文化祭の準備 ③
3/6 二話目
「ご主人様、あーん」
「自分で食べれるよ?」
「私がやりたいの!」
乃愛がスプーンを差し出してくる。乃愛がにこにこしていて、拒否しずらしくて一部食べさせてもらうことになってしまった。
それにしても乃愛は、本当に嬉しそうな顔をしすぎではないだろうか。
僕のメイドを一日やるだけでこんな風に笑っているだなんて、乃愛は本当によく分からない。
「ご主人様、お昼寝するの? 私の膝枕する?」
「……乃愛、スカートで膝枕はやめた方がいいよ?」
「別にいいよ。ご主人様にならスカートの中を見られても問題ないし。なんなら、見る?」
「……そういうの軽率に言うのやめようよ」
「スカート長いし大丈夫。中をご主人様に見られても大丈夫だし。ほら、博人。おいで」
乃愛は僕にならスカートの中を見られても大丈夫なんて簡単にいう。
そして膝をぽんぽんと軽くたたき、僕に頭を置くように言う。
そうしていたらなぜかクラが乃愛の膝にいき、乃愛に怒られていた。というか、クラは普段は乃愛に爪を立てたり、シャーッて言っていたりしているのに、こうして乃愛の膝に乗るとか、何だかんだ仲がよさそうだ。
乃愛はクラをどけた後に再度、僕に膝の上に頭を乗せるように言ってくる。
乃愛が何度も何度も言うので、僕は乃愛の膝に頭を乗せる。見上げると丁度は嬉しそうに笑っている。というか、丁度胸の下だから妙な気分になるので、横を向いておく。
乃愛は嬉しそうに笑いながら僕の頭を撫でる。
何だか心地よくて、思わず寝てしまった。
しばらくして目を覚ます。
「ご主人様、おはようー」
「おはよう、ずっと起きてたの?」
「うん。博人の寝顔をずっと見てたの。博人の寝顔、とってもいい」
「そんなことを言うの、乃愛ぐらいだよ?」
「博人の寝顔だから、ずっと見てたいんだよ。博人が私の膝の上で無防備にしているのが嬉しいもん」
そんなことを言いながらまた頭を撫でられる。
何だかこのまま膝の上に頭を乗せていると、このまま眠ってしまいそうなので起き上がる。乃愛が残念そうな顔をしている。
「ご主人様、次は何しますー?」
「勉強」
「じゃあ、私もやろうっと」
来年は受験なので、僕は勉強をする予定である。乃愛はメイド姿のまま、勉強するつもりなのだろうか。なんか不思議な気持ちだ。
昼になるまでそれから勉強をした。
勉強は結構はかどった。僕の気が散りそうになると、乃愛がすぐに僕をシャキッとさせるために行動をしてくれる。
乃愛は勉強中もずっとにこにこしていた。
「乃愛、楽しいの?」
「うん。楽しい!」
いつも乃愛は楽しそうだ。
今日はメイド服を着るということをしているからか、何だか新鮮な気持ちで楽しいのかもしれない。
昼ご飯の時間になって、ご飯を食べる。
ご飯の準備もメイド服のまま乃愛はしていた。
「ご主人様、あーん」
「……母さん達いるしやめない?」
「気にしなくていいよ? おばさんたちも仲が良いなと思うだけだよ」
まぁ確かに母さんもただ見ているだけだけど。
でもさ、ちょっと恥ずかしいものは恥ずかしい。
そんなに僕にあーんしたいのだろうか?
でもそうやってにこにことみられると断りにくい。にこにことしてこちらを見ている乃愛に、そのまま口にする。
乃愛は笑っている。
「ご主人様、もっと食べよう?」
「……そんなにどんどん出されても食べれないよ」
「ふふ、ごめんね。でもなんかあーんされて食べる博人可愛いなぁって」
「いや、可愛くないでしょ」
「可愛いよ!」
乃愛には僕が可愛く見えるらしく、乃愛の目はどうなっているんだろうかなんて思う。
というか僕よりも……、
「乃愛の方が可愛いでしょ」
思わずぽつりと零せば、乃愛が目を輝かせる。
「私可愛い? 博人の目から見ても可愛いの?」
「……うん」
「博人の好みを追及して、博人が可愛いって思うようにする!」
「……そう」
「うん!!」
乃愛はそう言いながら嬉しそうな顔をしている。
ご飯を食べた後は、二人でゲームをした。
メイド服の乃愛とゲームをするのって不思議な気持ちだ。ゲームをしばらくした後は、乃愛とテレビを見た。週末の旅番組である。
乃愛が「行きたいなー。此処」なんて言っていたら母さんが「博人と二人で行ってくる?」なんて言った。
乃愛が「いいの? 人間!」なんて言っていた。何だか興奮して母さんへ呼び方が人間呼びになっているし。
「母さん、いいの?」
「問題ないわよ。それに乃愛ちゃんが行きたいのでしょ? たまにはそうやって泊りがけで出かけるのもいいわよ」
母さんがその位ならお金を出すと笑ってくれる。
乃愛は「行きたい!」と行く気満々である。まぁ、一泊二日で行ける距離だから土日に行こうと思えば行けるか。
僕もちょっと興味があるエリアだから行くのは問題ないけれど。
それにしても乃愛は幼馴染設定されているからだろうけれど、母さんは乃愛のことを本当に気に入っている風だ。……それが常識改変の賜物だと知らなければただの微笑ましい光景なんだろうけど。
そういうわけで乃愛とちょっと出かけることを計画することになった。