夏休みに突入 ⑥
今日は親戚が家にやってくる日である。
ちなみに親戚の家は、喫茶店をやっていて簡単なアルバイトをすることもある。
まぁ、今年は全くアルバイトしたりしてないけれど。一度目の高校二年生の時はどうだったっけ。正直、何をしたかというのをすべて覚えていないので、記憶は定かではない。でも一度か二度ぐらいはアルバイトをしていた気がする。
二度目の高校二年生においては、杉山たちの謎の現象や乃愛の出現などによってそういうことも考えてなかったしなぁ。
母さんも乃愛と出かけるっていうと結構それ用のお金もくれるし、今の所足りているし。
「ねぇねぇ、博人、親戚ってのがくるんだよね?」
「うん。乃愛も仲よくね。此処から30分ぐらいの距離の所に住んでいるから夏休みになると遊びに来たりするんだよ」
「ふーん」
「僕もそこでアルバイトをすることもあったんだよ。乃愛もアルバイトしたかったら泊まり込みでそこでアルバイトするのもいいかも」
「んー、私は博人と離れたくないから、博人がアルバイトってのしないならしないよ!」
「……乃愛はなるべく力を使わないようにして暮らすならお金も足りなくなったりするんじゃない? 大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。私、仮にも神様だからね!」
乃愛はにっこりと笑ってそう言い切った。
まぁ、変な事をしていなければいいか。
そうやって乃愛と会話をしながら過ごしていると、親戚たちがやってきた。
「久しぶりね。博人、乃愛」
「博君、乃愛ちゃん、久しぶり!!」
やってきたのは、母さんの妹である叔母さんと、その娘である秋江である。
……というか、やっぱり彼らにとっても乃愛は僕の幼馴染で、昔から知っている相手だと認識されているらしい。
正直僕にとって乃愛は幼馴染で昔から知っていいる相手ではなく、突然現れた存在なので幼馴染前提で話されると適当に流すしか出来ないわけだが……。
ちなみに秋江に関しては、まだ小学三年生だ。
……乃愛と僕と秋江で僕の部屋にいる。
元々一度目の高校二年生でも秋江は僕の部屋に遊びに来たりしていた。母さんに秋江の相手をするように言われて相手をしていたものである。
しかし、乃愛と秋江ってどんな会話をするのだろうか。
秋江は僕の部屋のベッドに寝転がってゲームをしている。そして僕は漫画を読んでいて、乃愛はそんな僕に背中合わせでべったりとくっついて、この前買っていた少女漫画を読んでいてる、
乃愛が購入して読むようになってから僕もあまり読んだことのなかった少女漫画も読んでいるが、結構少女漫画も面白いものも多いのだ。……ただ少女漫画に影響されてか、同じようなシーンとかを乃愛が再現しようとしたりすることはちょっとやめてほしいけれども。
「博君と、乃愛ちゃんは相変わらず仲良しだよね!」
「そう?」
「そうだよ。昔からべったりだったじゃん」
「へぇ」
「博君、どうしてそう他人事なの? 博君自身のことでしょ?」
そんなに不思議そうな顔をされても、僕の記憶にはそんな記憶は欠片もないので適当に流す以外の術はない。
乃愛は何だかとても楽しそうににこにこしているけれど。
……でも実際に乃愛が昔から僕の傍に居たらどうなっていただろうかと一瞬頭をかすめたが、結局のところ、そうなっていたとしても今とは変わらないだろうな。
それにしても僕と乃愛が幼馴染だと思い込んでいる人たちと会話を交わすのって不思議な気分でしかない。
しかし秋江がいようとも乃愛は相変わらずだ。羞恥心がないのか、僕にくっついているし、構とばかりに甘えてくる。僕は小学生の秋江に「仲がいいねぇ、相変わらず」ってニヤニヤされて何とも言えない気分なんだけど。
やっぱり女の子って小学生だろうとも大人びているというか、恋愛とかに早熟というか、そういう感じなんだろう。最も僕と乃愛はそういう関係じゃないけれど。
でも乃愛が僕に飽きなかったら、このままずるずる行きそうな気もするけど……。
それにしても何だか周りは僕と乃愛のことをそういう目で見過ぎでは? って思う。
のんびりと一日過ごした後の、夕飯はそうめんだった。やっぱりそうめんは美味しい。乃愛がそうめんを見て、「流しそうめん!」と言い出したので、翌日流しそうめんをすることになった。
秋江が「乃愛ちゃんは、はじめて流しそうめんする人みたいだよね。不思議! 去年もやったでしょ」なんて言ってたけど、僕にはそんな記憶はない。常識改変ってどういう感じで記憶が改変されているのだろうか……。
常識改変されているから結局のところ乃愛が何を言っても周りは違和感がないのかもしれないけれど、変なことを言って疑問に思われたら常識改変が解けたりしないのだろうかという疑問はある。
叔母さんたちが僕の家に泊まるということで、乃愛も「私も泊る」と言い出したので、乃愛が僕の部屋に泊まることになった。
「一緒のベッドでもいいんだよ、博人」
「いや、それはなしで」
乃愛には僕の部屋に布団を敷いて眠ってもらうことになったのだが、乃愛は僕のベッドに一緒に寝たかったらしい。暑いし、普通に拒否した。
……でも翌日目が覚めたら乃愛が僕のベッドに入り込んでいた。