか、乃愛は神様だけあって、睡眠も必要ないからなぁ。

 僕は眠いけど。でも乃愛がいれば寝過ごすことはないから、それはそれでよい事なんだと思う。

 



「博人、眠そう。着替えれる? 博人はパジャマのままでもいいけど」

「いや、いやだよ。着替えるから」

「手伝おうか?」

「それはやめて」



 乃愛なら本気で着替えとか手伝いそうだけど、流石に恥ずかしいからやめてほしい。

 世の中にはそういうのを女性に手伝ってほしい人もいるだろうけれども……。そもそも大人の男が、着替えを手伝ってもらいたい感覚は僕にはよくわからない。

 ああ、でも漫画とかの世界だと人からそうやって世話をされるのが当然の生活をしているとそうなるのかな。




 着替えをしている間に、乃愛には部屋から出て行ってもらう。

 でも途中で「まーだ?」って言いながら開けようとするのやめてほしい。覗くのやめるようにいったら、「私の着替えも覗いていいよ?」ってそういうことではないから。




 着替えを終えたら、乃愛は満足そうに笑っていた。そういえば、今着ている服って、この前乃愛がショッピングセンターで選んでいた奴だった。自分が選んだ服を僕がきていることが嬉しいらしい。僕にはよくわからない感覚である。


 旅行に行く荷物はもう準備しているのだが、おいている荷物の周りをクラがうろうろしていた。クラも一緒に旅行に行きたいという意志を示しているのかもしれない。

 ペットを旅行に連れて行く気はないので、諦めてもらうことにする。



「クラ、お土産に何か買ってくるから」


 なんて僕は言いながらも猫へのお土産ってなんだろうって、自分でもわからなかった。旅行先でいいものが見つからなかったら近所のペットショップで買おうなんて考える。



 クラは僕が撫でると大人しくしていたけれど、乃愛に「ふふふーん、クラはお留守番だからね! わ・た・し・が博人と一緒に旅行に行くんだから」なんて言われて、シャーッって言ってた。

 ……何で乃愛は神様なのに、猫と張り合っているんだろうか。


 母さんと父さんはその様子を見ながら、笑っているし。

 本当にクラは図太いというか……乃愛に対する恐怖とかなさそうだからな。それか僕と似たような感じで、乃愛が凄い力を持っていてもこっちに何かしてくるって思ってないのかもしれない。



 朝ごはんは母さんが朝から軽く準備してくれたものを食べる。朝ごはんを食べずに出かけるとお腹がすくから、軽くでも準備してもらえると助かるなと思った。

 乃愛はずっとご機嫌なので、僕にあーんしようとしてきたりしたけれど、僕はそれにのらなかった。

 ちょっとむすっとした乃愛は、「いいもん。旅行中にあーんって、食べてもらうもん」って言ってた。……旅行先でもあーんしてもらう気はないけど。






 駅は近いのだけれども、今回は荷物が多いから母さんと父さんが車で送ってくれることになった。

 後ろの席に僕と乃愛が乗り込む。





「博人、楽しみだね!」

「うん」

「博人、まだ眠そう?」

「そりゃそうだよ。顔洗っても朝早ければ眠いものは眠い」



 まだ外もそれなりに暗いし、休みの日に早起きって僕はあんまりしないから。

 僕と乃愛がそんな会話を交わしているのを見て、母さんは「相変わらず仲良いわね」なんて言って笑っている。


 そういえば、僕と乃愛は周りからは幼馴染ってことになっているから時々どんな風な記憶がなっているのか確認もした。一応どういう設定になっているか知るのもありかなと。結構細かく常識改変されているっていうか、いい具合にかみ合っていると言うか。




「博人、電車の中で寝てもいいからね。私は眠くないから寝過ごしはしないよ」

「うん。……本当に乃愛は元気だね」

「うん。博人と出かけられるから元気だよ!!」



 本当に乃愛は元気だなと思う。



 そう言う会話を交わしているうちに駅に到着する。何回か乗り換えて、目的地に向かうのでその間時々仮眠をとる。乃愛がちゃんと起こしてくれるので、乗り換えミスがないのが楽だった。最後の電車は指定席で、時間も長いので、僕はゆっくり寝ることにする。



 途中で目を覚ました時に乃愛がじーっと僕の顔を見ながらにこにこしていた。




「乃愛、ずっと見てたの?」

「うん。博人の寝顔、見てた」

「楽しい?」

「うん。楽しい!」



 じーっと見られる中で眠るのも落ち着かないので、一回起きた後は僕も起きていた。外の景色を見るのも何だか楽しかった。


 あと乃愛は電車の中でも僕の写真を撮っていた。乃愛の写真も撮ってあげた。



 近くの席に座っていた男性グループが、「いいなぁ」「俺たち男だけなのに」「彼女ときたい」などといっていて、別に僕と乃愛は恋人同士ではないんだけど……なんて思うのだった。





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