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女神の来訪、記憶改変もするらしい。 ⑤




 その後、女神様と乃愛と一緒に雑談を交わしている。

 ……本当に異世界の女神様と、異世界からやってきた乃愛と一緒に会話を交わしているなんて不思議な気持ちしかわいてこない。




「乃愛が当たり前のようにこの世界で、一般人として生きているなんて……。この世界に乃愛が留まることを知った時は、何を企んでいるのだろうかと思ったものですが……普通に過ごしているのならばまぁ、いいでしょう」

「お姉ちゃん、私は普通に過ごす予定だけど、最近、私たちの世界から魔物とかきすぎじゃない? どうなっているの?」


 僕が不思議な気持ちになっていたら、乃愛が僕も気になっていたことを口にしてくれた。



 杉山が『勇者』をやって異世界で救世主になっているのも、一年巻き戻ったのも、異世界人が来ているのもまぁ、百歩譲って良いとして……魔物がきたりしすぎな気もするんだよな。



 そのあたりは乃愛だって疑問に思っていたのだろう。



「それはですね……。異世界の存在を知って興味を持っている者が結構いるんですよ。この世界で好き勝手しようとしている人もいるんです。……特に今、乃愛がこちらにきているでしょう。そのことでこの地球に興味を抱いています。それに乃愛が向こうに顔を出さないから乃愛を信望しているものたちも煩いですし。……時々でいいので顔を出しません? 貴方ってば、こっちにきたっきり、帰ってないでしょう」

「えー? 私、博人の傍にいるよ?」

「貴方が好き勝手にしていればいるほど、この世界にとって予想外のことになってしまうこともあるんですよ。それに貴方が特別に思っている博人が危険な目にあったりするのですよ。この世界で普通に生きるというのならばもう少し自分のことだけではなく、周りのことを見渡しましょう。貴方一人だったのならば何も気にしなくていいですけど……、でも乃愛。貴方は本当に大切な人を見つけたのでしょう。ならばちゃんと考えなさい」



 諭すようにそう告げる女神様は、姉としての言葉を口にする。それを見ると姉妹なのだなぁと思う。

 乃愛は基本的に気まぐれで、女神様が言っているように自分勝手である。僕が遭遇した時、乃愛は好き勝手に人を動かしていた。

 というか、僕のいうことを聞いてくれているけれど、それは例外的な者なのだろうと思う。そもそも乃愛は姉にあたる女神様の言うことだって聞く気がなさそうだ。


 ……そう考えると乃愛って本当に異世界で特別な立場なんだろうなと思う。力がなければ異世界でも自由になんて過ごせない。力がなければ女神様に止められてそれで終わりになるだろうし、好き勝手しすぎて疎まれて、殺されるなんてこともあったかもしれない。

 そうならないのは、乃愛がとてつもなくて強くて、そういう存在だと受け入れられる存在感があるからだ。





「んー……」

 


 乃愛は女神様の言葉に考えるような仕草をして、こちらを見る。




「博人、私は博人が生きているならそれでいいって思っているんだけど、それで楽しく生きられればいいって。でも博人は周りの人が亡くなったりするのは嫌?」

「うん。もちろん。嫌だよ。そもそも異世界関係で誰かが亡くなるなんて、本来は亡くなるはずがなかったところで亡くなってしまうってことだろう? そういうのは嫌かなって思うよ」

「博人は、優しいね」

「優しいじゃなくて、当たり前の感覚だから。えっと、とりあえず乃愛が動いた方がこの世界で誰かが亡くなったりすることが減るなら動いてくれた方が僕は嬉しいかな」


 僕がそう言ったら乃愛は、にっこりと笑う。



 満面のかわいらしい笑みを浮かべた乃愛は、僕に向かって今度は蠱惑的な笑みを浮かべる。



「ねぇねぇ博人、私、じゃあ博人のために頑張るね。だからね、うんと褒めてね。博人がほめてくれるなら私頑張るよ!」

「……うん。僕がほめるぐらいで動いてくれるのならば、全然褒めるから動いて」

「じゃあ動く! お姉ちゃん、私博人がほめてくれるっていうから色々動くね。少しでも博人の側を離れるのは嫌だけど、なんか色々勝手に動かれるのは困るし」



 乃愛は本当に僕に褒められなければ、このまま放置する予定だったらしい。というか女神様と会話をする機会を設けていて良かったかも。僕は異世界の事情とか知らないし、このまま乃愛が色々放置していて大変な事態になったら困っていただろうし。


 あれだなあ。乃愛にはもうちょっと色々普段から聞いた方がいいのかもしれない。聞いたら教えてくれるだろうし。




「そんなに言うなら連れていけばいいのでは?」

「お姉ちゃんは分かってないなぁ。博人は絶対に異世界に行こうなんて思わないよ。この地球でも『勇者』たちにもお姉ちゃんにも私にも関わりたくないって、気づかないふりしていたんだよ。異世界になんて連れて行きたいっていっても連いてきてくれるわけないじゃん!」

「うん……よくわかっているね。乃愛」


 異世界に興味がないわけではないけど、恐ろしいから好き好んで行きたいとは思わない。

 それで色々話した後に、女神様が帰ることになったわけだが、「お姉ちゃん、帰る前に記憶消すね? 私が許可出した時には思い出すからね」って告げて何かしていた。


 女神様にまできく常識改変って……本当に乃愛って規格外だよなと思う。

 こうして僕の初めての女神様との会話は終わった。多分この後会話を交わすことはあまりないと思う。




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[一言] お労しや…姉上…
[一言] お姉さん…
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