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そして、僕と乃愛は共に生きていく。

8/1 四話目





 終業式を終えて、ホワイトデーを終えて――春がやってくる。



 三年生に上がるその時に、乃愛が言っていたように杉山たちの姿はなかった。ついでに言うと、他にも数名いなくなっているように見えるのは……まさか、杉山は異世界に追加で女性を連れ帰ったということだろうか。


 なんていうハーレム状態って正直びっくりである。



 終業式の日にはいた姿が居ないわけだけど、女神様が違和感ないようにしているのか誰も騒いでいる様子はなかった。




 異世界関連のものが消え、僕が気づかないふりをする日々はそうして一年で終わったのだ。




 この一年間、時間が一年巻き戻っていることや行方不明になっていた杉山たちが戻っていたこと、異世界関連の人たちが来たりとか――うん、僕にとって一番濃い一年だったと思う。



 巻き戻り、異世界関連のことを知る前とは違う人生になっている。何より高校二年生を二回やったわけで、結構僕の日常は変化したと言えるだろう。


 何より一番の変化は――、



「ねぇねぇ、博人、今日も遊びに行こうよ」



 僕にひっついている乃愛がいることだろう。




 乃愛は僕により一層ひっつくようになった。あと人前でもキスしてきたり……、うん、恥ずかしいからやめてほしい。

 ちなみにクラスメイトたちにも乃愛が「博人と恋人になったのー」と報告した後、「まだ付き合ってなかったの?」「え? 付き合う前であれって、これから俺たちは何を見せられるんだ?」とか色々言われた。


 ……周りからしてみれば、僕と乃愛はすっかり恋人認定されていたらしい。




 乃愛は黒髪と黒目に相変わらず変化させているけれど、それ以外のものに神様としての力は全く使っていない。



 乃愛はそういうものを使わなくても、人生に満足しているのだろう。

 にこにこと笑っている乃愛を見ていると、そのことを実感する。



 そして多分、自惚れでもなく……僕がいることで乃愛は神様としての規格外の力なんて使わなくても楽しいのだろうって思う。

 そういう乃愛の様子を見ていると、僕も笑ってしまう。




「乃愛はどこ行きたいの?」

「色んなお店でいちごのフェアとかやってるんだって。博人、いちごも好きでしょ。食べに行こうよ」

「うん。そうしようか」

「楽しみだなぁ。そこで食べたものも作れるようになるからね。そして博人に食べさせるから」




 乃愛は本当に僕の好きなものをなんでも自分で作ろうとするなぁと思う。

 すっかりなんでも作れるようになっている乃愛の作るものはとても美味しくて僕は食べるのが毎回楽しみだ。


 乃愛は僕が楽しみにしていることを知って、余計に気合を入れて作ってくれているらしい。





 一年巻き戻り、異世界関連の人たちが居たそんな一年間。

 その一年間が始まる前は想像もしなかった今がある。

 僕は当たり前のように、ただ普通に生きていくつもりで……、当然行方不明になっていた杉山がいるとか、一年巻き戻るとか、乃愛という異世界の神様に気に入られるとか、全く想像もしていなかった。



 常識改変が効かないって認識した時だって、一年後に乃愛が僕の隣に居るなんて思ってもいなかった。

 でも乃愛は今、僕の隣に居て、きっとこれからも僕の隣に居ようとするだろう。

 そのことを僕は当たり前のように思っているし、嬉しくも思っている。



 じっと乃愛を見てしまえば、「どうしたの? 博人」と問いかけられる。




「一年前はこういう日々想像してなかったなって」

「私も! 博人みたいな面白い生物に会えるとも思ってなかったからね」

「そっか」

「うん。博人と出会えて私は幸せだよ」

「僕も楽しいよ」

「ふふ、これからもずーっと傍にいるからね?」

「うん」



 乃愛は僕の傍にずっといるだろう。


 大学に入っても、卒業しても、多分僕が年老いても。





 異世界の神様だけど、神様としての力なんて使わずに乃愛はただの一人の女の子として僕の傍にいる。



 いつか、僕の人間としての命が尽きるその時まで。

 そして僕が絆されれば、僕が人間として命が尽きたその後も。




「ねぇ、博人。私、博人を納得させるからね? 博人の生涯をかけて、人間として死んだ後も私の傍に居たいって思わせるから」

「うん。どう説得してくれるか楽しみにしてる」

「ふふ、絶対にもっと私に夢中にさせるからね!!」



 そう言って笑う乃愛を見ながら、僕はいずれ乃愛に絆されていくんだろうなって……そんな予感を感じるのだった。




 ――そして、僕と乃愛は共に生きていく。








 

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