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乃愛と、ご褒美 ①



 文化祭が終わった後、僕と乃愛は家へと帰宅する。

 杉山たちは、乃愛のことを探していたけれど、見つからなかったからと落ち込んでいたようだ。

 そんなに杉山は乃愛と関わりたいのだろうか? 乃愛は僕の隣でずっとにこにしていたけれど、乃愛の常識改変って本当にすごいよなと思った。





「ふふふ~ん♪」


 乃愛は僕と手を繋いで、嬉しそうににこにこと笑っていた。




「博人、文化祭って結構楽しかったね。これが、来年もあるの?」

「うん。毎年あるよ。高校生活の文化祭は来年で最後だけど。その後、大学に入ったら大学の文化祭だね」

「博人と一緒に見れるなら楽しそう」

「こういうのって学生時代じゃないと経験出来ないし」


 文化祭を当たり前みたいに過ごしているけれど、大人になったら文化祭に参加することもなくなるだろうし……この文化祭の思い出も将来的には懐かしい思い出になるのだろうか。

 ……特に乃愛が一緒だし、余計に思い出深くなるんだろうなぁ。



 それにしても乃愛が文化祭を楽しんでくれたみたいで良かった。乃愛にとっての初めての地球での文化祭だから、出来れば楽しんでもらいたかったから。




「来年の文化祭も楽しみだなぁ。まだ一年もあるんだよね。私にとって、一年ってとっても短いものだったけど、博人といるとそれも長そう!」

「そうなの?」

「うん。私は産まれてからそれこそ博人が想像出来ないぐらいずっと、長く生きている。その間、退屈だった時の方が凄く長かったもの。だけど、博人と出会ってからは今までよりずっと面白くて濃い日常だもん」



 乃愛はそういうことを言うけれど、正直言って僕との日常がそれだけ面白くて濃いなんてあんまり実感は湧かない。乃愛にとっては真実そうなのだろうけれども……、何だか不思議な気持ちだ。



「博人は全然実感ないよね。私の能力が効かないことも、私の力を知っても私と普通に接しているのが本当にすごいんだよ」


 乃愛は本当に、僕のことを肯定し続けるというか……乃愛に会うまでこういう風に誰かに言われ続けたことなかったから、やっぱり少し不思議な気持ちになる。

 



 そう言う風な会話をしながら、家に到着する。


 


「ただいま」


 そう口にしながら、家の中へと入る。乃愛も普通に僕の家に帰宅する事も多い。

 母さんから文化祭のことを聞かれた乃愛は、嬉しそうに文化祭の出来事を語っている。異世界関連のことは話さないようにしている……というよりも、あまり関心とかがないのだと思う。だからこそ、異世界のことは一切話さず、ただ文化祭で楽しかったことを語っている。



 ……というか、乃愛って一応常識改変で僕と幼馴染設定にされている。だからこそ、去年も母さんの中では乃愛は文化祭に参加していた認識だと思うけれど……、こうやって初めての文化祭みたいに語っていても、全く気にした様子がないのが常識改変ってすごいなと思う。



 乃愛が語るのを聞きながら、母さんは嬉しそうににこにこと笑いながら聞いていた。



 乃愛は一通り母さんに文化祭の話をし終えると、満足したようだ。

 にっこりと笑った乃愛は、ソファに座っていた僕に声をかけて、部屋に行こうと告げる。



 乃愛に手を引かれて、僕の部屋へと入る。

 クラが後ろからついてきていたが、乃愛に「だーめ」と言われて追い出されていた。



 バタンとしまった扉の向こうから、クラの不満を訴える鳴き声が聞こえて来ているが乃愛は気にしていない様子だ。


 乃愛が僕のことをじっと見る。






「ねぇねぇ、博人。ご褒美くれるんだよね?」



 そう言いながら、乃愛は僕に向かって本当に嬉しそうな笑みをこぼす。

 にこにこと微笑んで、僕のほうをじっと見る。




 これから乃愛を抱きしめる……って思うと、妙に緊張する。だって僕は、女の子を抱きしめたことなんてないから。



 乃愛の頬にキスをするだけでも、僕はドキドキして仕方なかったのに。

 ……抱きしめるって、全身で乃愛を感じるってことだよね? いや、うん……僕には大分、ハードルが高い。



「ひーろーとー?」

「……乃愛、ちょっと待って」


 何だか頬にキスした時と同じやり取りをしている気がする。乃愛は僕の言葉を聞いてもにこにこと微笑んでいる。



「博人、また緊張してくれているの? もっとドキドキして、緊張したらいいんだよ。博人がね、私の側に自分から居たいって思うぐらい、私は博人に依存してほしいもん」

「……そんなこと、言われても」

「博人は本当に博人だよねぇ。そんな博人が私は好きだけど、ちゃんと抱きしめてね。約束だから」

「うん。分かっているよ……」



 約束をしたことだから、ちゃんと守ろうとは思っている。

 でもやっぱりドキドキするのは当然なんだよなぁ。





 そう思いながら僕は、乃愛に近づく。

 乃愛は嬉しそうに、手を伸ばす。



 そんな乃愛を見ながら、僕はよしっと気合を入れて、乃愛に手を伸ばした。

 そして僕は乃愛を抱きしめる。……いや、うん、やっぱり柔らかいし、落ち着かない。


 僕も健全な男なので、普通にドキドキはする。

 すぐに離れようとしたら、乃愛にぎゅっと抱きしめられて離れられなかった。





 

 


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[良い点] あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛(語彙力喪失
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