目が覚めたら幼馴染が出来ていたとか……どういうラブコメ ②
5/4 本日二話目
「……ええっと」
「さっきからそれしか言ってないね? なにか聞きたいことあるなら答えるよ?」
「……いや、聞きたいことがありすぎて何処から聞いていいか分からない」
僕は混乱している。
杉山が異世界から帰ってきて、時間が巻き戻って、二回目の高校二年生を過ごしていて……。それいでて、杉山が『勇者』であることを知って、異世界から来ている魔物なんかも見かけちゃって、そして異世界の女神の声も聞いて……。
そして今はGWにショッピングセンターに行ったら、摩訶不思議な状況に遭遇して、目の前の女の子……ノースティアに遭遇した。
ノースティアは人を自由気ままに動かしていて、それでいて魔物も一撃で倒して、僕は……何故かキスされて、意識失って。
情報量多い!!
まだ5月のはじめ……杉山たちが戻ってきて一か月しか経過していないのに、どういうことなのだろうか。
「ええと、君は」
「ノースティア!」
「……ノースティアは、僕を見逃してくれるってこと? 僕は平穏な暮らしをしたい。死にたくもない」
「真っ先に聞きたいことがそれ? 博人のことを殺す気はないよ。そもそも殺すつもりなら一瞬で話もせずに殺すもの」
「あ、はい。そうですか……。うちの両親のことも殺さないでもらえると……」
「ああ。あの人間二人ね。殺さないわよ。博人の両親だしね」
「……ええと、それはとても安心なんだけど、な、なんで、此処に??」
「博人がいるからよ」
はっきりとそういう言葉を告げられる。
……やっぱり意味が分からない。というか怖い。殺すつもりなら一瞬で殺すって、そういう力がこの子はあるってことだよな。
でも目の前の子は、現状、僕を殺すつもりはない。両親のことも殺すつもりはない。それにノースティアの言っている言葉は、心からの言葉だというのが分かる。
多分、ノースティアは嘘なんて吐く必要がないのかもしれない。
だからこそ、僕は少し安心する。
目の前の存在は恐ろしいけれど、このまま恐れていても仕方がない。
意を決して僕は目の前の存在を見る。
「……僕がいるからってのは?」
「だって博人は私のダーリンだもん」
「はい??」
「ふふ、私の力が効かない存在なんて今までいなかったんだもん」
頬に手をあてられる。いや、これはまたキスされてしまうパターンか? と思った僕は思わず手でガードする。
そうすれば不思議そうな顔をされる。
「嫌なの?」
「いや、あのですねー。ノースティアにとってはともかく、僕にとってはそのキ、キスって特別なものだから、そんな簡単にしたら駄目というか、嫌というか」
「ふーん? 私、結構皆にキスするけどなぁ。力を使いやすいし」
「え、いや、やめようよ。自分を大切にしたほうがいいよ?」
僕がそう言ったら、ノースティアは少し驚いた顔をして、面白そうな顔をする。
「ふふ、博人がそういうならそうするよ」
「……ええと、うん。そうして。それで僕に興味を持っているっぽいのは分かるけれど……力が効かないからってのは??」
「私、人を操るの得意なの」
「それはショッピングセンターで見てたからよく分かっているけど……」
ショッピングセンターでのことを思い出す。
ショッピングセンターで、ノースティアは楽しそうに人を操っていた。
躍らせたり、漫画のようなポーズをとらせたり……。
「私にメロメロになって、皆、私の言う事を聞くの。私が望めば、皆そういう風にするの。だからね、全部私の思う通りにしかならないの」
「……へ、へぇ」
「私のことをね、叱れる人もいないの。叱っていたとしても、言葉をかけていたとしても結局それは私が拒否すればしないの。私の力が効かない存在って、いなかったの。――博人だけだよ」
「えええ、ええと、世界は広いから他にもいるんじゃない? 異世界からきたんだよね? だったら神様とか、ドラゴンとかそういうのとかも」
「神様もドラゴンも、私の魅了には抗えないよ? それにしてもやっぱりちゃんと異世界の存在も認識してたんだね? 本当に面白い。お姉ちゃんの力が効いてないってだけでも異常だし、私の力が効かないのはもっと異常」
「……そ、そうなんですか。お姉ちゃんとは?」
「博人の言う異世界の女神だよ。『勇者』に会いにこっちに来たはずだから、博人は知っている?」
あの女神様の妹??
ということは、この子って神とかそういう立ち位置なのだろうか。
――そしてやっぱり女神のいっていたあの子って、ノースティアか。
「ええっと、うん。なんか会話だけ聞こえてきた。……杉山は?」
「杉山……?」
「ええと、『勇者』だよ。ノースティアのいう」
「ああ。『勇者』ね。あの子も中々面白い。お姉ちゃんにも興味を持たれているし、色んな人から好かれていて。だけど、『勇者』も私の力には抗えなかったよ。面白かったから、『勇者』で遊んでもみたけれど、その記憶もないみたいだし」
ノースティアは杉山の事を『勇者』としか認識していないらしい。
杉山ひかるというその名前を全く覚えていないことが感じられた。
そしてにこやかに笑ったノースティアは僕をにこにこと笑っている。
「――だからね、私の力が通じない博人は異常なの。私の力が及ばない人なんていなかったもの。だからね、博人は私の運命なの」
そんなことを真っ直ぐな目で見て言われて、僕はドキマギしてしまった。