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文化祭の準備 ⑥

 乃愛がとても楽しそうに文化祭の準備に取り組んでいる。

 大体僕の傍に居て、僕のそばでにこにこ笑っている。


「博人から頬にキスもらいたいから、さっさと終わらせるの!」



 そう言い切って、乃愛はさぼっているクラスメイトにも色々言っていた。

 ……というか、乃愛のことをノースティアという神だとは理解していない杉山たちにも話しかけていて、本当に杉山たちが乃愛のことをノースティアだと認識しないことに何とも言えない気持ちになった。




 本当にそういう常識改変って、杉山たちにも効いているんだなって思った。

 というか、乃愛の隣で「ノースティア様も文化祭に来るかな?」なんて言う会話を交わしている言葉に、ずっこけそうな気持ちにはなったけれど。





「博人と一緒に文化祭の準備するの楽しい!」

「良かった」

「博人がいなかったらこんなに楽しくなかっただろうから、本当に嬉しい」



 乃愛はにこにこしながらそんなことを言っていた。



 乃愛は結構無邪気な笑みを浮かべているというか、僕の側で楽しそうにしているけれど――多分、杉山たちから見た乃愛……ノースティアはまた違う風に見えているのだろうか?

 少しそういうことが気になったりもした。

 でもまぁ、乃愛がどういう風に見えているかなんて問いかけたらややこしいことになるだろうから聞きはしないけれど。



 僕と乃愛は、文化祭当日は食事を作ったりする係なので、試作品を作成したりをクラスメイトとしている。乃愛は自分が作った試作品をやたらと僕に食べさせようとする。寧ろ他のクラスメイトに食べさせる気は全くないようである。

 というか、手を伸ばそうとしたクラスメイトの手をはたいていたり、滅茶苦茶睨んでいたりしていたし。




「博人、あーん」

「……外ではやめてね。乃愛」


 とりあえず流石にクラスメイトの前であーんをされるのはちょっと勘弁したいのでそう言っておいた。乃愛は不満そうにしながらも、にこにこしている。



 それにしても乃愛が作った試作品を食べ過ぎて、僕はお腹いっぱいになっていた。



「というか、乃愛……文化祭当日は乃愛が作ったものを他の人が食べるんだよ?」

「んー、分かっているよ。ねぇねぇ、博人。文化祭の準備を頑張ったら頬にキスでしょ。だから文化祭頑張ったら、抱きしめてほしいなぁー」

「え」



 文化祭の準備を頑張った乃愛の頬にキスをするというのも、実際問題やるとしたらどうなんだろ? みたいになっているのに……追加注文が来てしまった。




「減るものじゃないし、いいでしょ?」

「……えーと、とりあえず何か乃愛にご褒美あげるとしても、一旦家で話さない?」


 うん、とりあえずクラスメイト達の前で乃愛は気にしなさすぎだと思う。





 乃愛は何だかんだ僕の言うことは聞くからご褒美がなかったとしても、多分ちゃんと文化祭をやり切るとは思う……。ただ乃愛が不満そうにやっているように、楽しそうに文化祭を過ごしている方が僕はいいとは思っている。

 しかし抱きしめる……?

 異性なんて抱きしめたことはないので、正直そんなことを言われても戸惑いしかない。いや、年頃の高校生としては柔らかそうだなぐらいは思うけれど。



 


 その後は、普通に文化祭の準備を続けた。






「ねぇねぇ、博人、文化祭のご褒美ー!」



 乃愛は家で話さない? という僕の言葉をしっかり覚えていて、そんなことを言いながら横にべったりとくっついている。距離が近いなぁ、乃愛は。




「……乃愛、僕に抱きしめられたいの?」

「うん!! いいでしょ? 私、博人に抱きしめられたい! 駄目?」



 恥ずかしがりもせずにそんなことを言う乃愛。じーっと僕のことを見ている。

 乃愛は僕を操ることは出来ない。僕の意志を無理やり曲げることは出来ない。でも乃愛は圧倒的な力があるから、僕を力で脅してとかそういう風な無理やりは出来る。

 ――でも乃愛はそういうのはしないんだよな。それに多分、僕が乃愛に怯えるようになったら乃愛は嫌なのだと思う。


 僕のことを期待したように見ている乃愛を見ていると、乃愛がいうように減るものじゃないしいいかって思った。


 いや、まぁ、当然、恥ずかしいと言えば恥ずかしいけれど……。



「――分かった」

「やったー!! じゃあ、私、もっと頑張る」



 何だか乃愛が滅茶苦茶喜んでいた。




「……そういえば、女神様がくるって言うのがあるけど何か起きるのかな」

「お姉ちゃんは派手だから、そういうのはあると思う。でも博人は何も心配しなくていいよ。私が博人のことは守るから。それに折角の博人との初めての文化祭なんだから、お姉ちゃんにだろうとも、邪魔はさせないよ」




 ……なんか乃愛の笑みがちょっと恐ろしい。僕に向けられていないから恐怖心はないけれども、乃愛は多分文化祭で騒ぎを起こす存在とかいたら容赦しないんだろうなと思う。





「ふんふふふ~ん」



 乃愛は僕と目が合うと、何だか急に機嫌がよくなった。

 鼻歌を歌いながらその後、乃愛は僕の横にひっついているのであった。



 ――そんな風に過ごしながら文化祭の準備は過ぎて行った。




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― 新着の感想 ―
[一言] 抱きしめてチュー 楽しみすぎる
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