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乃愛と、ご褒美 ②



「乃愛?」


 どうして乃愛は僕をぎゅっと抱きしめ返して、離そうとしないのだろうか。

 僕の心臓は、ドキドキ、バクバクしている。

 柔らかい感触と、息遣い。うん、なんか変なことをしている気分。



「ふふふ」


 僕の胸元で、乃愛は嬉しそうに笑う。

 ……いや、もう本当に落ち着かない。というか、僕が離そうとしてもぎゅってされているし。乃愛の力は強いから、僕が離そうとしても離せないっていうか。




「乃愛、もう十分じゃない?」

「ううん、全然。私はもっと博人とぎゅっとしていたいから」

「……何だか、凄い楽しそうだね?」

「楽しいよ。というか、幸せな気持ち。大好きな人から抱きしめられるのって、こういう気持ちなんだなって!!」

「……乃愛、凄く恥ずかしいこと言っている自覚ある?」

「恥ずかしいとか関係ないよ。そもそも自分の思っていることを言うのに躊躇う必要ないし」


 乃愛は自由人で、自分の好きなように動き続けている。そういう風に自由に生きられるだけの強さがあって――自分の本音を誰かに否定されるなんて考えていないような無邪気さがある。

 僕とは正反対というか、全然違う生き方をしていたんだななんて思う。




 ……というか、本当に乃愛は全然僕のことを離さないんだけど。




「乃愛、そろそろ離れない?」

「いーや! もうちょっと、抱きしめてもらいたいから。駄目?」

「……あー、うん、じゃあ、もう少し」



 なんかこうやって乃愛に頼まれると、否定しにくいというか……何だかんだ僕も乃愛がいるのに慣れて、乃愛の言葉を聞こうって気にはなっているんだよなぁ。

 落ち着かないし、ドキドキはするけれど、乃愛の体温が心地よい気もする。




「ふふ、博人はドキドキしてるね」

「……まぁ、女の子を抱きしめたこともないから」

「博人が誰も抱きしめたことがなくて良かった。だってそんなのいたらねぇ……」



 ……その先は何を言おうとしていたのだろうか。そんなことを考えながらも、抱き合ったままって、うん、変な感じ。



 乃愛が満足するまで抱きしめあっていた。

 ……乃愛はその後も嬉しそうににこにこしていた。





「乃愛、満足した?」

「んー。一先ずは! でもまた機会があったら博人に抱きしめてもらう!」



 なんか乃愛の中では、それが決定しているらしい。

 ……こういうご褒美も、もしかしたらそのうち、慣れていくのかもしれない。とはいえ、離れた後もなんか変な気分だったけれど。




 乃愛って、異世界で神様だし、長く生きているし、見た目も良いから多分色んな人に求められたのだと思うけれど――それでも僕からご褒美をもらっただけで、凄く嬉しそうに笑っていて、やっぱり僕にはあんまり理解は出来ない。でも乃愛は僕にご褒美をもらっただけで本当に嬉しそうなんだよなぁ。






「博人、運動会も頑張ったらご褒美頂戴」

「……早速?」

「うん」

「乃愛が本気出したら凄いことになりそうだから、それなりにしてね」

「本気出さない方がいい?」

「……それでさ、新記録とか出されても大変だよ? 陸上部に勧誘されたりするし」

「博人との時間なくなりそうだし、それなりの活躍にする。でもそしたらもっとご褒美!」

「……というか、そんなご褒美とかもらってばかりだとありがたみとかなくならない?」

「全然! 毎日毎秒あってもいいぐらい」




 乃愛に問いかけたら、はっきりとそんな風に言われる。

 そう言う風にはっきり言われると少し恥ずかしい。


 というか、これからどんどん僕にご褒美を要求する気なのだろうか……。

 乃愛が楽しそうならばそれはそれでいいけかなとは思うけれど。



「……運動苦手だから、運動会ってあんまり気が乗らないなぁ」

「博人、運動会嫌いなの? 運動会、つぶそうか?」

「それはやめて」



 運動会をつぶそうなんて物騒なこと言わないでほしい。そもそもつぶすってどうやってつぶすつもりなのだろうか……。それは聞くのは怖いのでやめておこうと思った。


 運動会……僕は普通に参加して、それなりに頑張るだけだけど、また杉山たちは何か起こしたりするのだろうか。いや、この場合は杉山たちが起こすっていうより、杉山たち目当てに色んな人がやってくるって考えるべきか。


 此処で杉山たちが何か起こすかもなんて口にしたら、乃愛はすぐに杉山たちをどうにかしようと物騒なことをしそうなので一先ず口にはしないでおく。



 ……まぁ、何かあったとしても乃愛が何とかするだろう。

 乃愛はご褒美目当てに何だかんだ運動会を何もなく終わらせようとはするだろうし、杉山たちの異世界騒動が起きたとしても乃愛ならばなんとか出来るだろうし。



 僕はただ相変わらず気づかないふりをしてのんびり過ごすだけである。




「運動会って、お弁当とか準備するって漫画にかいてあった! 私、おばさんと一緒に博人に食べさせるお弁当作る」

「うん。頑張って」



 乃愛は運動会に向けて、お弁当作りを母さんから学ぶ気満々らしかった。

 乃愛は基本的になんでも出来る天才肌な存在なので、美味しいお弁当が出来ることだろう。




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