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乃愛との学園生活のはじまり ②

 乃愛と一緒に学園にたどり着いた。

 乃愛がいても、周りは驚くことはない。まぁ、乃愛は綺麗だからそのあたりで注目を浴びていることはあるけど。だけど僕が隣にいても周りは気にした様子はない。



 寧ろ「相変わらず仲良いなぁ」と声をかけられることがあったぐらいだ。やっぱり全員に常識改変がきいているらしい。僕からしてみれば落ち着かないけれども、これが周りにとっての常識だというのならば適用しようと思う。此処で騒いで面倒なことになりたくないし。



「博人、何だか同じ格好の人が沢山」

「そりゃそうだよ。乃愛、靴は靴箱にな」


 乃愛の靴箱は……うん、当然、改変されてあるな。僕の隣なのは、そんな風に乃愛が常識改変を行ったからだろう。


 あとクラスに向かっても普通に僕らは受け入れられていた。乃愛がいても誰も違和感を感じていない様子である。なんともまぁ、乃愛の力は規格外だと思う。



 乃愛は僕の隣の席に腰かけて、にこにこと笑っている。

 僕の隣の席は、他の人が座っていたはずだが……と思いながら教室をちらりと見渡す。僕の隣にいたはずの生徒は別の席にいた。何だか一人だけ飛び出ていて、隣に生徒もいなくてぽつんとしている。

 乃愛の僕の隣になりたいからという我儘でこうなっているはずだから、もう少しこの世界で生きていくならそういう能力を使わないように言っておこうと思う。




 そうしているうちに、杉山たちがやってきた。杉山たちがやってくると、教室中が騒がしくなる。

杉山たちはクラスメイトたちに囲まれながら、席に着く。

 僕としてみれば、杉山が乃愛のことを気づいたりするだろうかと正直ドキドキしていたのだが、杉山たちは気づいた様子はなかった。



 そのことにほっとする。

 杉山たちに目をつけられたら僕が平穏な暮らしを送れなくなってしまうから。乃愛がいる時点で平穏ではなくなってはいるけど……。



 なんて考えていたら、乃愛がじーっとこっちを見ていた。



「博人の心、読めない。やっぱり不思議ー」

「……」

「博人、周りに聞こえないようにしているから、私とおしゃべりしよー?」

「えっと、はい。これ」



 僕は乃愛の言葉に、無視しにくくなってノートの一部を切り取って、そこに書いた文を乃愛に見せる。

 幾ら周りに聞こえないようにされているとはいえ、これだけ周りに人が沢山いると僕は落ち着かないから。



 乃愛は嬉しそうに笑いながらその紙に書かれているものを見る。そしてさらさらとシャーペン(僕の部屋にあったもの)で返事を書くと、僕に紙を返してきた。




『心配しなくていいんだよ? 私の力は博人以外にはちゃんときくから』



 僕の心が読めなくても、僕がどんなふうに考えているかぐらいは乃愛にも分かるらしい。乃愛はにこにこと笑いながら僕を見ている。



 僕は乃愛の書いた言葉にほっとした。




「博人ー、返事は?」

「博人ー、私、博人と話したいー」

「博人ー」



 何だか乃愛が授業が始まっても僕に滅茶苦茶話しかけてくる。本当にやめてほしい。というかもっと授業真面目に受けて。乃愛は頭の回転もはやく、こうやって授業を受ける必要もないのだろうけれど、本当にもう少し静かにしてほしい。


 乃愛の力のおかげで乃愛がこれだけ話していても、教師から注目を浴びることはない。それでも僕は平穏に過ごすことを目指しているので、乃愛の言葉をスルーしていた。……これで殺されたら困るけど、乃愛は無視されてもにこにこしているので、問題はないだろう。


 第一僕は乃愛が本気を出したら即死するだろうし、平凡な僕は太刀打ちなんて出来ないし。



 なんて考えていたら脳内に声が響いた。



『博人ー。無視しないでー。聞こえている?』


 声を上げなかった僕を褒めてほしい。うおって授業中に声をあげそうになった。



『博人の心の声、聞こえないんだよねー。だからこの声、聞こえているかも分からないんだけど、聞こえている?』


 脳内に直接乃愛の声が響いてくると不思議な気持ちになる。

 というか、僕は授業を真面目に受けているのだからもう少し静かにしてほしい。でもまぁ、はじめての授業だから落ち着かないのかもだけど。乃愛も何度も言い聞かせたらもう少し大人しくなるかな?


 その前に乃愛は僕に飽きて、授業を受ける必要もなくなるだろうけど。





 乃愛の方を見て、口元に人差し指をあてる。静かにという意味と聞こえているという意味も込めてそうすれば、乃愛はにっこりと笑った。



 というか、本当に前を見て。




 僕が黙々と授業を受ける気満々で、乃愛と話す気がないのは乃愛にも分かったらしい。途中から乃愛は静かになった。でも結構こっちを見ていた。



 落ち着かなかったけれど、僕は気にしても仕方がないので授業を受ける。




 授業の合間の休憩時間になると、乃愛は僕に話しかける。



「博人。休み時間は話せるよね? なんかはなそう」

「うん」



 何だか待てをしていた犬みたいな幻想を乃愛に見てしまう。

 こんな感じでも乃愛は、異世界の恐ろしい存在なんだよなぁ。



 

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 犬みたいで可愛い
[一言] なんでもかんでも打ち消すわけじゃないのか 無効の条件はなんだろう
[良い点] 薄井君の行動指針がブレずに、普通の人の感覚として恐怖とかを感じつつも変わらぬ日常を続けているところ 薄井君が乃愛を一人の人間?として対等に接し用としているところ(無茶なわがまま聞いたり、お…
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