表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/121

文化祭でも気づかないふりをする ③


 杉山たちが女神様の案内の為に『執事&メイド喫茶』から離脱したため、売り上げは落ちているようだ。

 クラスの実行委員が「何故だ」と落ち込んでいる。彼からしてみれば、杉山たちが居なくなったことも違和感がないことなので、何でだろうと不思議なのだろう。



「ねぇねぇ、博人、お客さんあんまりいなくなっちゃったね。それだけあの子たち目当てが多かったんだね」

「そうだね。ほとんど、杉山たち目当てだっただろうから」


 見た目がとてもよく人気者である杉山たち目当ての客というのは沢山いる。



 フラッパーさんたちも、常識改変の効果によりこの学園に去年からいることになっていて、去年から人気者設定になっているらしい。この常識改変の設定って誰が決めたんだろうか。女神様? それとも杉山たちと女神様で話し合って決めたのだろうか。


 そんなことを思いながら少しだけ人が少なくなった教室を見つめた。

 お客さんが少なくなったので、裏方である僕たちも結構暇になった。元々杉山たちの活躍目当てに準備してあったから、実行委員としては不本意だろう。



 文化祭はまだ明日もあるのだけど……もしかして杉山たちは明日もこの調子なのだろうか? などと僕は考えながら、ぼーっとしていた。だって、ちょっと暇になっちゃったし。


 結構暇になったからか、クラスメイトたちに自由時間でいいよと言われた。ついでに宣伝してきてほしいとプラカードを渡される。本当は乃愛にメイド服を着てほしかったらしいが、乃愛が嫌がったためプラカードだけになった。

 乃愛は「博人以外には奉仕しないよ!!」などときわどい事を言っていた。なんか奉仕させてるの? って目で見られているからやめてほしい。……僕、そういう趣味はないからね? でも乃愛はメイド服を気に入ったのかたまに家で来てご主人様とか呼んでるけど。でも僕はそんな趣味はない。





「えへへ、博人と一緒に文化祭見て回る時間が早くなったかと思うと、あの男にも感謝」



 人が沢山いるところだから、『勇者』と呼ばないようにしているのは分かるけれどあの男ってどういう呼び方なんだろうか……。




「良かったね、乃愛」

「うん、良かった」



 そう言いながら乃愛は僕にひっついている。うん、引っ付きすぎだと思う。にこにこしながらひっついで、片手間にプラカードを持っている。うん、宣伝する気は特になさそうだ。まぁ、持っているだけでも宣伝になるのかもしれないけれど。



 一応宣伝のための声かけはしているけれど、僕に引っ付いている乃愛を見て「けっ」という顔をする男子生徒は結構いる、そんな忌々しいものを見る目で、妬みの視線を向けられても困る。乃愛が威嚇したらすぐに視線をそらされたけど。


 乃愛、僕に向ける視線と周りに向ける視線違い過ぎない?

 僕に向けられないからどれだけ冷たい瞳をしているか分からないけれど、めっちゃ挙動不審になっているよ? そして逃げているよ? ちょっと威嚇するだけでこれとか、本当にすさまじいと思う。




「乃愛、ちょっと歩きにくいよ」

「えー、いいじゃん。漫画とかでこうやってくっついているの見たよ。私は博人と仲よくして、博人との仲の良さをまわりに見せつけたいって思っているもん」

「見せつけてどうするの?」

「どうもしないよ。見せつけたいだけ」



 なんて乃愛はいってにこにこ笑っている。

 僕と仲良いのを見せつけたところでどうもならないけれど。


 ……というか、学園の生徒以外の一般客もいるのだが、年上のカップルとかになんか笑われているんだけど。微笑ましい目で見られている? 僕がそういう目で見られることがあるなんて想像もしていなかったけれど、なんかちょっと恥ずかしい。


 乃愛はにこにこしっぱなしで離れる気はなさそうだ。



「……乃愛、だらしない顔しすぎだと思う」

「博人に頬にキスしてもらったし、次は――」

「はい、ストップ。とりあえずあそこ入って食べようか」




 また何か言い出そうとした乃愛を黙らせて、他のクラスのやっている和装喫茶に入る。和服の喫茶店っていうのも面白い物だと思う。

 それにしても黙らせたのにもかかわらず乃愛は楽しそうにし過ぎだと思う。



 そして案内された席に腰かける。学園の文化祭だから席っていっても学園の机と椅子だけど。テーブルクロスはひいてあって、それっぽくはしてある。和風っぽい柄のものだ。和装喫茶だけあって出されているのもお茶とか、和菓子とかそういうものばかりだ。



 そういえば乃愛は、地球にきてから和菓子ってあんまり食べていない。それもあって和菓子に興味津々な様子だ。



 お団子とか饅頭とか、乃愛は沢山頼んでいた。乃愛は元々ご飯を食べなくてもいい身体をしているのだが、幾らでも食べれはするらしいので、僕が食べれない分は乃愛が食べるだろう。



「はい、博人、あーん」

「……自分で食べるよ?」

「私が食べさせたいんだよ。ほら、あーん」



 乃愛は届くと同時に僕にお団子を差し出してくる。

 今の所、乃愛は大人しくしているし……食べるぐらいいいか、と一つだけそれで食べた。それに対して乃愛は笑っていた。


 だけど流石に恥ずかしいのでそれ以降は自分で食べた、



2022/3/20 二話目

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ