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離れている間の報告 ①



「博人ー、おはよう!!」

「おはよう、乃愛」

「ただいまー、博人!」

「おかえり。……というか、夜中にもおかえりっていったけど、また?」

「うん。だってあの時、博人、寝ぼけてたでしょう? ただいまって何回でも言いたいから。博人におかえりって言ってもらえると、私の居場所が此処なんだなって思うし」



 日曜日になって、乃愛はにこにこと笑いながら嬉しそうにしていた。


 僕も乃愛におかえりというのが当たり前になっている。乃愛が僕と出会ってからそんなに時間は経過していないけれども、それでも乃愛が此処が自分の場所だとでもいう風に身体全体で示しているから受け入れてしまっているのかもしれない。


 今の乃愛はすっかり黒髪黒目の姿に変化させている。

 夜中に見た乃愛の姿は、はじめて会った時の異世界の姿だった。どちらも言動から乃愛だと分かるから、どっちの姿でも違和感はない。




「ねーねー、博人、朝ごはん、おばさんと一緒に準備したよ。ご飯もつぐね」

「うん。ありがとう」


 まだ起きたばかりで僕は少し頭が働いていない。

 乃愛は朝から元気である。というか、眠る必要もないから当然と言えば当然だろうけれども。


 乃愛がお茶碗にご飯をよそってくれたので、それを受け取って食べる。




 乃愛は何だか頬杖をついて、にこにこしながら僕のことを隣から見ている。

 ……何でご飯食べている様子をそんな風に見られているのだろうか?



「乃愛、見られていると食べにくい。というか、何で見ているの? 何も面白くないでしょ」

「ううん。面白いよ? 向こうで珍しく動き回ったら疲れちゃったの。私が精力的に動いているのがおかしいって思われているのか、色々勘繰られるしさー。ぶちのめしといたけど! 煩いから!」

「……ぶちのめした?」

「うん。でも私、少し穏やかになったんだよ? 殺してないもん」

「……ああ、そう」



 殺してないもんなどと言われても穏やかになったのかといえば頭の上にはてなマークしか浮かばない。

 異世界には異世界のルールがあるだろうし、僕がどうのこうのいうことではないだろう。



 というか、乃愛、母さんと父さんも近くにいるのだから、幾ら常識改変が効いていて違和感を感じないとはいえこんなところで異世界の話はしないでほしい。




「乃愛、それは二人の時に話して」

「うん!!」


 乃愛は嬉しそうに笑いながら僕の言葉に頷いた。



 乃愛の異世界での話は、ご飯を食べた後、二人きりの時に聞くことにする。



 僕が見かけた異世界っぽい何かについても報告しなければならないし、乃愛の異世界の話も結構気になるし。

 朝食を食べた後に、話を聞いて欲しそうな乃愛と一緒に僕の部屋にいく。ちなみにクラもついてきたから、正しくは二人と一匹がこの部屋にいる。




「クラ! 博人にくっつきすぎ!」

「にゃあああ!」

「私も博人にくっつく」


 そんなことを言いながら乃愛が僕の背中にべったりとくっついている。

 胸の感触がして落ち着かないから離れてほしい。

 今、座り込んだ僕の膝にクラが乗っていて、乃愛は後ろからひっついている。



「乃愛、離れて」

「むー。クラはくっついているじゃん」

「……クラは猫でしょ」

「それに昨日は一日頑張ったもの。博人のため、面倒なことも頑張ったんだよー。ご褒美!」

「こんなのご褒美になるの?」

「なるよ。博人と出会ってからこんなに離れていなかったから、私、凄い寂しかったもん。博人成分が足りなくて、イライラしちゃってたの。だから博人成分の補給なの」



 ……うん、良く分からないけれど乃愛が機嫌よさそうだからまぁいいとしよう。自分本位な乃愛が僕のためにってわざわざ異世界で動いていたわけだし。






「そういえばね、博人。あの『勇者』たちも異世界にいたよ。というか、結構、行き来しているみたいだね。私にも会いたいって来てたみたいだけど、忙しかったから会わなかったんだ。というか、こっちで散々クラスメイトとしてあってるしね。向こうは気づいてないけど」

「へぇー」



 それにしても杉山はよく異世界に行っているようだ。

 高校二年生で勉強も大事な時期なのだが、そんな風に異世界に何度もいっていて大丈夫なのだろうか。

 それとも主人公補正で、勉強なんて簡単だとかいうそういう感じなのだろうか。出来の良い人は授業だけでも理解出来るっていうしなぁ。


 異世界で華々しく活躍しているっぽい杉山のことは、乃愛にとってはどうでもいいことのようで杉山の話題はそれだけで終わった。




「それでね、博人、私の事を信仰している相手が色々起こそうとしていたからちゃんと止めたんだよ? 私の事を勝手に決めつけている相手をぶちのめしたりしたんだよ! 大人しくするようにちゃんと言いくるめたんだよ。偉いでしょ? これで少なくとも私の信仰者たちは好き勝手しないはず! 私からの言葉がありがたいって涙ぐんでて面白かったよ」



 僕の背中にひっついたまま、乃愛はそんなことを報告してにこやかに笑った。




 


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[一言] 乃愛ちゃん偉い
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