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夏休みに突入 ③

 やっぱりというか、想像通りに水着姿の乃愛は注目を浴びていた。とはいえ、乃愛から話しかけるなオーラが出ているからか、乃愛に話しかけてくるような男はいなかった。



 そもそも話しかけてきた男は、乃愛に鋭く睨まれて、小さく悲鳴を上げてたし。うん、乃愛は僕にはにこにこと笑いかけているけれど、僕以外には冷たいからな。

 僕は誰かににらまれるとか、冷たくされるとかそんなにされたことないし、そういうのされたらびっくりしてしまうだろう。乃愛が僕のことを飽きて、僕に冷たくしてきたら……うん、ちょっと今までを考えると驚くかもしれない。




 僕は乃愛が僕に飽きてそのうち去っていくとは思っているけれど、去っていったらそれはそれで少しは寂しさを感じるだろう。




「博人、太陽眩しいね!」

「そうだね」

「ふふ、こんなに眩しい中で危険もある海にわざわざ入るの不思議だなぁ」

「乃愛の所ほど、危険はないよ」

「でもサメってやつとかいるんでしょ?」

「まぁ、でもこういう海水浴場にはあまり見かけないよ。いたらすぐに告知されて、閉鎖みたいになるし」

「いるかもしれないのが絶対に出てこないって思って、安心してこんな無防備な姿で戦う力もないのにおよぐって不思議だよね」



 乃愛はそんなことを言いながら興味深そうに海で遊び人たちを見ている。

 それにしても言われてみれば確かに。というより、自分にはそういう不都合な状態が降りかからないと思っている人が多いんだよな。きっと。

 だからこそ海で波にさらわれたらとか、サメが襲ってきたらとかそういうたらればを考えることもあまりしない。

 


 そう言う不測の事態に陥った際に、対応する術を持たないのにこうやって無防備な姿をさらけ出しているっていうのは乃愛の元いた世界では考えられないことなのかもしれない。





 そして乃愛は僕の手を引いて、海へと入る。本当に久しぶりの海だ。やっぱり口の中に入ると、海水はしょっぱい。だけど暑い日だからこそ、こうして海の中に入るのは気持ちが良い。




「博人は泳げる?」

「少しは……。でもすごい泳げるわけじゃない。それに運動神経ないから沖の方には行きたくないかな」

「沖にいったらまずい?」

「……えっとね、乃愛は何の問題もないかもしれないけれど、僕は沖の方にいったら遭難して、死ぬからね?」

「博人には私がいるから沖の方でも大丈夫だよ」

「いかないからね? 浅瀬で遊ぼうよ」

「んー。博人がそういうならそうする!」



 本当に乃愛がいれば、多分何処でも生きられる気はする。僕一人だったら絶対無理だけれども、乃愛が一人いるかいないかで色々違うと言えるだろう。




「博人、魚いるよ。つかまえる?」

「捕まえないでいいよ」



 その辺を泳いでいる魚などの生物を捕まえようとする乃愛をひとまず止めておいた。海水浴に来て、魚を手づかみにしようとするなんて乃愛ぐらいじゃないか? とそんな風に思った。

 乃愛がいちゃついているカップルたちの水のかけあいを見て、同じように水をかけあおうとして、めちゃくちゃ海水かけられた。



「うわっ」

「あ、ごめん。博人。かけすぎた」

「……いや、いいけど、びっくりした」



 思わずしりもちをついた僕に、乃愛が手を差し伸べて起き上がらせてくれる。





 神様である乃愛にとって、こうして海でただ遊ぶなんて退屈なのではとも思ったが、そんなことはなさそうで、凄く楽しそうに笑っている。





「乃愛、楽しい?」

「うん!!」



 乃愛は楽しそうな声をあげている。その笑みに周りが見惚れているが、何も気にした様子がない。

 逆に僕には何であいつがって目で見られているけれど、それも仕方がないことだろう。

 

 乃愛は僕が常識改変なんてなるべく使わないようにと言っているから、此処でも誰かを操ったりとか、注目されるのをされないようにするとか、そういうのは使っていない。だからそれも仕方がない。





 しばらく海の浅瀬で遊んでいた僕らだが、僕の体力が持たなかったので一度上がる。母さんと父さんのしいてくれているシートの所に戻る。息切れをしている僕を見て母さんは「情けないわね」なんて言っていた。





「博人、私、飲み物買ってくるね。博人、何がいい?」

「えっと、何でもいいや。お茶とかでも」

「んー、じゃあ博人が好きそうなの買ってくる」



 乃愛がそう言って飲み物を買いに向かった間、僕は座りこむ。

 それにしても暑い。こんなに暑い中、皆元気だなぁと思いながら僕は海水浴ではしゃいでいる人々を見る。



 そうしていたら、ちょっと変なものが見えた。

 沖の方になんか変なものがいる。アヒル? しかも巨大だし。すいすい泳いでいるけど、何なのだろうか。周りが何も気にしていない様子を見ると、また乃愛たち関連? 僕しか気づいていないってなると嫌だなぁと思って、僕は視線をそらした。



 乃愛が戻ってきたら乃愛にあれはなんなのか聞こう。乃愛ならばきっとあれが何なのか分かるだろうし。

 というか、時々近づいてきているんだけど、あれ、何?? 実際のアヒルではなさそう。水面に影があるから本体は水の中にあるのか?



 ……本当に何?




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― 新着の感想 ―
[一言] 結構一人の時になにかが現れますよね。だんだん無視しづらい存在感のレベルが上がってきてどこまで無視できるのか読んでいて面白いです。 更新お疲れ様です。応援してます。
[一言] アヒル… なんか和むなあ
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