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夏休みに突入 ⑦



「乃愛、何で僕のベッドに入り込んでいるの?」

「だってクラが入り込んでいるんだよ! クラだけずるいじゃん」




 朝起きた乃愛に問いかけたら、そんなことをはっきりと言われた。

 それにしてもパジャマでくっつかれると、少し落ち着かないし、暑いし、離れてほしい。

 いつまでくっついているんだろうか。



「乃愛、僕起きるから離れて」

「もうちょっと寝ようよー。まだ朝早いよ?」

「……いや、起きる」



 そう言ったら乃愛は離れてくれたけれど、少し不満そうにしていた。




「乃愛、何で不機嫌なの?」

「……折角博人にくっつけてたのに、短い! ただでさえ博人の親戚って人きてて、博人と二人きりじゃないのに」

「乃愛、秋江たちが帰ったらお出かけ連れてってあげるから」

「本当?」

「うん。それに僕は不機嫌な乃愛より、乃愛が笑っている方がいいって思うし」


 それは素直な感想である。

 というか不機嫌な乃愛とか怖すぎるし。今はただ不満そうな顔をしているだけだし、乃愛は不機嫌になっても僕に何かするとかはないだろうけど、でも強大な力を持つ乃愛は不機嫌でいるよりも笑っている方が世のためだろう。



 乃愛は僕の言葉に、嬉しそうな笑みを浮かべた。



 叔母さんと秋江はそれから数日間滞在していた。その間に秋江と乃愛と僕で過ごすことも多かった。乃愛がすねて僕の手をよく握っていたり、秋江に対抗意識があるのか僕にくっついたりしていた。

 秋江はそれを見て呆れた様子だった。乃愛の方がずっと年上なんだろうけど……まぁ、その辺は乃愛だからとしか言えないか。


 ……というか、乃愛って神様なら僕よりもずっと長生きしているのだろうな。そう考えると不思議な気分だ。普段の乃愛を見ていると凄く年上なようには見えない。



 叔母さんと、秋江が帰ったその日は乃愛は特にべったりしていた。



「乃愛、暑い」

「んー、いいじゃんか。あの親戚たちがいると博人と二人じゃなかったもん!」

「……僕勉強したいんだけど」

「じゃあ私もする!」

「乃愛は頭いいし、勉強僕より必要ないでしょ」

「私は博人と一緒に過ごしたいの!」



 勉強する間は流石に離れてくれた。

 宿題をしたり、受験勉強をしたりする僕の向かい側に乃愛は座り、勉強している僕をにこにこと笑いながら見ている。



 そんな風に見つめられるのは落ち着かないけれど、乃愛の言動を気にしていても仕方がないので勉強に集中した。

 


「博人、お疲れ様ー」




 勉強を終えたら、乃愛がにこにこ笑いながら飲み物を持ってきてくれた。

 乃愛も同じジュースを飲んでいる。



 乃愛は神様で、出来ない事の方が少ない。それでも飽きもせずに楽しそうに勉強もしている。というか僕に付き合って勉強するのは退屈だと思うんだけど。

 秋江たちがいたからその反動でもっとくっつこうとしているみたいだが、乃愛の思考は相変わらずよく分からない。




「乃愛、明日は何処に行きたいの?」

「んー、博人とならどこでもいいよ! 博人が行きたい場所も一緒に行きたい!」

「僕が行きたい場所……僕、本屋やゲームショップぐらいしか行かないけど。乃愛もお気に入りのゲームでも探す? 乃愛が読んでいる漫画の新刊も出ているんじゃなかったけ。あとはネットカフェとかいってみる?」

「それどういうところ?」

「パソコンや漫画とかがおかれていて、自由に過ごせる場所だよ。僕も時間をつぶす時しか行かないんだけど、乃愛行った事ないよね」

「行きたい!」

「ただ静かにするようにね。夏休みだと結構人もいるだろうから」

「うん!」



 乃愛は結構漫画を読んで楽しんでいるので、ネットカフェも楽しめるだろう。僕は勉強道具も持ち込んで、漫画を読んだりしながらのんびりするかな。

 流石に高校生では買えない本もあるから、ネットカフェだと色々読めて楽しいし。



 そういうわけで翌日ネットカフェに行った。

 乃愛はとても興奮しまくっていた。声をあげそうになっていたので、思わず口をふさいだ。そういうのでも乃愛は楽しそうに笑っていた。



 そして僕は勉強したり、漫画を読んだりした。

 乃愛は漫画を楽しそうに読んでいた。

 個室の部屋を取っているので、時々乃愛がべったりとくっついたりしていた。




 そこで食事もとったけれど、乃愛はその食事も気に入ったらしい。

 というか、ネットカフェ自体も気に入ったみたいで「また行こう!」と言われたので、夏休み中にちょくちょく行った。





 僕と乃愛は時々出かけていたけれど、そこまで遠くに行っていないからか特に異世界要素と遭遇することはその後なかった。



 乃愛は一度だけ異世界に戻っていたけれど、それ以外は僕の傍に居た。



 そして夏休みは過ぎて行った。




 二学期がもうすぐ始まる。杉山たちがどういう風に過ごしていたかは分からないけれど、面倒なことが起こらなければいいなと願うしかない。








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