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幕間 とある異世界の神の話



 むかし、むかし。

 この世界にはなにもありませんでした。



 その世界には、生物も存在していませんでした。

 そんな世界に真っ先に現れたものは、光でした。その光から一柱の神がうまれました。



 その神は、はじまりの神と呼ばれています。

 はじまりの神は、大地を作り、海を作り、空を作り、世界を創造していきます。



 たった一人の神様によって、その世界はうまれました。





 神様はその美しい世界に満足をしています。けれど、その場に生物はいませんでした。

 その神様は、自分と同じような生物を創ることにしました。




 まずは、この世界を共に管理するための存在をうみだすことにしました。

 一柱の神は、何人もの神をうみだします。沢山の神々がうまれ、その世界はにぎやかになりました。




 そしてそれぞれの神が、その世界に生物をうみだしていきます。

 それはエルフだったり、人間だったり、獣人だったり、魔物だったり、魔植物だったり――沢山の生物です。



 はじまりの神は、周りに沢山の生物が溢れることを喜んでいました。

 綺麗な世界に、自分が望むだけの生物がうまれ、笑っていました。



 けれど生物がうまれるということは、それだけ争いもうまれるということです。

 神々の中でも、争いは起きました。自分の子供とも言える神々が、争うことをはじまりの神は悲しみます。




 はじまりの神は、神々の争いを止めながらも疲れてきました。

 はじまりの神は、眠ることにしました。神々が取り返しのつかない争いをする時に目覚めるだろうと言われているはじまりの神です。


 とても強い力を持つはじまりの神が、目覚めた時、世界は一度終わるだろうなどと言われています。



 さて、残った神々も父であり、母である――そんな偉大なるはじまりの神の怒りを買うことは望んでおりません。

 神々は時々、争いはするものの、生物たちを見守りながら生きています。





 ――さて、そんな神々の中でひときわ目立つ神が二柱いました。

 一人は、その世界ではじまりの神につぎ、人々から信仰を集める女神である。その神は人に関わり続けた女神です。

 人に信託し、『勇者』を導く女神。

 はじまりの神と同じく、光を主張する光の女神です。







 もう一人は、光の女神とは正反対の位置にいます。

 彼女に向けられるのは、光の女神に向けられるものとは正反対です。彼女はただただ誰の意見も聞かず、自分がやりたいように生きる自由な存在です。

 彼女は昔、その世界の一柱の女神としてその世界のために生きていました。

 母であり父であるはじまりの神や、自分よりも先に生まれた神々の言うことを聞き、神として生きていました。

 けれど、彼女は異色過ぎました。

 彼女はただ強く、美しく、誰もが並ぶことの出来ない存在になりました。

 誰もが彼女に屈し、誰もが彼女の言うことを聞くのです。

 ――その現実が、彼女にとって退屈でした。



 だから彼女は、周りの言う事何て聞かずに自由気ままに動くようになりました。

 ――時に彼女は、悪魔と呼ばれ、邪神などと沢山の呼び名で呼ばれます。気まぐれにただ動く彼女は、その気まぐれさがその世界に逸話として残されています。

 どこまでも自分がやりたいようにだけ生きている彼女は、賭博師や死霊術師などに信仰されていたりもします。





 やろうと思えば、世界を滅ぼすことさえ出来る。

 やろうと思えば、世界を屈服させることが出来る。

 やろうと思えば、はじまりの神さえも下すことが出来る。




 ――そういう力を彼女は持っていると言われている。



 だから彼女は神々の中でもひと際目立つ存在です。だからこそ彼女は神々にも距離を置かれています。

 そんな彼女に近づくのは、光の女神ぐらいでした。

 彼女は、光の女神のことを姉と呼んでいます。光の女神は、彼女を可愛がっています。



 ――それでも、彼女は満たされません。

 何故なら、その光の女神も彼女にとって他と対して変わらないからです。他の神々よりは、関心を抱き、慕っている。――でもそれだけです。







 退屈で、満たされなくて――ただただ怠惰に生きる闇の女神。











「異世界かぁ……」



 彼女は呟き、世界を渡る。




 少しだけ楽し気で、だけれども諦めたように彼女は笑う。



 褐色の肌に、白い髪。

 赤い瞳に、鋭い八重歯。

 飾り気のない黒いドレスを身に纏う。





 彼女は異世界――地球に足を踏み入れた。





 ただただ退屈を紛らわすためだけに、彼女は世界を渡った。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公が一柱目とか?
[一言] つまり最強か
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